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第47話




 それがいたのは一つの部屋。

 部屋の奥でうねる様に蔦を動かし、侵入者に向けて威嚇する様に花の部分が震える。

 そして、その隣には下の階層に降りる為の階段があった。


 スナイプローズ。

 見た目は巨大な薔薇だが、これでも手強い植物系モンスターだ。

 最大の特徴は、その茎に生える棘。

 一つ一つが大人の親指ほどあり、それを敵に向けて撃ち出したり、直接打ち付けたりする攻撃をしてくる。


 現在、エーナル達が戦闘中。

 棘はテランがロイヤルガードでガードし、その後ろからイーランの矢とエルの魔法で攻撃を行っている。

 数分もせずに、エルの炎魔法が直撃してスナイプローズは炎上し、消滅。

 そして残ったのは棘が数個。


「ハズレか……」


 エーナルが周囲を確認しながら棘を拾う。

 ちなみに、倒したのはこれで8体目だ。

 その全てが棘しかドロップしないのだ。


「最初のアーマーゴーレムで直ぐに出たから、楽だと思ったんだけどね……」


 イーランが矢の残数を確認しながら言う。

 彼女の場合、短剣を使える様にはなったが、矢が尽きれば戦闘力がガタ落ちになる。

 一応、彼女の持っている魔法袋には大量の矢が入っているらしいが、それでもダンジョンアタックが長引けば心許無くなるだろう。


「そんな簡単に手に入るようなら、試験にはしないだろう」


 テランが盾のチェックをしながらそう言うと、エルが頷く。

 此処に来るまでにかなり行使している為、チェックは欠かさず行っている。


「取り敢えず、今日はこの部屋で休憩するか?」


 エーナルが周囲の安全を確認した後、そう提案する。

 恐らく、ダンジョンの外は夜になっているだろう。


 長生きしたければ無理をしない。


 冒険者の鉄則だ。

 そして、この部屋はスナイプローズしかおらず、それも倒したので暫くは安全だ。

 取り敢えず、交代で見張りをしながら就寝することになった。



 次の日、時間的には恐らく朝になったので、そのまま下に降りて探索を続行。


 結果、アーマーゴーレムを8体倒して外装を7個、魔石が5つ手に入った。

 スナイプローズには15体遭遇し、棘が14個、魔石が8個、茎が1個手に入った


 どうやら、スナイプローズは倒し方によってドロップが変わるようだ。

 効果抜群の炎魔法を使うと、残るのは棘だけ。

 他の魔法や矢で倒すと、棘と魔石。

 そして、ある条件で倒すと茎を残す。

 その条件とは、『撃ち出してくる棘を全て使い切らせた後、茎と花の部分を切断する』と言う凄まじく難しい条件だった。

 まぁそれを発見したのは俺なんだけどな。


 興味本位で、スナイプローズの棘を全て弾き、何も出来なくなった後に花を刈り取ったら茎をドロップしたのだ。

 ただ、コレは俺がドロップした物である為、エーナル達には渡さない。

 その後、同じ条件で2体を追加で倒してみたら、やはり茎をドロップしたので確定だろう。


 そして、テランの『ロイヤルガード』で棘を防ぎ続け、棘を撃ち切ったらエーナルが切断する事で、人数分の茎が手に入った。

 ただ、人数分の茎を入手する為に、防ぎ続けたテランの盾がかなり不味い事になっていた。

 持ち手がガタガタになり、表面にも棘が刺さって小さいが穴がいくつか空いる。

 コレをこのまま使い続けるのは少々問題がある。

 だが、テランはそういう状況も想定していたので、予備の盾をちゃんと用意していた。

 最も、俺が魔法付与した盾より劣るので、やはり使い続けるのは難しい。


 しかし、アーマーゴーレムとスナイプローズは相当数出会ったのに、ディノリッパーには一体も遭遇していない。

 もしかしたら……10階層限定なのだろうか?

 そう考えつつ、9階層への階段に到達する。



 9階層は通路が一回り広くなっていた。

 ただし、出て来るのはアーマーゴーレムとスナイプローズ。

 しかも、両方とも素材が揃ってるので出会って即効で倒している。

 探知レーダーには、やはりディノリッパーらしき姿は見えない。

 これは、やはり10階層にしかいないのだろうか?


 通路が広がっている分、複数のモンスターが同時に襲ってくるようになっている。

 ただ、基本的に力押ししてくるアーマーゴーレムと、近付かなければ棘を飛ばしてくるだけのスナイプローズ。

 そして、スナイプローズは動かないので、炎系魔法を使えば一撃で倒す事が出来る。

 アーマーゴーレムも、耐久力は高いが遅いので、エーナル達からすればただの雑魚だ。

 こうしてみると、やはり相性というモノは重要だ。

 現状だと、上の階層で出て来たラメイルバイパーが多少苦手と言った感じだな。


「ディノリッパー出てきませんね」


 エルが燃え尽きたスナイプローズの棘を回収しながら言う。

 それを聞きながら、エーナルが持っていた剣を見る。

 アーマーゴーレムとの戦闘が続いて、多少なりともガタが出始めている。


「此処まで進んだけど、どうする?」


 エーナルが3人に聞く。

 これは恐らく、進むか戻るかを相談するのだろう。

 疲労はそれほどでもないが、やはり装備の問題があるからだ。

 ここに来るまで、テランは盾を一枚破損状態にしている。

 エーナルの持つ剣も、そろそろ交換するか整備しないと危ない状態。

 イーランは矢の残数。

 エルは魔法を使い続けた事による精神消耗。


 しかも、今まで降りて来た道を戻らねばならないのだ。

 もし、10階層にディノリッパーがいたとして、現在の状態で倒せるか不明。 

 それに、今まで出会わなかっただけで、もしかしたら上にもいたのかもしれない。

 ボロボロの状態になってから遭遇した場合、無事で済む保証は無い。

 まぁ俺がいるから無事には帰れるだろうけどな。


 しばらく4人で話し合った後、エーナル達は一度地上に戻る事を選択した。

 うん、賢明な判断だ。

 もし、この状態で進むと言う選択肢を選んでいた場合、正座しての説教タイムをする所だ。


 今回の試験は、レイによる特別試験であり期間は2週間ある。

 一度潜っただけでクリアする必要はないのだ。

 情報を得た後、準備をして再度ダンジョンに潜れば良い。

 生きていれば、ダンジョンは何度でも挑戦出来るのだ。


 4人が所持品と回収した素材を確認し、戻る準備は完了したようだ。

 まぁその前に……


「少し良いか?」


「何ですか?」


 エーナルに声を掛け、次に遭遇したモンスターは譲って貰えるように頼む。

 そう、スキルの『ゴーレム召喚』を試してみるのだ。

 ただ、いきなり本命を呼び出して、テイムクリスタルのように砕け散ったら……ガチで凹む自信がある。

 それは流石に嫌なので、まずは試しとして『素体』を呼び出してみる事にする。


 『システム』から『スキル詳細』の中にある『ゴーレム召喚』を選択。

 すると、そこに2つのゴーレム名が現れるが、今回はその下にある『新規作成』を選択する。

 そして、素体状態で召喚。


 目の前に光が集まり、大人くらいの大きさのマネキンが現れた。

 見た目は完全に灰色のマネキンだ。

 その様子を見て、エーナル達は絶句していた。


「ふむ、素体は呼び出せる……と……やはり、『スキル』なら召喚出来るみたいだな」


 召喚解除を選択すると、素体が再び光になって消滅する。

 ゴーレム召喚の項目を見ると、2体の名の下に『素体03』と名前が付いていた。

 この素体03はゴーレムコアを組み込み、各パーツを装着する事で動くゴーレムとして召喚出来る。


「い、今のは……?」


「俺のゴーレム……の素体」


 イーランが聞いてきたので答えておく。

 取り敢えず、これから召喚しようとしているゴーレムの情報を『コピー』し、素体03に上書きする。

 これで、もしも本命が砕け散った場合でも、素体03が情報を引き継いでいるので問題は無い。

 ただ、本命ゴーレムが得た経験情報は0になっているので、また1から育て直しになるが……


「いやいやいや、ゴーレムをそんな風に召喚するって聞いた事無いよ!?」


「そもそも、ゴーレムってそんな風にして作る物じゃないんじゃ!?」


 テランとエーナルがそう言うが、この世界だと違うんだろうか……

 聞けば、この世界のゴーレムは、素材となる物体にゴーレムコアが組み込まれているだけだ。

 つまり、ロックゴーレムなら岩に、サンドゴーレムなら砂にと言った感じ。

 アーマーゴーレムは、アイアンゴーレムが進化して全身鎧になったモンスターだと言う。

 ふむ、そうすると……


 これ、俺がこれから呼び出そうとしてる本命は、かなり目立つな……


「まぁ気にするな、その内慣れる」


 そう言いながら、本命のゴーレムを選択し、いつでも召喚出来る様に準備をしておく。

 そうしていると、探知レーダーに遠くから3体のモンスターが接近してくるのが確認出来た。

 この3体がもしディノリッパーならエーナル達に譲るが、アーマーゴーレムなら俺のゴーレムが相手をする。

 まぁ動いて来ているから、動かないスナイプローズの訳が無いので、どっちかだろう。


 耳を澄ませると、ガッチャガッチャと歩いている音がするので、アーマーゴーレムだ。

 そろそろ向こうの感知範囲に入るだろう。

 エーナル達に下がる様に指示を出し、俺の本命ゴーレムを召喚する。

 目の前に青白い光が集まり、俺のゴーレムは無事に出現した。


 その姿は、黒々と角張った姿をし、胸や張り出た肩、脚等の所々に黄色いパーツとラインが入っている。

 背からは2つのユニットが下がっており、全身の随所に大小様々なブースターが装着されている。

 そして、その顔は他人が見れば正しく『鬼』のような面構えをしており、後頭部に向けて赤い角のようなパーツも付いている。

 だが、それすらも霞むような物があった。

 それは最早、人が持つ事すら想定されていない程巨大な剣。

 刀身だけでゴーレムとほぼ同じ長さで、肉厚の片刃であり、刀身には赤い雷の様なラインがある上、その峰部分にも数ヵ所、ブースターが取り付けられている。

 それを軽々と片手で持ち、ゴーレムが悠然と立っていた。


 当時、サポートNPCである神威達を所有していた俺は、見た目が一辺倒なゴーレムには興味を持っていなかった。

 だが、その外見を弄れると知った時、俺が考えたのは『如何にしてゴーレムを有効活用出来るか』と言う点だった。

 そうして一番最初に作れたのは、基本的な岩で出来ているロックゴーレム。

 そこから色々と学び、一つの結論に至った。

 それは『ゴーレムは単純な行動程強い』と言う点。

 そして、会社勤めをする前にやっていたゲームに登場した、とあるスーパーなロボットを思い出した。

 それは、巨大な剣のみを使用し、相手に斬撃を与える、という単純な攻撃。

 だが、その威力はまさに一撃必殺。

 これこそ、俺が思い描くゴーレムの到達点だと確信した。


 その後は、色々資料を探し、紙媒体からネットの画像まで探し回り、最終的には忘れ去られたような倉庫街にあった玩具店で、色褪せたプラモデルを発見した。

 それを元に外装を作り上げ、内部パーツも強化し続けた。

 そして、最終的に作り上げた巨大な剣。

 完成するまで、数多くの問題点もあった。


 だが、それを克服し乗り越え、遂に完成した時、フレンドやクソジジイに自慢した。

 あの時はクソジジイも驚嘆していたな……


 このゴーレムの基本戦術は至極単純。

 敵陣に突っ込み、その巨剣とパワーで相手を潰す。

 そして、相手の攻撃はその防御力で受けるに任せる。

 このゴーレムは回避を想定していない。

 高い攻撃力と高い防御力を両立し、全身に備えているブースターで無理矢理高機動を実現させる。

 最も、『マナタンク』をフルチャージしていても、全開戦闘を行えば僅か1時間もしないで機能停止してしまうのが難点だ。

 まぁその為に予備の『マナタンク』はいくつも準備してあるんだけどな。


 ゴーレムを見上げて満足していると、遠くから3体のアーマーゴーレムが此方に向かって走ってきた。

 どうやら感知範囲に入ったようだ。

 さて、それじゃこの世界での初陣と行くか。


「奴等を斬り伏せろ! 零式(れいしき)!」




それでは、また3日後にお逢いしましょう


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