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第34話




 周囲にいる冒険者は全員、銀級か金級だ。

 なのに、何故か銅級の俺も参加が決まっている様な流れだ。


「まぁ、今回の作戦でトラブルが起きてもこの面子なら対処出来るじゃろ」


「確かに、吾輩達ならどんな状況にも対応出来るのである」


 クックの言葉に、一際デカいオッサンがそう言いながら頷いている。

 このオッサンは金級冒険者のアーノルド。

 銀の短髪に軍服の様な服がはち切れんばかりの筋肉、武器はその肉体を活かした肉弾戦を得意としているらしい。

 そして、ドーザードはアーノルドの元部下だったらしく、グラップグリズリー戦での怪我を心配していた。


「ちょっと待て、なんで俺まで参加になってるんだ」


 俺の言葉にクックが不思議そうな表情を浮かべていた。


「お前さんは抑えの要じゃろ?」


「いや、銅級に何を期待してるんだよ」


「ふむ、見た事無い男じゃが、お前さんがそう言うからには強いのか?」


「全盛期の儂でも歯が立たんじゃろうな」


 この二人、かなり親しい間柄のようだ。

 と言うか、完全に俺も参加するのは確定なのか……


「まぁそう言う訳じゃから、頑張ってくれぃ」


「待て、その男は銅級なのだろう?」


 そう言ったのは赤毛の長髪の青年。

 身に纏っている防具は、細部に金細工が施された立派な軽鎧だ。

 だが、その視線は冷たく、明らかにこちらを見下している。

 この青年がもう一人の金級で、エーナル=クァント=バシーナと言う名らしい。


「そんな力不足の奴が、何故今回の作戦に同行する必要がある?」


 まぁうん、そう言う反応になるよな。

 しかし、他人から改めて言われると若干イラっとするな。


「そもそも、ライカンスロープとコボルド如き、僕等が出るまでも無く倒せるだろう?」


 エーナルのこの言葉には一部間違いがある。

 コボルドはともかく、ライカンスロープは実に厄介な能力を持っていて、下手な冒険者には相手が出来ない。

 その能力とは、ダメージを受けた瞬間から発動する物で、一撃受けるごとに能力が倍になっていく。

 そして、瀕死になればなるほど、その身体は強靭になっていく。

 つまり、確実に一撃で倒さなければならないのだ。

 恐らく、マキーシャに強化魔法を掛けてギリギリどうにかなるくらいだ。

 今回の作戦では、強襲を掛けて単発威力のある攻撃でライカンスロープを優先して倒し、コボルドを順次撃破するのが目的だ。

 アーノルドはともかく、エーナルがマキーシャ以上の攻撃力を出せるとは思えないのだが……

 金級なのだし、何か隠し玉を持っているのだろう。


「ギルドマスターの言葉を信じられないのか?」


 そう言ったのは、銀級チームのカカナと言う女性冒険者。

 青髪のショートで黒い皮鎧を着込んでおり、銀の槍を背負っている。

 その表情を見る限り、どうもエーナルとは仲が悪いようだ。


「フン、年寄の言葉など信用出来るものか」


「そういう事を言う物では無いんじゃないか?」


 そう(たしな)めるのは同じ銀級のレノク。

 虎の獣人であり、アーノルドと同じで肉弾戦を得意としている。

 同意する様に、隣に座っていた黒狼獣人が頷いている。

 こちらも銀級でリョーキと言い、武器は大型の斧。

 その中で一人静かにしているのは、カカナの隣に座っている黒髪の女性。

 女性と言うより、少女と言う見た目だが、名はジーナ。

 盗賊であり、武器は特に決めていないと言う。


「だが事実であろう?」


「まぁまぁ、ここは実際に試してみれば良いのである」


 アーノルドがそう言いながらこちらを見る。

 つまり、エーナルと模擬戦をしろと言うのだろう。

 ここは、はっきり言っておこう。


「そんなことして何の意味があるんだ?」


「何だと?」


 別に模擬戦をする事には異議は無い。

 俺だって神威達とよくやってるからな。

 毎回思うのだが、こういった実力を見せつける事を目的に、模擬戦をすると言うのは意味が無いと思っている。

 勝ってもほぼ恨まれ、ワザと負けても助長させるだけ。

 それに、下手に怪我でもさせたら大事な戦力が減ってしまう。

 

 ただ、それを聞いてエーナルの不機嫌具合が若干上がったようだ。

 まぁ別に俺が参加出来なくなっても問題無いから良いか。


「別に与えられた役目をこなせば問題無いだろう?」


「銅級の癖に良く言う」


 エーナルにそう言われるが、別に気にしない。

 険悪なムードだが、そこでクックが手を叩く。


「まぁ思う所はあるだろうが、実際に戦っている所を見て判断してくれ」


「フン……ライカンスロープなど、僕が刻み殺してやるさ」


 その言葉でエーナルが部屋を出て行く。

 その姿を見る限り、何か嫌な予感がするが、まぁあんなのでも金級なんだから大丈夫だろう。


「まったく、最近のエーナルは困ったモノである」


 アーノルドがそう言いながら頭を掻く。

 どうも最近、何かと焦っているようで乱暴気味になっているのだと言う。

 まぁ今回の作戦中に失敗しなければ良いさ。


 一応、今回の依頼は緊急扱いになり、一人に報酬として銀貨300枚、更にライカンスロープの数に応じて増額すると言う。

 そして、嬉しくない事に、この依頼を達成したら俺のランクが銀級に上がると言う。

 上げなくていいから、不参加って駄目なんだろうか……



 そうして、取り敢えず解散となったのだが、クックとアーノルドは別の話があると言う事でそのままギルドに残り、他のメンバーは各々が宿泊している宿に戻っていく。

 が、何故かジーナが屋敷に来ている。

 聞けば、彼女のチームは全員が盗賊で構成されており、前に盗賊を含む賊が屋敷に侵入して返り討ちにあった事を聞き、興味を持っていたと言う。

 そんな時にこの話が来たので、丁度良いと言う事で引き受けたらしい。

 しかし、賊の相手をしたのは炎尚と神楽だからなぁ。

 取り敢えず、二人を呼んで話をさせてみる。


 この交流がお互いに良い結果になれば良いが……

 まぁどっちも殆ど喋らないから、どういう状況なのか判らないのが難点。


 そうしていると動きがあった。

 彼女達は3人組なのだが、リーダーであるジーナと神楽がある賭けをする事になった。

 互いにナイフを3本使い、遠距離の目標に対してどれだけ早く、確実に投擲し終えるか、というモノ。

 的までの距離は30メートルほどで、使用するナイフも店で買える普通の品。


 互いに並び、庭先に置いた皮鎧を着せた複数のマネキンを狙う。

 ジーナは軽く両手を開いて構え、神楽はいつものメイド服で両手は前で揃えている。

 そして、ナイフは両者の横に置いたテーブルの上に、鞘に収まって置かれている。

 普通に考えれば、開始と同時に手に取って鞘からナイフを抜き、それから的に投擲するのだろう。


「では、開始の合図をお願いします」


 ジーナがそう言って、炎尚に一枚の金貨を手渡す。

 見る限りごく普通の金貨だ。

 炎尚がその金貨を指で弾き、金貨が宙を舞う。

 そして、その金貨が地面に落ちた瞬間、ジーナがテーブルのナイフを全て手に取り、鞘から抜いて投擲を始めようとした瞬間、神楽の片腕が霞み、目の前のマネキン達に3本のナイフがほぼ同時に突き刺さった。

 刺さった場所も、腹の肝臓部分、胸の心臓部分、頭部の右眼球部分と確実に急所となる部分に突き刺さっている。

 投げる瞬間だったジーナは、その動きが止まっている。


 まぁそりゃそうなるか。

 今回のナイフは元々投擲用の物を使った為、しっかりとした鞘では無く、あくまでも刀身を覆っているだけの物だ。

 その為、神楽は柄の部分を指に引っ掛け、勢い良く抜いてそのまま投擲したのだ。

 なので、ジーナがやったような鞘を抜く動作が無い。

 後は普通に技術の差だ。

 正直、同じ条件だと俺でも勝てない。


「まだ動きに無駄がありますね、突き詰めればこのくらいは出来る様になりますよ」


 神楽がそう言って一礼して屋敷に戻っていく。

 マネキンの方は炎尚と神威が片付けている。

 皮鎧は実験の為に作った物なので、別に駄目になっても問題は無いが……

 あっさり貫通されたのはちょっとショックだ。

 次はもう少し頑丈に作ってみるか。


 ちなみにその後、ジーナ達は帰らずに神楽に師事して貰おうと交渉している。

 神楽も仕事があるからと断っているのだが、中々引き下がらない。

 流石にこれ以上は明後日の討伐に影響が出るので、討伐が終わった後に再交渉すると言う事になり、3人は帰って行った。


「神楽の目から見て、あの3人はどうなんだ?」


「ジーナが頭一つ分抜けている感じで、後ろの二人はまだまだ駆け出しと言った所です」


 神楽の評価は俺達基準だ。

 つまり、それをちゃんとした評価に翻訳すると……


 ジーナは相当強く、後ろの二人もかなりの腕なのだろう。

 と言うより、銀級なんだからその位は当然だろう。

 しかし、どうしても一撃の威力は低くなるので、ライカンスロープ戦ではサポートとコボルド退治がメインになる。

 こうなると、今回のアタッカーになるのは、アーノルド、エーナル、レノク、リョーキの4チーム。

 サポートは、カカナ、ジーナの2チームという感じだが、流石にこれだとバランスが悪い。

 恐らく、アーノルド、レノク、リョーキがアタッカーで、エーナルがサポートに……

 駄目だ、あの性格だと絶対従わないし、カカナとは相性が悪過ぎる。

 そうなると、アーノルドはアタッカーの要になるから外せないとして、レノクかリョーキがサポートに回るしかない。

 個人的にはレノクの方が良いんだが……

 と言うのも、アーノルドとレノクは戦闘スタイルが同じ為、もしもの事を考えると別の戦闘スタイル同士で揃えた方が良いのだ。

 まぁ判断するのはアーノルドだし、俺は状況に合わせて動くしかない。


 そして、今回は神威達は留守番になる。

 実力的には連れて行っても問題無いのだが、サガナの主戦力である銀級がほとんど動けない状況である以上、隠し玉として残しておきたい。

 こうなると、マキーシャ達が動けないのが惜しい。

 そう考えると、マキーシャ達には武具だけじゃなく装具も……

 いや、それは彼女達が望まないだろう。

 これ以上は、俺からの押し付けになる。

 もし、彼女達から希望されたら作れば良い。


 取り敢えず、今回は自分用の装具を用意する。

 武神装具は両腕と両脛にしかなく、胴体部を守る部分は存在しない。

 流石に今回は乱戦が予想出来るので、胴体部を守る装具が必要になる。

 だが、ここで武神装具の難点が邪魔をする。


 武神装具は特定の装具以外では、能力持ち装具と組み合わせる事が出来ないのだ。

 その装備可能な特定の装具が、神威の持つ鬼神装具だけ。

 そして、それとは異なる能力持ちの装具を装備した場合、武神装具の全能力が発揮されなくなってしまうのだ。

 なので、もし装備するなら何の能力も無い皮鎧しかないのだ。


 そのテストで作ったのが、あのマネキンに着せていた皮鎧だ。

 流石に神楽のナイフは防げないのは当然としても、もう少し頑丈に作るべきだろう。

 というか、神楽と炎尚に意見を聞いて作った方が良いか。


 そうして二人の意見を聞きながら、新しい皮鎧を作る事にした。

 使用する皮は色々あるが、無能力と言う条件である以上、ここは素材の能力がモノを言う。

 ここは自重する事はしない。

 何せ、自分の命が掛かっているのだ。


 そんな事を考えながら、ストレージに保管されている素材を選んでいった。




それでは、また3日後にお逢いしましょう


面白いなーとか続きを読みたいなーと思ったら、ブックマーク・評価してくれると、作者がすごく嬉しくなります


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