第35話
次の日、多少は眠いが我慢しながら、今回の討伐依頼で使用すると予想されるアイテムを補充する為に店を回る。
回復魔法を使うまでも無い傷に使う傷薬や、虫除け等を買い足していく。
そして、更にそういった回復薬を染み込ませた包帯があり、冒険者に重宝されている。
今回は要求される日数が少ないので、それほど必要になる訳ではないが、あるのと無いのでは大違いだ。
そうして買い足したアイテムはインベントリに収納して置く。
こういうアイテムは作れない訳ではないが、金は使わなければ経済が停滞する。
貯め込むのも良いが、ちゃんと使ってこそ経済は回る。
そうしていると、店の一つから見知った人物達が出て来た。
「マキーシャ達も買い出しか?」
「ん? あぁ、孤児院で色々足りなくなってね」
「そう言う王牙は?」
「俺は今度の依頼で使いそうなのをな」
マキーシャ達は、現在装備の修理の期間中、孤児院の手伝いをしている。
その破損の原因になったのが、グラップグリズリーと言う強力なモンスターであり、そのモンスターを追い出したのが、今回のライカンスロ
ープ達の群れになる。
本当なら、マキーシャ達にも参加して欲しかったが、流石に防具も無しに相手が出来る様な相手では無い。
マキーシャ達にも話は言っていた様で、残念そうにしていた。
「それにしても、アーノルドのおやっさんが来るとはね」
「知り合いか?」
マキーシャが懐かしそうに言ったので、どうも知り合いのようだ。
聞けば、マキーシャ達が冒険者として駆け出しだった頃、王都近くでモンスターの奇襲を受けて危険な目にあった時に、偶々通り掛かって
助けてもらった事があり、その際、短い間だが師事してもらったのだそうだ。
一応、マキーシャはアーノルドに、リョウはチームメイトの剣士に、シシーはヒーラーに師事して貰った。
それ以来、王都に行って暇があれば色々話しているのだと言う。
最近は暇が無かったそうだが……
「後は、カカナ達は一応、後輩だね」
リョウが言うには、カカナのチームは全員サガナ出身だそうだ。
更に、一時期マキーシャ達が先輩冒険者として、色々と面倒を見ていた。
だから、マキーシャ達のチームと似た構成になってるのか……
カカナのチームは、カカナと剣士の青年、魔法使いの少女と3人組だ。
剣士の青年の名はハーグ、金髪金眼で、リョウとは違って一回り以上巨大な盾を持っている。
魔法使いの少女はマーリン、緑髪に赤い瞳で、シシーが言うには内包する魔力はかなりの量があると言う。
この際だから他のメンバーの事を聞く。
やはり、マキーシャは冒険者としては活動期間が長いだけあって、他の冒険者の事も良く知っていた。
まずはレノク達。
リーダーのレノクは肉弾戦主体のパワーファイターだが、別に武器が使えない訳ではないそうで、必要な場合は使うそうだ。
そして、チームメイトは3人で、全員が獣人だ。
それも猫、虎、象の獣人であり、全員が剣士。
猫獣人のファーナ、象獣人のガランド、そして、虎獣人のボーレルと言い、ボーレルはレノクの弟だと言う。
リョーキは、巨大な斧を使う戦士であり、そのパワーだけなら金級に匹敵するという。
そして、チームメイトは3人で、同じように全員が獣人。
兎、鳥、狼で、剣士と弓使いで構成されており、レノク達とは良く一緒に活動していると言う。
兎獣人のファダンは弓使いで、戦場を飛び回って移動しては矢を撃ち込む。
鳥獣人はレアードと言い、鷹の獣人で槍使いだが、剣も使う。
狼獣人はマークと言い、両手剣を使うのだが、実は前に一緒に護衛依頼を受けた狼獣人のガリーノの弟だと言う。
ジーナ達は、屋敷に招いているので一応知っているが、ジーナを含めて3人、全員が盗賊だ。
ジーナは各種ナイフを使うらしく、それなりに有名人だと言う。
そして、チームメイトの二人も武器のこだわりは無いと言うが、ショートソードを好んで使うのがミナキ、カスタムクロスボウを使うのがラナ。
この二人、ターバンのような物で顔を隠していて、目元しか見えないので、どんな人相なのか不明だ。
そして、アーノルド達だがマキーシャ達が言うには理想のチームだと言う。
リーダーのアーノルドは金級の中でも単発威力で言うなら最強クラス。
ただ、かなり不器用で武器を使うのが苦手らしく、そんな時に武器に頼らない肉弾戦を開眼したと言う。
その結果、数々の偉業を成し遂げ、金級となった。
そして、そのチームメイトは剣士の青年と、ヒーラーの少女。
剣士の青年はブラウと言う名で、銀髪赤眼で、体格としては中肉中背。
戦闘方法だが、小型の盾とロングソードを巧みに使いこなしている。
中でも、盾を使って相手の攻撃を受け流してから、カウンターで攻撃するスタイルを得意としている。
そして、ヒーラーの少女はストレア、金髪青眼で、身長的にはシシーとほぼ変わらない。
シシーと同じで教会出身であり、前衛である2人に的確な回復をする等、戦闘を冷静に判断する事が出来ている。
他にも、ヒーラーでありながら攻撃魔法にも精通しており、強力な攻撃魔法で援護をしてる。
そしてエーナル達。
リーダーのエーナルは、天才と呼ばれている金級冒険者であり、多くの難しい依頼を達成して金級になったと言う。
そして、エーナル自身は王都にある『王立学園』を首席で卒業しているのだという。
チームメイトは3人で、メンバーも剣士、魔法使い、弓使いとバランスが良いのだが、全員女性で、所謂ハーレムだ。
剣士のテランは銀髪緑眼で、剣と盾のオーソドックスなスタイルで、実力もそれなりに高いと言う。
魔法使いはエルと言い、黒髪に赤眼、そして魔力量が多いのを活用し、とにかく中級魔法を連発して圧倒すると言う。
弓使いはイーラン、金髪金眼のハーフエルフで、その腕前は並ぶ者無しと言われている。
それらを聞いて、マキーシャ達にカカナ達と会わないのかと聞いてみたが、依頼前の大事な時に会う気は無いと言う。
気が緩む可能性があるので、会うなら依頼が終わってからだ。
ただし、アーノルド達ならそんな心配は無いので、後で冒険者ギルドに顔を出してみると言う。
そして、前から気になっていた事を聞く事にした。
「マキーシャ達に聞きたいんだが、『禁忌スキル』ってのは何なんだ?」
その言葉でマキーシャ達の表情が暗くなる。
恐らく、相当ヤバイスキルなんだろうが、ゲームでは聞いた事が無い。
もし、習得しているスキルの中に、同じようなモノがあった場合、使用しないようにしないといけない。
「ここじゃアレだから、少し離れよう」
マキーシャに促されてその場から離れる。
そしてやってきたのは、郊外にある閑散とした広場。
近くに墓地があるので、日中でも人はまばらだ。
「さて、『禁忌スキル』に付いてだけど……王牙はそれを知ってどうするんだい?」
「聞いた事が無くてな、一応、知識として知って置いた方が良いだろう?」
「まぁ王牙なら別に知っても使う様な事はしないか……」
マキーシャが、俺の言葉を聞いて納得したように呟く。
そして、禁忌スキルに付いて話してくれた。
それは、今から100年程前、とある冒険者が発現させた強力なスキルだった。
それを使用すると、体表は鋼の如く強固になり、力は龍をも凌ぐ強さを手にする事が出来る。
しかも、反動が起こらず、革命的なスキルと持て囃された。
だが、それを使用していた冒険者達に奇妙な事が起こり始めた。
ある者は声が聞こえると言い、またある者は何もない場所で死んだはずの仲間を見たと言う。
最初はただの気のせいだとしていたが、そんな時にある事件が起きた。
冒険者達の一部が村の一つを壊滅させ、とある儀式を行った。
だが、儀式は成功せず、討伐軍を半壊させた所で、冒険者達は一人だけ残して壊滅。
その生き残った冒険者は酷く錯乱しており、それでも唯一判った事は、何かを酷く恐れていて、この儀式を行う事でそれが解消される可能性があった、と言う事だけだった。
その後、その事件を徹底的に調べた結果、その事件に関わっていた冒険者は、全員そのスキルを多用していたと言う事だった。
それを受けて、スキルその物を調べた所、そのスキルは『あるモノ』から力を得る物である事が判明した。
それは、堕ちた神である邪神。
その力の一旦を引き寄せ、自らを憑代にして顕現させる。
確かに絶大な効力を得る事が出来るが、代償に自らの存在そのものが削り取られていく。
このスキルの恐ろしい所は、表立って反動が無い、と思わせる所だ。
そして、使用し続ける事で、徐々に邪神の一部となっていき、邪神を復活させる為の儀式を行わせる。
聞こえる声は『邪神の囁き』と呼ばれ、死んだはずの仲間が見えるのは、自らの存在そのものが不安定になってしまったからだ。
それが判明した後、すぐに冒険者ギルドはそのスキルを『禁忌スキル』として冒険者達に説明。
数多くの国でも使用を禁止する事になったが、冒険者の中にはそれを使用せねばならない場面もある、と言う事で使用した場合、代償を払う事で相殺する方法を確立させた。
つまり、邪神の一部を肉体の一部だけに限定して顕現させ、使用した際にその部位を消滅させる事で、存在そのものを保護するようにした。
そして、代償として失う為、どんな方法でも二度と修復出来無い。
更に、習得させる条件を厳しく制限し、習得者も勝手に他者に教える事を禁止した。
習得するには、所属している冒険者ギルドと教会の許可、そして複数の金級以上の冒険者が許可した場合のみとなった。
ここで何故、国が入っていないのかと言う疑問があるが、これは冒険者は国に属している訳では無いからだ。
ドーザードは王国で銀級に上がった際に、アーノルドと他の金級冒険者の許可を得て習得。
そして、仲間をグラップグリズリーから守る為に、禁忌スキルを使用して片腕と片足を失った。
しかし、マキーシャ達もそのスキルの名前に付いては知らないと言い、前にアーノルドに聞いた所、知るべきでは無いと、厳しく怒られたと言う。
ドーザードが使った際、近くにいたはずだから聞いたのかと思ったが、どうやら声に出さずとも発動させる事が出来るようだ。
神の一部を顕現させるスキルと言うのは、ゲームでも聞いた事は無い。
だが、知って置いて良かった。
もし、そのスキルを知っても絶対に使用しないと心に決める。
その後、マキーシャ達と別れて、屋敷に戻ってくる。
手に入ったアイテムを整理し、作り掛けの装具を仕上げる。
しかし、魔法とスキルは便利だ。
普通に考えれば、一つ作るのにかなりの時間が掛かる物でも、あっという間に作る事が出来る。
そうして出来上がったのは、灰色の胸当てと肩当て。
これが手持ちの素材で作れる、無能力であっても相当な防御力を持つ装具だ。
素材はブラッドベヒモスと言う『終焉の底』に出て来るボスクラスの物。
ベヒモス自体は他でも出て来るのだが、ブラッドベヒモスだけは『終焉の底』にしか出現しない。
そしてこの素材、ゲームでは譲渡不可アイテムだったので、持っているユーザーは少ない。
ただ、出現する階層は浅いので、狙おうと思えば狙う事が出来る。
最も、行くまでが大変だが……
胸当ての裏に焼き鏝で一応紋を入れておく。
その後は、実際に装着してみて動きを阻害しない事を確認。
更に、実際の戦闘で問題無いかを確認する為に、炎尚と模擬戦を行う。
結論から言えば、問題無し。
問題といえば、今回くらいしか使わないという点だ。
まぁ後々使う事もあるだろうし、インベントリに保管して置こう。
さて、これでやるべき事は終わった。
後は依頼を無事に終えて帰って来るだけだ。
それでは、また3日後にお逢いしましょう
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