表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
54/105

第53話




 事前に『どういう相手でどう言った戦い方をする』と言うのが判っていると言うのは、考えている以上に有利だ。

 そして、過去に多大な戦果を挙げた事のある相手は、自分こそ有利であり負けるはずが無い、と考えてしまう。

 慢心と油断。

 故に、いくらでも付け入る隙が生まれる。

 エーナル達のパーティー構成ならバランスも良い。

 城級ゴーレムと言えども、いくらでも対処法はある。

 後はエーナル達の努力次第だ。



 そして、決闘当日。

 決闘場所として提供されたのは、冒険者ギルドの外周訓練場。

 ここは王都をぐるりと囲む城壁の外側にあり、昔は城壁等に使用した岩の切り出し場であった為、農耕にも不向きな場所で、人通りも無い。

 そして、大人数での訓練や被害が出そうな実験をする際、使用の許可が降りる。

 普通なら決闘程度では使用許可は降りないが、今回はカードが問題である。

 『城崩しのゲルィン』対『金級冒険者チーム』。

 どう考えても、街中にある冒険者ギルドの訓練場では被害が大きくなる。

 なので、外周訓練場の使用許可が降りたのだ。

 魔術師ギルドからギルマスと結界魔法を得意とする術師が数人やってきており、周囲に被害が広がら無い様に大規模な結界を張る。

 これで最悪、王都への被害は無い。

 審判として数名の兵士が担当するのだが、全員離れた所にいる。

 まぁ危険だしな。

 そして、その更に外周、大勢の観客が集まっていた。



 ゲルィンの前にいるゴーレムは全部で5体。

 2体は大人ほどの大きさであり、両方とも剣と盾で武装したフルプレートメイル。

 1体はそれより一回り大きく、長大なランスを持ち、装飾も豪華だ。

 更に、その後ろに控えるのは2体と同じ大きさだが、見た目は金銀で装飾が施された豪華な鎧を着込んでいる。

 その武装は大型のメイスとタワーシールドと呼ばれる巨大な盾。

 そして、一番後ろにいるのが城級ゴーレムだろう。

 見た目は、他のゴーレムより遥かに大きいのだが、その図体は『人型』と言うだけで、その両腕は肥大したように巨大で、上半身も巨大。

 それに比べると、下半身は太く短くなっており、バランスを取っている。

 動きを見る限り、足で歩くと言うより腕を使って移動し、脚はただ安定させる為だけの物のようだ。

 なんというか、『人型』と言うより『ゴリラ型』と言った感じだ。

 それら全てが青銅の様な色をしている。


「それでは、これより決闘を開始します。互いの能力を全て使用し、戦闘不能もしくは降参宣言により負けとなります」


 審判役の兵士がルールを説明する。

 と言っても、ルールは簡単。

 目の前の相手を戦闘不能か、降参によって勝敗が決まる。

 そして、決闘である以上、相手を死なせてしまっても不問となる。

 城級ゴーレムに絶対の自信があるのか、此方側に人数制限は無く、いくらでも集めれば良いと言う。

 戦闘は全員で一度に行われ、動けなくなったとしても、誰かが安全地帯まで運んでくれる訳でも無い。

 ここまでは予想出来ていたが、問題はこの後だった。


「なお、敗者は勝者に服従を誓い、『隷属の首輪』を嵌める事とする」


「なっ!?」


「そんな話、私達は聞いていない!」


 エーナルが驚き、テランが審判である兵士にそう言うが、認めない場合、決闘は敗北扱いとなると兵士から言われてしまう。

 この時点で、この兵士もゲルィンに買収されているのが予想出来る。 

 隷属の首輪は、奴隷として不当な扱いを受けていた際、専門の調査機関で調査されるが、今回の場合、例え不当な扱いを受けたとしても奴隷と違って、『服従を誓って首輪をしている』と言う事で罰則を逃れる事が出来る。

 つまり、敗北すれば地獄が待っている。


「実力を偽っているのがバレるから、怖気付いたようだな」


 ゲルィンが巨大なゴーレムの足元で、勝ち誇った表情を浮かべつつそう言う。

 確かに、普通に考えるなら、軍すら壊滅させた事のある有名なゴーレムの相手をするのは避けたい。

 だが、有名と言う事はそれだけ手の内を晒していると言う事だ。


「まぁ偽っているのはどうでも良いが、良くもまぁ骨董品で頑張るもんだ」


 そう言いながら、俺の視線は巨大な城級ゴーレムを見ている。


「骨董品だと?」


「あぁ、気を悪くしたらすまない。俺から見たら十分骨董品って見えただけだ」


 城級ゴーレムの素材は恐らく、複数の鉄系素材を合わせた合金。

 鑑定眼で確認した所、素材としては確かに硬いのだが、重量は非常に重い。

 ただし、オリハルコンやミスリルに比べると遥かに弱く、ゲームでは序盤のアイアンゴーレムを多少強化したくらいの強さだ。

 これなら、十分あの作戦で倒す事が出来るだろう。

 他のゴーレム達も同じ素材で作られている事から、ゴーレムにとってはポピュラーな素材なのだろう。

 しかし、城級以外が邪魔だな……


「フンッ強がりを……」


 ゲルィンの言葉を無視し、エーナル達が安全に城級だけを相手に出来る方法を考える。

 まぁ面倒だし、ぶっ壊した方が後々安全か。


「それでは、始め!」


 兵士がそう言って走って離れていく。

 まぁ危険だもんな。


「ナイト、ロイヤル、前進、キングとキャッスルは待機」


 ゲルィンが指示を出し、剣とランスを持った3体が前に出て来る。

 剣持ちがナイトで、ランス持ちがロイヤル。

 それを迎撃する為にエーナル達が身構える。

 そのエーナルの肩に手を置き、強引に下がらせる。


「エーナル、本命の為に力は温存しとけ」


「だ、だが……」


「来い、零式」 


 エーナルの言葉を遮り、巨剣を持った零式が目の前に現れる。

 その姿を見て、観客達はざわつき、ゲルィンの眼は見開かれている。

 自身でゴーレムを作っているなら、零式の完成度は見ただけで理解出来るだろう。

 まぁ今回はただの露払いだけなんだけどな。


「零式、あの3体を弾き飛ばせ」


「ナイト防御! ロイヤルは突撃!」


 俺の命令で、零式が巨剣を大きく振りかぶる。

 それを見て、ゲルィンが指示を飛ばす。

 ナイト2体が盾になり、ロイヤルが零式に攻撃を仕掛けてくる。

 確かに、普通のゴーレム相手ならそれで止められただろう。

 だが、零式にそんな対策が通用する訳も無い。

 思い切り横薙ぎに振り抜かれた巨剣が、ナイト2体とロイヤルを纏めて弾き飛ばす。

 それもわざと剣筋を合わせず、剣の腹部分で叩き飛ばす。

 普通なら剣の方が耐えられずに歪んだり、下手すれば折れ飛んでしまう。

 だが、零式の巨剣はそんな使い方をされようとも歪む事も無い程、強固な作りになっている。

 元々、専用に作った物だしな。

 弾き飛ばされたゴーレム3体はバラバラになりながら地面を転がり、最早原型を留めていない。

 さて、後はキングの相手をすれば俺等の仕事は終了だ。


「ば、馬鹿な……き、キング!」


 ゲルィンがキングを動かす。

 それこそ此方が待っていた瞬間だ。


「じゃ、エーナルは頑張れ」


「わ、わかっている!」


 エーナル達が回り込むようにして城級に向かう。

 それに合わせる様に、俺と零式がキングに向かっていく。

 (キング)級はタワーシールドと大型メイスで武装しており、その動きも先程の3体に比べると随分なめらかだ。

 だが、正直に言えばそれだけだ。

 見た限り、特別な素材が使われている訳でも無く、真新しい技術が導入されている訳でも無い。

 まぁ、俺達の仕事は、エーナル達が城級を倒すまで、この王級を『倒さない』事だ。

 零式に防御を指示し、王級の相手をさせる。

 まぁオリハルコン製でもなければ、零式を傷付ける事など出来ないだろう。

 振われるメイスを巨剣で捌く零式を見ながら、城級と対峙したエーナル達の方を見た。




 戦う前、城級ゴーレムの特徴をとにかく上げさせられた。

 まず、ゴーレム故にとんでもないパワーを持っている。

 更に、高い防御力を誇り、下手な攻撃は全て通用しない。

 そして、高い魔法防御も備えており、魔法すらほとんど通用しない。

 エーナル達は最初は何故、そんな事を言わされているのか理解できていなかったが、作戦を聞いて良く判ってくれた。

 城級ゴーレムは確かに脅威だが、絶対では無い。

 パワーが強いと言うなら、その攻撃に当らなければ良い。

 高い物理防御と魔法防御を誇るなら、それを突破する方法を考えれば良い。

 そうして、作戦を聞き、それが十分可能な方法である事を確認した。

 この作戦の要は、普通ならゴーレム相手には攻撃手段を持たない、と思われているはずのイーランの腕だ。


 イーランが鋼鉄の矢を番え、ゴーレムの右肘関節を狙って撃ち込むが、カツンと弾き飛ばされる。

 鋼鉄製であってもほとんどダメージを与えられなかった。

 それを見た叔父が笑っているが、こんなのは予想の範疇だ。

 大事なのは、イーランが『城級ゴーレムに対して無力である』と相手に改めて思わせる事だ。


「『ファイアーボール』!」


 エルの魔法が城級ゴーレムの胴体を狙って飛ぶが、それは右腕にガードされる。

 テランが跳び出し、左側に回り込む。

 そして、自分は右に回り込み、その右脚を狙う。

 振るわれる腕は受ける事は絶対にしない。

 テランの方を見れば、やはり彼女も同じように受ける事はしていない。

 作戦を聞いた時、絶対に攻撃を受けるな、と説明されていた。

 テランの防御スキルである『ロイヤルガード』でも、城級ゴーレムの攻撃力では受け止めきれず、ダメージが貫通して来るだろうと言うのが、あの男の予想。

 訓練中、ロイヤルガードの被ダメージ限界を知る為に、あの男の一撃を受けてテランが悶絶していた事を思い出す。

 あの男の攻撃が城級ゴーレム以上とは思えないが、それでも貫通したのだ。

 絶対に受けるなと言われている以上、ここは指示通りに受けない事を優先する。

 幸いな事に、王級ゴーレムはあの男のゴーレムが相手をしているから、こっちは集中出来る。


「『シールドバッシュ』!」


 攻撃を掻い潜って、テランがその左足に盾を叩き付ける。

 ダメージらしいダメージは無いだろうが、下半身を攻撃されれば当然、バランスを保とうとする為に上半身が巨大なゴーレムは両腕を地面に接地させなければならない。

 そこにイーランの矢が再び飛来し、先程と同じ関節部分に当たって弾かれる。

 それからは、全員が諦めずに攻撃をし、ゴーレムの攻撃を回避し続ける、という単調な攻撃を続けた。

 もう何度目か判らないテランのシールドバッシュが左足に叩き込まれた時、ゴーレムの上半身が多少揺らいだ気がした。

 そろそろやるか?

 反対側にいるテランを見ると頷いた。


「『チャージ』!」


 剣に魔力を溜めるスキル。

 これが作戦開始の合図。

 イーランが先程と違う矢を番える。


「『フレイムバレット』!」


 エルが大量の小さな火の弾丸をゴーレムに浴びせる。

 通常、一発一発は弱く、城級ゴーレムに通用する魔術では無い。

 だが、あの男との訓練で一発ごとの威力を底上げする事に成功していて、ファイアーボールより多少威力が落ちている程度、と言っていた。

 最も、これはダメージを狙った物ではないのだ。

 これはダメージを与える為の前準備。

 イーランが青く輝く矢を撃ち出す。

 それは先程まで狙っていた右肘関節に直撃した瞬間、砕けて貼り付く様に右関節にへばり付いた。

 更に、同じ矢を左足に向けて撃ち込むと、此方も同じようにへばり付く。

 そして、へばり付いた場所から煙が立ち上り始めた。


「な、何だ! 何をした!?」


 叔父が城級ゴーレムに指示を出しているが、場所が場所であり、ゴーレムには剥す事が出来ない。

 そう、城級ゴーレムは巨体であるが故に、細かい場所に自分の手が届かないのだ。

 煙を上げてへばり付いた物が剥がれ落ちると、その部分が完全に黒く変色していた。

 あの男は、ある事を予想していた。

 相手が慢心していれば、必ず戦力を小出しにしてくる、絶対的な力を持っていれば、いくらでも逆転出来ると思っている、と。

 その慢心が油断になり隙を作る。

 その黒くなった部分目掛け、一気に仕掛ける。


「穿て! 『 ストライクブレイク』!」


「『シールドバッシュ』!」


 チャージによって威力の上がった自分の突きがゴーレムの右肘関節に突き刺さり、テランの攻撃が左足にぶち当たる。

 瞬間、バキリと嫌な音が響き、ゴーレムの左足が折れ、バランスを崩したゴーレムが両手で地面に手を突いた瞬間、今度は右腕からもバキリと音が響いて肘から折れ、巨大なゴーレムは地面に転がった。

 こうなってしまえば、最早、このゴーレムは戦う事は出来ないだろう。

 自分達の勝利が確定した瞬間だった。




それでは、また3日後にお逢いしましょう


面白いなーとか続きを読みたいなーと思ったら、ブックマーク・評価してくれると、作者がすごく嬉しくなります

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ