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第45話




 いつものギルドマスターの姿に戻ったレイの姿を見て、全員が驚いて声も出ていなかった。

 ただ、簀巻きにされた冒険者ギルドの職員の男と、尻餅を付いた男は凄まじいまでの汗を流している。


「しかし、貴方は面白い魔道具を持っていますね」


「色々問題が有る魔道具だから、やらんぞ」


 俺がそう言って、レイからマントを受け取る。

 このマント、その名を『イリュージョンマント』。

 装備した者の外見と声を、望んだ姿と声に変える事が出来るマジックアイテムだ。

 ただし、変化している間はずっと魔力を消費し続け、魔力が尽きると変化も解ける。

 更に、変化する度合いが大きけば大きいほど消費量も上がって行く。

 今回は単純にレイの駆け出し冒険者時代に戻しただけだ。


 そして、俺が使っていたのが『カメレオンマント』。

 その名の通り、装備者は周囲の風景に溶け込み、他者から視覚的に見えなくなると言う物。

 ただ、視覚的に見えなくなるだけなので、探知スキルには引っ掛かるし、それ以外にも勘が良い相手には察知される事がある。

 まぁ今回は大丈夫だろうと思って使ってみた。


 ただ、これ等の装備、使い方によっては悪用も出来るので、本来なら世に出したくはなかった。

 今回の場合は、レイの為人(ひととなり)を信用しているのと、関わっている職員を言い逃れ出来無い様にする為、特別に貸し出した。

 この後、この装備はストレージに保管される。


「ええと……」


「これは……」


 エーナルとイーランが戸惑っている中、テランとエルは好機の眼差しを向けている。

 対照的に、職員達は既に死んだ目になっている。

 恐らく、今ここにいる職員は全員グルなんだろうな。


「あぁ、心配しなくて良い、試験はちゃんと行われる様に私の方で手配しておく」


「え、あ、ありがとうございます」


 レイがそう言いながら、戸惑っているエーナル達の方に向かう。

 エーナルが返事をしているが、どうにも思考回路は混乱したままのようだ。


「その試験なんだが、このまま続行するのは不可能か?」


「どういう意味ですか?」


 俺の言葉にレイが聞き返す。

 まぁ普通に考えれば、試験を中断して再度挑む方が、情報集めも出来るので良いだろう。

 だが、悠長に待つ事は出来ないのだ。


 今回の件、間違いなくエーナルの叔父が妨害の為に関わっている。

 そんな叔父が今回関わったギルド職員の件を知れば、必ず刺客を送り込んでくるだろう。

 エーナル達全員がいなくなれば、後は権力と金、口先で全て解決出来る。

 テラン達から聞いた限りでは、その叔父と言うのは、まず間違い無くそう考えている相手だ。

 故に、時間を掛けると逆に危険になる。

 なので、出来る事なら素早く終わらせたい。

 だが、レイと言えどコレをそのまま話す事は出来ない。


「まぁ俺にも予定があってな」


「……貴方達はそれでも良いですか?」


 レイがエーナル達に聞くと、エーナルは多少戸惑っていたが頷いた。

 説明はしないが、エーナル達も早く済ませた方が良い事は判っているのだろう。

 それを聞いて、レイが少し考え込む。

 そして、何か思い付いた様にエーナル達の方を見た。


「それでは、この場で私から貴方達に特別試験を課します」


「は、はいっ」


「期限は2週間、試験内容はこのダンジョンで手に入る、とある魔道具の素材を手に入れる事です」


 ふむ、珍しい素材の入手か……

 しかし、ダンジョン産の素材を使った魔道具か。

 一体どんな魔道具なんだろうか。


「その素材から出来る魔道具とはなんでしょうか?」


「コレですよ」


 テランが尋ねると、レイが懐から何かを取り出した。

 それは、外見上はただのネックレスだが、中央部に涙型の深青の宝石のような石が取り付けられている。

 ただの宝石では無いだろうし、鑑定眼でその宝石を確認する。



 『転移石』

 -ランク/RR-

 迷宮内部で使用出来る魔道具

 記録した場所へ移動する事が出来る

 記録出来る場所は一つの迷宮に付き一ヵ所

 再記録すると転移場所は上書きされる

 迷宮内部から入口へは記録せずに何度でも転移出来る

 一度使用するとしばらく使用は不可能



 つまり、ダンジョン専用の脱出アイテムと言う奴だな。

 しかも、到達階層を記録していれば、次に来た時はその階層まで一気に移動出来て、攻略を楽に進める事が出来る。

 冒険者なら欲しいアイテムだな。

 しかし、レイは『転移石』とは言わず『素材』と言っていたが……



「便利そうな魔道具だが、この迷宮の10階層までに素材があるのか?」


「それなんですが、この魔道具に必要な素材を入手出来る魔獣が、10階層までにいるのが確認されていますので、集めきれば作る事が出来ます」


 レイの説明では、複数のモンスターの素材を使う事で、『転移石』を作る事が出来ると言う。

 必要な素材は3つ。


 まず、『アーマーゴーレム』の『外殻』。

 これは、『転移石』を囲む外装に使われる。

 次に、『スナイプローズ』の『茎』。

 これは、転移陣を中に焼き付けるのに使う。

 最後に、『ディノリッパー』の『魔石』。

 これは、『転移石』本体になり、同時に魔力を溜め込んで転移に必要な魔力を保有し続ける。


 必要素材を聞いて難易度を考える。

 まぁ俺からすれば、中級から上級って所だな。


 アーマーゴーレムは、所謂強力な鎧を纏ったゴーレムだ。

 巨体であり、パワーも強く防御力も非常に高い。

 ただし、自重が非常に重い為、動きは遅い。


 スナイプローズは植物系モンスター。

 外見は大人ほどもあるバラで、花部分は人の顔くらい巨大だ。

 その最大の特徴は、その茎にある棘を周囲の外敵に向かって飛ばす攻撃をする。

 その射程は意外と長く、簡単な鎧程度なら貫通してくる。

 ただし、棘の数には上限もあり、スナイプローズ自体は動かない為、慣れればただの的だ。


 最後のディノリッパー。

 亜竜系の小型モンスターで、外見は地球の小型肉食恐竜とかに似ているが、成長し切っても大人の胸くらいまでしか大きくならない。

 その尾は鋭利で、軽く薙いだだけで鉄の盾なら腕まで真っ二つにされる。

 動きと反射神経も素早く、閉鎖空間だと三次元的な動きもして来る為、かなり手強い。

 ただし、亜竜系の大型モンスターと違って、強固な鱗を持っていないので防御は低く、下手をすれば尖らせた木の枝でも簡単にダメージを与えられる。


 この中で面倒なのはディノリッパーくらいで、他の2つはエーナル達には楽だろう。

 4人を見れば、全員やる気のようだ。


「……よし、それじゃ迷宮に入ろう」


 エーナルが先頭に立ち、ダンジョンに入って行く。

 その後に続いて、テラン達もダンジョンに入って行った。


「後は任せても大丈夫か?」


「伊達にギルドマスターを務めていませんよ、それでは、そちらはお任せします」


 レイに確認し、俺もエーナル達の後を追う。

 さて、目指すはダンジョン10階層だな。


 このダンジョンは、サガナにあったダンジョンと違って、通路はレンガ作りのようになっていた。

 更に、壁自体が薄く発光しており、それなりに明るい。

 一応、見える範囲と探知レーダーに敵性反応は無い。


「さて、それじゃ攻略するんだけど、この通路だとそこまで強力なスキルや魔法は使えないな……」


 エーナルの言う通り、通路はそれなりに広いが、二人が並んで攻撃するには狭い。

 そうなると、自然とフォーメーションも決まってくる。


「この階層は僕が先頭で進むが、出て来る魔獣によってはテランと交代しよう」


「わかった」


 テランが頷く。


「イーランと、エルは後方に注意を……そして……」


「俺は危険だと判断したら手を貸してやるが、それ以外は頑張れ」


「わかった」


 俺の言葉にエーナルがそう答えた。

 これは当前の事だ。

 これは、エーナル達の試験であり、そして、現在の実力を測る為でもあるのだ。

 クリア出来なければ実力不足。

 もし、ここで俺が手を貸せば、エーナル達は簡単にクリア出来るだろう。

 だが、それでは『エーナル達の実力』では無い。

 実力不足のまま白金級になり、死ぬのは勝手だ。

 だが、その結果、他の誰かに迷惑を掛ける事になるかもしれない。


 故に、俺は本当に危険にならない限り、手を出さない。

 まぁ危険になったら介入するけどな。



 1階層から3階層まで出て来たモンスターは、オークやオークウォーリアーのみ。

 エーナル達の実力からすれば雑魚に等しい相手なので割愛。

 4階層から7階層に出て来たのはリザードマン、スケイルディノ、ラメイルバイパーと爬虫類系モンスター。

 リザードマンは説明するまでも無く、人型のトカゲだ。

 それが剣や槍と言った武器で武装している。

 スケイルディノはそのリザードマンが騎乗している亜竜で、その鱗が強固な鎧になっており、外見は肉食恐竜。

 単純な力も強いのだが、一番恐るべきなのは、リザードマンとの連携が密に取れる事だ。

 そして、ラメイルバイパーと言うのは巨大な蛇。

 その鱗は虹色に輝き、瞳はルビーの様に赤く、牙は水晶の様に透き通っている。

 ただし、その鱗で反射した光を見ると幻覚を、その瞳を見ると金縛りに、噛まれると凄まじい激痛、と恐ろしい相手だ。


 ぶっちゃけると、エーナルが幻覚を、テランとイーランが金縛りを受けて、エルが噛まれかけたので介入した。

 目を閉じたまま武神刀を一薙ぎし、エルに噛み付く寸前のラメイルバイパーの頭部を斬り飛ばした。

 そして、その場に残ったのはラメイルバイパーの皮と小さな魔石。


「さて、今の相手だが反省点は判るか?」


 エーナル達の状態異常を回復させた後、4人を正座させながら反省会。


 まず、エーナル。

 初見の相手にいきなり跳び込んで行かない。

 次にテラン。

 『ロイヤルガード』は確かに守りに置いてはかなり強いが、それを過信し過ぎている。

 イーラン。

 二人を助けようとしたのは判るが、敵を放置しない。

 最後にエル。

 3人の状況を見て状態異常を受けたと判ったら、魔法で弾幕を張ってからポーションで回復させる。


 そして、どうするかの勉強。

 エーナルは状況を良く見て、確実に行けると判断してから行く事。

 テランは『ロイヤルガード』だけに頼らず、他のスキルを駆使する事。

 イーランとエルは協力して、妨害役と回復役を決める事。


「そこでだ、もし次失敗したら……」


「……失敗したら?」


「噛まれてから助ける事にする」


 俺の言葉で、4人の表情が凍る。

 実は、ラメイルバイパー自体に殺される事はほとんどない。

 その死亡原因の多くは、状態異常を受けている間に別のモンスターに出会ったり、幻覚を受けた仲間同士での同士討ち。

 ラメイルバイパーは、そうして死んだのを餌にしているのだ。

 噛まれた激痛が原因でショック死したと言う話はまったく聞かない。


 つまり、次ラメイルバイパーに出会って同じ事をやった場合、もれなく激痛を受ける事になる。

 死にはしないが、考えるのも恐ろしい。


 噛まれるのは余程嫌なのか、4人があーでもないこーでもないと相談し始める。

 そして、対策が出来たのか頷き合った。

 さて、御手並み拝見と行くか。




それでは、また3日後にお逢いしましょう


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