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第39話




 結局、エーナルはテラン達の説得で修業を受けるのを了承した。

 さて、それじゃまずは選択肢をくれてやるか。


「んじゃ、エーナル、コレから提案するどれかを選べ」


「……提案だと?」


 エーナルが不貞腐れているように聞き返してくる。

 かなり不満気だが、テラン達の手前、話は聞くようだ。


「一つ目、死ぬ程キツイが確実に強くなる方法、二つ目、生命の安全はあるがそれなりに強くなる方法、三つ目、このまま何もせずに確実に失敗する方法」


 さて、コイツはどの『提案(地獄)』を選ぶかな?

 俺の提案を聞いて、エーナルが思案しているようだ。


「……具体的に、一つ目と二つ目の違いは何だ?」


 ふむ、そこに気が付いたが。


「一つ目は俺が担当して、二つ目は炎尚が担当する」


 炎尚も充分強い。

 だが、流石に俺と比べると差がはっきり表れる。

 しかし、それでも多少は強くなれる。


「……確かに、貴様の強さはあの戦いで見せて貰ったが、それでも教えを乞う様な事は……」


 エーナルの言いたい事は何となくだが理解できる。

 俺の実力をある程度は見たが、それでも本当に強いのか疑っている。

 最初にやり合わなかったからな。

 こういうタイプは、実際に体験しないと納得しないタイプだ。

 仕方ない……


「まぁ簡単に言えば俺の全力をもっと見たいって事か?」


「アレで全力じゃ無いのですか?」


 テランが意外そうに言うが、正直に言えば、集中してやってはいたが本気でやっていた訳では無い。

 そもそも、本気でやっていれば、最初の攻撃を回避した時にライカンスロープをカウンターで倒している。


 しかし、人目がある場所で相手をする訳にはいかない。

 ぶっちゃけると、エーナルを監視している奴等が街中にいる。

 恐らく、噂の叔父の手先だろう。

 なるべくなら、こちらの情報を相手に察知されるのは遅くしたい。


 その関係から、まずギルドの訓練場は人の目が多過ぎるので却下。

 次に家の庭だが、本気でやったら流石に修復が面倒なので却下。

 今から王都に行き、ギルマスのレイに人目に付かない場所を提供して貰うのも、時間的に無駄なので却下。

 隠れてこっそり出来るような場所……


 腕を組んで悩んでいると、遠くで犬の遠吠えが聞こえてきた。

 恐らく柴隊の誰かが、何か緊急の要件があって吼えたのだろう。


 ……そうか、あそこがあったな。


「よし、ちょっと場所を借りて来るか」


「借りる?」


「誰に?」


 イーランとエルがそう言うが、無視して受付に向かい言伝を頼む。

 今日はアイナは休みだ。


「なんじゃい、いきなり」


 そう言ってやって来たのはギルマス、クックの部屋。

 あの場所を一ヶ月間貸切る許可が欲しい事を伝えると、不思議そうな顔をされた。


「まぁ……普段は誰もおらんから問題無いと言えば問題無いが……何をするんじゃ?」


若人(わこうど)の特訓」


 それを聞いてクックは余計に不思議そうな顔をするが、問題は無いと言う事で一ヶ月間借りる事が出来た。

 ただし、ちょっとした条件が付いたが……

 まぁエーナルが一つ目を選ばなければ無駄になるけどな。


「さて、それじゃ出発するぞ」


「何処にだ」


 俺の言葉にエーナルが不審そうに聞き返す。

 俺達の目的地、それは……


「サガナダンジョン最深部」


 俺はそう軽く答えた。



 ライカンスロープ達のいた群れの近くに、ダンジョンの入り口の一つがあった。

 地面に洞穴の様に出来たそれを覗き込むと、まるで天然の洞窟のようだ。


 サガナダンジョン。

 出て来るモンスターはウルフ系やスライム系、ゴブリンやオークといった初級モンスターばかりで、最深部にいるボスはオークジェネラルだと言う。

 こういうダンジョンにありがちなトラップも、珍しい事にまったく無いと言う。

 階層は11層で、通路や部屋はまるで坑道のようだ。

 最下層は宝物庫と地上への脱出用転移陣の部屋になっている。

 ただし、宝物庫と言ってもロクな物は無く、あってミスリル系の武器位だ。

 そして、初心者から中級者向けと言うだけあって、冒険者ギルドでは詳しい地図が売られている。


 そのダンジョンを駆け足で突き進む。

 先頭は俺で、その後をエーナル達、そして最後尾に炎尚が付いて来ている。

 そうして進んでいると、目の前にウルフの群れがやって来た。

 数は5頭。

 鑑定眼によると『グレーハウンド』と言うモンスターらしい。

 まぁ別に関係無いが。


 速度そのままでグレーハウンドの群れに突っ込むと、最小限の動きで棍を振って全て弾き飛ばし、壁に叩き付ける。

 壁に叩き付けられたグレーハウンドは短く悲鳴を上げ、そのまま絶命。

 そして、その遺骸がゆっくりと溶ける様に消えて行き、ダンジョンの床には牙と魔石だけが残っていた。

 

 これがダンジョン共通の事だ。

 モンスターがダンジョンの中で死亡すると、まるで溶ける様に消えてしまい、後には何かしらのアイテムが残される。

 今回は牙と魔石が残ったが、コレが皮だったり爪だったり骨だったりするのだ。

 たまに特殊能力を持った武具を残す事もある。

 当然、人も死ねば同じ運命を辿り、装備だけが残ると言う。


 その残ったアイテムは、最後尾の炎尚が回収してどんどん進む。


 結果、半日も掛からず、最深部のボス部屋前に到着した。

 まぁ迷ったのは入り口が複数存在する最初の階層だけで、後は全て地図通りだ。


 情報では、ボス部屋前はセーフゾーンとなっており、ここだけはモンスターが入ってこない。

 ただ、こちらからも攻撃は出来ないのだが。

 そして、ボス部屋の扉だが、かなり大きく鉄の様な素材で出来ている。

 この扉はボスが健在の時は閉まっており、倒されていた場合は扉が開いていると言う。

 現在はボス健在のようだ。

 取り敢えず、そのまま扉を開ける。


 中にいたのはオークが数頭とオークジェネラルが1頭。

 オークジェネラルが俺の方を見て、攻撃の指示を出そうと声を上げようとした瞬間、周囲にいたオークが吹き飛んでいく。

 これは簡単な話だ。

 扉から入った瞬間にオークに突撃し、殴り、蹴り飛ばし、棍で纏めて薙ぎ倒しただけだ。

 オークジェネラルがそれに気が付いた瞬間、棍によって首を薙がれて絶命した。

 そして残ったのは肉と魔石。


「これで良しと……」


 ボス部屋を確認して呟く。

 予想通り、ボス部屋と言うのはかなり広く、篝火の様なものが壁に付いていて結構明るい。

 まぁそれでも暗いので天井に魔法の灯りをいくつか放り投げておく。


「それじゃ、好きに来い」


 そう言って、唖然としてるエーナルの方を向く。

 情報があったとしても、こんな速度でダンジョンを踏破するなんて普通はあり得ない。

 しかも、息一つ乱さず、最初から終わりまで先頭を走り、戦闘でもその速度は緩まない。


 エーナルが腰の剣を抜いて構える。

 見事な直剣で、長さはロングソード程度、幅も普通サイズだ。

 しかし、その柄に施された細工は見事な物だ。

 材質もただの鉄では無く、ミスリルや魔金属等のレアメタルを豊富に含んだ逸品だ。


 エーナルが一気に跳び込み袈裟斬りに剣を振う。

 それを受ける事無く、半歩だけ動いて回避し、逆に棍の先端でエーナルの足元を掬う。

 だが、エーナルは跳んで回避し、着地した後、振り向き様に横薙ぎに剣を振う。

 更にそれを下がって回避する。


「弾けろ! 『フレアバレット』!」


 下がった瞬間、エーナルの左手から小さな火の玉が散弾の如く発射され、それに追従する様にエーナルが続く。

 これは初級の魔術で、とにかく前方の広範囲に向けて大量の火の玉を発射する。

 一発一発のダメージは低く、ただの牽制程度にしかならないが、これを全て回避するのは通常では至難だ。

 落ち着いて棍を回し、全て弾き飛ばす。

 そして、突き出されたエーナルの剣をスレスレで回避し、通り過ぎ様に膝で思い切りエーナルの腹部を蹴り上げる。

 そのまま棍でエーナルの首裏を叩き、エーナルが地面を転がり、その首筋に棍を当てた所で終了となった。

 最も、転がった時点で気絶していたようだが。


 イーランがエーナルを引き摺って部屋の端に移動させると、次はテランが剣と盾を構える。

 彼女の剣もエーナルの物とほぼ同じだが、特徴的なのは盾だ。

 形状は普通のナイトシールドなのだが、材質がオリハルコンとマギタイトと言う魔金属で出来ている。

 マギタイトと言うのは、多量の魔力を含んだ金属で魔法と相性が良く、通常は魔剣等の武具に使用される。

 しかし、コレを盾に使用した場合、本人の魔力を纏って魔法を遮る効果を発揮する。

 最も、こういう使い方をするのは珍しく、持っている人物は少ない。


 テランが盾を構えたまま、ジリジリと距離を詰めてくる。

 エーナルが一気に跳び込んであっさり倒された事から、こちらの隙を窺っているようだ。

 まぁそんなゆっくりやるのは時間が惜しいので、今度は俺の方から一気に行く。


 テランにに向けて一気に飛び出し、棍を突き出す。

 その行動に多少テランが驚いているが、落ち付いた様に盾で横に受け流す。

 更にそのまま剣を突き出してくるが、半身を反らして回避しながら接近し、彼女の手を掴み取ると、相手の勢いも利用してそのまま投げ飛ばした。

 背中側から地面に叩き付けられ、その眼前に棍を突き付けてテランもここで脱落。


 そして、イーランと戦う事になるのだが勝負にならなかった。

 弓は一度放てば再度(つが)えなければ、再度攻撃は出来ない。

 最初の一撃を回避した後、一気に接近して矢ごと弓を掴み、テランと同じように投げ飛ばして終了。


 エルは魔法使い同士で力量を図る方法として、同時に展開できる魔法数での勝負となった。

 (おびただ)しい数の火の玉がエルの周りに浮かぶのを見た後、俺の周囲に火、風、土、水、雷、氷と複数の魔法の玉を各10個ずつ同時に浮かべる。

 数的には俺の方が少ないが、それを見たエルが負けを宣言。

 展開する魔法数である程度の力量は判るが、同時に行使できる異なる魔法属性で、その力量を詳しく図る事が出来る。

 俺が同時行使出来る最大数は、今生み出している以外に光と闇があり、全部で8種までだ。


「さて、どうする?」


 壁際で並んだ4人に聞く。

 もし、炎尚の方を選んだ場合、ダンジョンからは脱出となる。

 俺の方を選んだ場合は、このまま続行だが……


「……アンタの方を選んだとして、確実に強くなれるのか?」


「まぁ、そこはお前達次第だが……少なくとも、今よりは強くなるな」


 それを聞いて、エーナルが考え込む。

 そして、俺に向けて頭を下げた。


「今回の試験は絶対に失敗出来ない……強くして欲しい……」


「……わかった、炎尚、毎日夜に補給を頼む」


「畏まりました」


 俺の言葉を受けて、炎尚が部屋の奥に行き、転移陣で地上へと帰って行く。

 さて、それじゃまず最初にやる事があるな。


「それじゃ、全員今使ってる装備は全部外してくれ」


「全部ですか?」


「これから一ヶ月間、この場所に籠ってる間、整備も何も出来んから壊れるぞ」


 俺の言葉でエーナル達が顔を見合わせる。


「……籠る?」


「籠る」


「……どこに?」


「ここに」


「冗談ですよね?」


「……さぁ、死ぬ気で特訓しようか」


 それを聞いて、全員が渋々と言った感じで装備を外していく。

 さてさて、それじゃ始めようかね。


 特訓(地獄)を……




それでは、また3日後にお逢いしましょう


面白いなーとか続きを読みたいなーと思ったら、ブックマーク・評価してくれると、作者がすごく嬉しくなります

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