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第27話




「制限期間は4日間、テーマは贅沢!」


 目の前でギミナがそう言う。

 その隣には同じ格好の男達が4人。

 今、俺達がいるのは料亭の厨房。


 なんでこうなった……


 少し前、神威とアイナにメンチカツを出し、それをギミナに見付かった。

 そして、何かと聞かれたのでメンチカツを説明したが、何故か料理勝負となった。

 いや、本来なら明日帰る予定なんだけど……

 それにテーマってなんだテーマって……


 言いたい事を言い終わったギミナが厨房奥に消えて行った。


「本当にすみません……」


「アイナのせいじゃないさ……しかし、どうしたモンか……」


 一応、ギミナ側よりかは時間的余裕はある。

 向こうは料亭を休むワケにはいかないからな。

 しかし、贅沢ねぇ……


「安直に珍しかったり高い材料使えばって訳にもいかんよなぁ……」


 確かにそれだけでも贅沢だろう。

 しかし、俺が思うにそう言うのは贅沢の入り口だ。

 だが、そうなるとどうするべきか……


「取り敢えず、どういう材料があるんだ?」


「えーとね、オーク肉とかボア肉とかチキンとかいろいろあるよ?」


 神威が答えるが、主だった肉の良い部分は既にギミナ達に持っていかれていた。

 材料を見て考える。


 良い材料なんだが、相手は王国一とも呼ばれている名高いシェフだ。

 材料が良い物だから勝てる、なんてのは甘い考えだ。

 そう考えつつ、材料を見るが良く考えてみよう。

 ここは料亭で、その食材保管庫だ。

 ここの材料使ったら不味いんじゃないだろうか……



 なので、市場の方に来たのだが、はっきり言って質は悪い。

 見た限り、料亭の材料と比べると、ワンランクかツーランク落ちる。

 それは仕方がないのだが、、今回のテーマと言うか、御題は贅沢。

 それを考えつつ、どういうのが贅沢なのかを考える。


 そして、目の前で量り売りしている物を見る。

 他にもいくつかの品々がある。


 だが、それらを見て、頭の中でパズルが組み上がって行く。

 確か、あの料理はこの世界にないだろう。

 そう思いながら、神威に指示を出して材料を集めた。



 そして、期日である4日後の昼。

 俺達の目の前にギミナが得意気な顔で立っている。

 今回、審査してくれると言うのは、アイナを含む3名。


 一人は王都の冒険者ギルドのギルドマスターである、レイ=アキレウス。

 荒事が苦手そうな見た目の女性だが、元白金級冒険者『荒鷲のアキレウス』と呼ばれている程に強い。

 見た目は長い金髪に、引き締まった体躯、そして白い軍服の様な服を着た美魔女と言う感じだ。

 もう一人は王都商人ギルドのギルドマスター、ロナン=ロック=ウルドガング。

 ウルドガング商会と言う巨大商会のトップにして、王国内に多数の店舗を持っている。

 見た目は褐色肌で切れ長の目をした体躯の良いオッサン。


 二人共興味津々といった感じだ。

 レイは今話題の冒険者を見れると言う事、ロナンは何か新しい商売になるかと期待しているようだ。


「それでは、まずは私の方から」


 ギミナがそう言うと、全員の前に料理が並べられていく。

 見た目も派手やかで豪華な肉料理。

 見ただけでかなり贅沢な料理だとわかる。


「ほう、これは……」


「この肉は、オークキングの物か?」


「はい、偶然市場に出ましたので……」


 ギミナがロナンに言われ、笑みを浮かべながら説明を始めた。

 オークキング。

 豚面のオーク達の最終進化であり、倒すにも金級冒険者が複数人集まらなければならない程強い。

 しかし、その肉は非常に美味であり、一度食べると他の肉では物足りなくなると言われている。


 それを惜しげも無く使用し、焼き上げる油も最高級品であるクリスタルオイルを使用し、彩りに使われているのも、クィーンキャロットやアスパラのような見た目のグリーンピーラー。

 クィーンキャロットは光の加減で金色に輝く人参。

 グリーンピーラーは山の頂上のような過酷な環境で育つほど、エグ味や青臭さが無くなると言うアスパラ。

 一皿で金貨いくらになるんだコレ。


「肉はしっとりしているが、使った油のお陰で後にも残らない」


「何より、焼き加減が絶妙だな、外はカリッとしているが中はジューシーだ」


 レイとロナンが食べつつ感嘆の声を漏らしている。

 確かに、これは絶妙な焼き加減だな。

 しかし、コレは……


「んー……私はもう少し火が通ってた方が良いかな……」


 神威がナイフで肉を切って断面を見ながら呟く。

 お前は歯ごたえがある方が好きだもんな。

 アイナはアイナで若干気分が悪そうだ。

 まぁ無理も無い。

 このオークキングステーキ、所謂和牛の霜降りに近く脂が多い。

 レイは冒険者として活動していたから大丈夫なようだが、アイナにはキツイのだろう。

 結局、アイナは全部食べきれずにギブアップしていた。

 こりゃ俺の料理を食べる前に休憩をはさんだ方が良いかな……


「俺の料理は少し休憩してからの方が良いか?」


 その質問にはレイもロナンも頷いている。

 流石に大人の掌より大きいステーキを喰えば満腹にもなるだろう。

 俺の料理は夕方の方で食べる事になり、各自解散する事になるが、アイナは馬車の中でダウンしている。

 ロナンは午後の商談があると言う事で一時離席。

 ギミナは料亭の仕事があるので厨房に戻って行った。

 そして残ったのは俺と神威、レイの3人。


「少し良いだろうか?」


「何か?」


「先日のフェンリル騒ぎ、治めて下さった事、感謝します」


 レイがそう言いながら頭を下げてくる。

 あぁ、そう言えば止むを得ず対処したな……


「最終的に大人しくさせたのは神威だからな、俺は初撃を凌いだに過ぎないさ」


「その初撃を凌いだだけでも、十分称賛に値するのです」


 まぁ確かに……

 ユーザーであれば対処出来るだろうが、この世界で氷の棺(アイスコフィン)を防ぐ事が出来る人物なんて早々いないだろう。

 しかし、アレは本当にギリギリだったからなぁ……


「それにしても、クックの言った通り銅級とは思えない強さですね」


「ギルマスを知ってるのか?」


「えぇ、昔は彼とパーティーを組んでいましたので」


 おぉ、昔組んでたのか……

 そう言えば、冒険者ギルドに就職する前の事は殆ど知らんな。

 確か金級試験の時に大怪我して引退したんだっけか。


「その彼が最近、面白い新人が入ってきたと言っていましてね。機会があれば会いたいと思っていました」


 そう言うと、椅子から立ち上がり、腰に手を当てる。

 そこには装飾が施された細剣がある。

 見た限り、戦闘用では無く儀礼用と言う感じだ。


「少し、手合せをお願いしても宜しいですか?」


「ギルドマスターがそれで良いのか?」


 もし大怪我させたら責任取れないからな。

 それにクックの知り合いなら、余計に怪我させたくないし。


「構いませんよ、あのクックが認めているのですから、その力、興味があります」


 こりゃ相手しないと逆に悪いか……

 仕方ない。


「それじゃ場所は何処に?」


「ギルドに練兵場がありますので、そこで」


 そうして、レイに案内されたのは巨大な訓練場。

 聞けば、王城の兵士達にも利用されているらしく、隅の方にフルプレートを装備した兵士たちの姿が見える。

 他にもちらほらと冒険者らしき男達の姿が見える。


「それでは、参りましょうか」


「御手柔らかに」


 レイが鞘を付けたままの細剣を構える。

 半身にし切っ先を此方に向けている。

 対して俺は武神棍を構える。

 武神刀でも良かったが、やはり一番使い慣れた武具が一番だろう。


「ではっ」


 一瞬でレイが目の前に現れる。

 恐ろしい程早い踏込みだが、慌てずに突き出される切っ先を棍でずらして回避し、立ち位置を代える。

 更に連続で突きが繰り出されるが、それをステップと棍で回避し続ける。

 そして一瞬の隙に棍を下から掬い上げるようにし、レイの顎を狙う。

 それは読まれていたようで、あっさりと回避される。

 だが、そこからはこちらの攻撃だ。

 流れる様に棍を中心とした体術を駆使し、レイに猛攻を仕掛ける。

 だが、その全てが回避される。

 流石、引退したとはいえ白金級。

 今の俺は、棍術スキルと体術スキルを切った状態だが、レベルに応じたステータスを持っている。

 恐らく、ステータスだけなら白金級の上位クラスだろう。

 それを全て回避出来ると言うレイの身体能力はかなり高い。

 お互いに遠く離れて息を整える。


「流石ですね、私とこれだけ打ち合えたのは、引退してからは貴方が初めてです」


「そりゃどうも」


 時間的にそろそろ切り上げないと、アイナ達を待たせる事になりそうだ。

 棍術スキルと体術スキルをオンにする。

 彼女には悪いが、切り上げるとしよう。


「では、時間的にも良い頃合いですし、最後にしましょうか」


 そう言うとレイの細剣が青白いオーラを纏う。

 どうやら、本気になったようだ。


「これを防ぎきれますか!」


 レイが一気に跳び込み、細剣を振り下ろしてくる。

 それを迎え撃つ様に棍を振ろうとしたが、俺の勘が危険だと警鐘を鳴らした。


 まず細剣と言う武具は、振りより突きに特化した武器だ。

 もちろん、振りが出来ない訳じゃないが、威力は倍近く落ちる。

 そして、この攻撃。

 元白金級ならそんな武具の特徴を知らないハズが無い。

 それでも敢えて振ってくるのであれば、その思惑は二つしかない。

 一つはあのオーラが振りに特化した物である場合。

 もう一つは、振り自体がフェイントである場合。

 しかし、迷う暇は無い。

 もし、罠であったとしても、その罠諸共喰い破る。


 棍が青白いオーラに触れた瞬間、火花を散らして凄まじい音が響き、棍が弾かれる。

 そして、細剣がその瞬間に振りから一気に突きへと変化する。

 成程、迎撃すると相手の武具を弾き飛ばし、無防備になった所に必殺の突きを喰らわせる。

 このままだと、確かにこの突きは俺の胴体部に直撃するだろう。

 だが、そんな攻撃を受ける程、俺は甘くは無い。


 細剣が直撃する瞬間、弾かれた反動を利用し、細剣に合わせて半回転。

 更に、そのまま棍を地面に刺して片足で跳ぶ。

 驚くレイの表情が見えるが、そのまま背後に着地しながら、その肩に手を置いた。


 この瞬間、レイの敗北が確定する。


「驚きました……まさかあそこからそんな動きが出来るとは……」


「まぁバレバレだったからな」


「それでも、私のオーラソードを初見で回避できたのは、貴方で二人目ですよ」


 レイが腰に細剣を戻しながら言う。

 最初の一人はクックか?

 しかし、『オーラソード』か……

 ゲームでは確か闇属性の相手に対し、絶大な効果を発揮する程度の攻撃だったが、現実になるとあんな風に触れたら衝撃が来るようになってるのか……

 この分だと、他の基本スキルも色々と変わってそうだな。


「それでは、そろそろ時間も良い頃合いですし、戻りましょうか?」


 レイがそう言って踵を返す。

 その後に続くが、周囲では見ていた冒険者達が何か言っている。


「おい、荒鷲に勝ったぞアイツ」


「ここ等辺じゃ見ない顔だが何処の誰だ?」


「ウチのチームに来てくれねぇかな……」


「何処にも所属して無いならチャンスがあるぞ」


 何やら色々と問題になりそうだな……

 今回の件が終わったらさっさとサガナに帰って、しばらく王都には近寄らない様にしよう。

 そんな事を思いながら料亭へと戻った。




それでは、また3日後にお逢いしましょう


面白いなーとか続きを読みたいなーと思ったら、ブックマーク・評価してくれると、作者がすごく嬉しくなります

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