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第33話




 コボルド。

 犬の様な顔を持つ小型のゴブリン種。

 ゴブリン種ではあるのだが、ゴブリンより強く連携も上手い。

 似通っている両種だが、明確に違う点が一つある。

 それは、武器の存在。


 ゴブリンは木の枝や死んだ冒険者の武器などで武装するので、持っている武器はバラバラだが、コボルドはちゃんと同じ剣や盾などで武装している。

 ゲームの時から長く疑問だったのだが、その答えは意外と近くにあった。


 ダンジョン。

 内部が迷宮になっていたり洞窟だったりと、様々な様相に変化する特殊な場所。

 そこにいるモンスターは基本的にダンジョン特有のモンスターであり、時にアイテムをドロップする。

 そして、そのダンジョンの入り口は一つでは無く、複数存在しているのだ。

 昔、ダンジョンを占有しようとした冒険者がいて、虱潰しに他の入り口を潰したが、暫くすると別の場所に入り口が現れたと言う。

 これにより、把握していない入口が森の中にはいくつもあるのだと言う。

 冬の間、コボルド種等はダンジョンに入って越冬するのだが、その際にコボルド種は食料としてダンジョンモンスターを狩る。

 すると、武器やアイテムがドロップするので、それで武装しているから同一の武器が揃うのだ。

 ちなみに、ゴブリン種はダンジョンには入らず、鉱山の方に移動すると言う。

 何故そんな事が判ったのかと言うと……



 目の前で整列する小型のコボルド種。

 その一番目の前に座るリル。


 そう、依頼を受けて討伐に来たのだが、対象であるコボルドが全員降参した。

 何故降参しているのか判ったのかと言うと、コボルドの一体が人語Lv3を習得していたのだ。

 そして、俺達に出会うなり、降参すると言う事態になった。


 こうなると困るのは俺達だ。

 無抵抗の相手を虐殺するのも気が引けるし、何より意思疎通が出来るのだから話し合いでの解決も出来る。

 これは悩む。

 聞けば、彼等はコボルド種の中でも一番体格が小さい部類で、成長し切っている大人でも成人男性の腰より下くらいしかなく、大して力も無い。

 普段は隠れて暮らしているのだが、今回はリルの嗅覚と俺達の探知レーダーで隠れていた場所に一直線に向かってきた為、人語を話せる個体が降参する事を伝えに来た。

 この後は、全員でこの地を離れると言うが、そもそも彼等は人に迷惑をかけるような暮らしはしていないと言っていた。

 一年を通して隠れて暮らし、森の恵みを主な食料にして、冬の間はダンジョンに隠れ住む。

 見れば武装もボロボロの短剣がほとんどで、防具はサイズの大きい皮鎧を何とか装備している。

 そして、見た目なのだが、なんというか普通に柴犬が人型になった様な感じだ。

 取り敢えず、人に迷惑を掛けていないなら、何故討伐対象になっているのか疑問になる。

 その所も聞いてみるが、彼等にも派閥のような物があり、積極的に攻撃するのは体格の大きいコボルド達で、彼等はとにかく隠れるのだと言う。

 そして、この森の中には彼等以外にコボルド種の群れが2つあると言う。

 一つは最大の体格と群れを誇り、そのリーダーは、コボルドからライカンスロープという魔獣に進化している。

 もう一つは、そのライカンスロープの群れにくっ付いているコバンザメの様な群れで、体格も小さい方で力こそ無いが数がとにかく多い。

 その二つの群れが森の奥におり、一部は進化する為にダンジョンに籠っているという。


 グラップグリズリーが森の奥から出て来たのも、このライカンスロープのせいであり、複数がライカンスロープに進化して、その縄張りを奪い取った。

 その結果、グラップグリズリーが森の奥から出て来てしまったのだと言う。

 ドーザードが禁忌スキルの残滓(ざんし)で結界を張った際、実はこのコボルド達も近くにいて、その周囲で隠蔽魔法を使ってその姿を隠していた。

 その効果範囲にドーザードも巻き込まれていたらしく、結果的に人助けをしていた。


 しかし、この情報はサガナにとってかなり重要な情報だ。

 まず、グラップグリズリーを追い出せる程の、複数のライカンスロープを有する群れがいる事。

 そして、意図せずとはいえ、人助けと意思疎通が出来るコボルド種がいる事。

 まぁリルに怯えて協力しているだけなのかもしれないが……


 この話はすぐに冒険者ギルドに報告するとして、今は彼等の処遇だ。

 俺達は話を聞いたが、他の冒険者達も聞くとは思えない。

 この群れの数は全員合わせても20頭いない。

 取り敢えず、保護と言う名目で連れて行くか……



 門の前で神威とリルに見張らせ、俺だけが冒険者ギルドに向かう。

 そして、すぐに事情を話してギルマスのクック、護衛のギルドナイト二人を連れて戻る。


「まさか魔獣と交渉する事になるとはな」


 クックが目の前のコボルドの一頭を見ながら呟く。

 このコボルドの名前は『チャモ』と言うのだが、群れの中で唯一人語を話せる。

 何故話せるのかは不明だが、気が付いたら話せるようになっていたと言う。

 一応、彼等を保護する代わりに、持ち得る情報を提供してもらう。

 以後、彼等にはサガナの街で暮らすに当たり、色々な雑務をこなして貰う事になる。

 まず、サガナの各所にある警備詰所への配達業務。

 平時は人を使って走らせているが、それより彼等の方が早い。

 緊急を要する場合は通信魔道具を使用するが、これは充填されている魔力をかなり使用するので、平時に使用する事はしない。

 なので、彼等に専用の鞄を作って配達してもらう。

 言葉は離せないが、鞄を見せれば配達だと理解して貰えるし、ちゃんとこちらの言葉は理解できる。

 他にも、その嗅覚で空家への侵入者の調査をしたりと、彼等に出来る事を試験的にどんどんやってもらう。


 これが後に、(しば)隊として正式にギルドに組み込まれる事になり、その初代隊長としてドーザードが就任、副隊長としてチャモが補佐に付いた。

 ドーザードは、結果的に彼等に助けられたようなモノなのでかなり感謝していた。

 ちなみに、何故コボルド隊では無く、柴隊になったのかと言うと、神威が『柴犬隊』と呼んでいたのが短くなって伝わり、いつの間にか柴隊として正式に採用されていた。

 最終的には、ちゃんとした装備が製作され、畑の警備や森への偵察の一部も兼任するようになっていた。



 そして、森の奥にあると言うライカンスロープのいる群れに付いてだが、現在のサガナにコレを殲滅するだけの戦力は、表向き存在しない。

 表向きと言うのは、俺や神威、そしてグラップグリズリーを倒した謎の存在がいる為だが、それを発表する訳にもいかない。

 なので、早急に王都からの援軍を頼む事にした。

 冒険者ギルドのギルドマスタークックと、サガナ街現領主であるゲオルグ=ケールズ=サガナの連名での要請の為、恐らく直ぐに編成される事だろうと言うのは、ギルマスのクック。

 余程の事が無い場合、こういったトップ同士の連名は無く、その為に緊急度は高いと判断される。

 だが、その援軍が来るまでは警備の数を増やす事になり、森を利用する商人達にも注意喚起が行われる。


 緊急時には召集されるので、それ以外は普段通りに過ごす予定だったのだが……

 俺は神威とアイナ達と共に、冒険者ギルドの裏で柴隊の個別登録を行っていた。


 まず、現在やっているのは柴達を全員洗う所からだ。

 元々、身体を洗うなどと言う文化が無いので、泥汚れ等でかなり汚いのがクックから指摘され、保護したのだからと洗うように言われた。

 なので、まずは全員を洗ってから、保護している事を判るように腕輪か首輪を付ける事になる。

 流石に二人でやるのは数的に無理なので、洗うのを俺と神威が担当し、アイナ達はそれが終わった柴隊に腕輪を装着し、右前足に墨を塗って手形と言うか、足形?を取った後、冒険者カードの発行機でカードを発行し、採寸や体格に合う鞄を付けていた。

 手形はもしもの時に個人を特定するのに役立つので、柴隊で試験運用と言う形だ。


 そもそも、この世界では個人を特定するには、個人の魔力波動を使っている。

 一人一人が微妙に違い、それが同一の人物はまずいないのだが、これには一つ欠点が存在する。

 それはその個人が存命している場合に限ると言う事。

 死亡したりしてしまうと魔力波動は失われ、個人を特定出来なくなってしまう。

 それを悪用して、行方不明の相手を死亡したとして、個人を特定できない程に損壊させた死体を用意して、遺産を奪い取ったりすると言う事が未だに横行している。

 そこで、個人を特定する方法として、指紋や掌紋を説明した。

 この二つも同じ人物はおらず、個人を特定する事に役立つのだ。

 ただ、これをいきなり始めようとしてもうまくいかないだろうと言う事で、柴隊で仮運用してから冒険者で試すと言う。


 柴隊は軽装の皮鎧に背負うタイプの鞄の試作品が支給される事になった。

 皮鎧は予算の都合と、彼等の体格の関係で胸当てだけ。

 そして、この鞄は見た目は茶色の学生鞄であるが、全部魔法袋になっている。

 盗難対策として柴隊とギルマス以外には開けられない魔力錠を採用し、もし無理矢理開けようとすると、中の物は消滅する様にされた。

 鞄の数は予備を含めて全部で25個。

 普段は2頭1チームで行動するのだが、チャモだけはギルドにある隊長室でドーザードの補佐になる。

 当面のドーザードの仕事は、柴隊の運用状況や現在の問題点等を纏め、クックや多方面に報告する事になる。

 そして、柴隊の一部はサガナにある警備詰所や兵士詰所を一日に朝昼夕の3回回る。

 その詰所で必要な書類を預かると、他の詰所までそれを運び、もしもギルドへの緊急報告がある場合、遠吠えをする事でチャモが察知して、ドーザードへと報告が行く。

 この遠吠えだが、普通の犬や狼がするような物であり、どんな状況であってもチャモには察知できると言う。

 それを毎日交代で行い、休日もちゃんと管理する。

 給金に関しても、一頭当たりに毎月銀貨7枚、チャモに関しては通訳役として殆ど休みが無いので銀貨10枚となる。

 当初は、彼等に絡むような不届き者もいたのだが、最終的にサガナのマスコットの様な扱いになった。

 他にも、隠れるのが特に得意な一部は、森への偵察業務を受けて森の調査をするようになっていた。

 何というか、サガナの名物の一つになりそうだ。

 だが、彼等の意見を直接聞けないと言うのは問題でもあったので、休日を利用して彼等に文字を教え、筆談を可能に出来ないかとドーザードが提案し、クックが了承した。

 教師役は手の空いた職員が行い、柴隊も積極的に参加した事で、早い段階で文字の読み書きが出来る者が出て来た。

 そこから仲間同士で教え合う事で、全員が筆談が可能になるのに時間は掛からなかった。


 そして、柴隊を運用を開始してから2週間が経過した頃、王都から援軍として銀級チームが4チームと金級チームが2チーム、総勢で21人の冒険者がやってきた。


 全員がライカンスロープと何らかの戦闘経験があり、王都から送れる最大戦力だと言う。

 まず、クックがリーダーを全員を集め、ギルドの一室で状況と作戦を説明する。

 チャモから得た情報で、ライカンスロープのいる群れは、森の奥にある彼等が古木の森と呼んでいる地点を縄張りにしていたと言う。

 なので、まずはその古木の森を迂回して金級チームが背後に回り、銀級チームが抑え込んでいる間に背後から強襲、ライカンスロープを殲滅する。

 今回、コボルドを全滅させる必要は無く、あくまでも目標はライカンスロープ達だ。

 そして、柴隊を見た金級チームの一つから、交渉するのかと言う疑問が出たが、今回は交渉の余地は無い。

 情報では、ライカンスロープ達は凶暴であり、交渉するのは不可能だと言う。

 そもそも、チャモ達柴隊が特殊なだけであり、他の地域でも出来るとは思えない。

 そこら辺はちゃんとクックから釘が刺された。

 もし真似をして、上手くいかずに被害が出たとしても、サガナは責任は取れないからだ。


 作戦決行は明後日。

 それまでに各自は準備を行い、当日ギルドに集合になる。


 ここで疑問がある。


 なんで、銅級の俺も参加する事になってるのかな?




何故見た目が柴犬なのかって?

私が好きだから!(


それでは、また3日後にお逢いしましょう


面白いなーとか続きを読みたいなーと思ったら、ブックマーク・評価してくれると、作者がすごく嬉しくなります

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