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第24話




 噴水を中心とした広場の奥、そこは城に向かって大きな石畳の道があり、そこには簡易の門が出来ており、その入り口の両側に完全武装の兵士が立っている。

 そこで許可証を見せると、兵士が合図をすると、入り口の簡易門が開く。

 アイナに続いて中に入ると、そこには正しく貴族と言う感じの人物達で溢れていた。

 通りの両側に商店が出来ており、それを貴族や高ランクの冒険者と思しき人が覗き込んだり、店主と話し込んでいる。


「こいつは……」


 出品されている魔獣もランクが違う。

 どれもがかなりのランクの魔獣であり、一般の方で売られていたホワイトエッジタイガーも売られている。

 しかし、これ全てが許可貰った店舗なのか……


「ん?」


 入り口に入ってすぐの所に箱が置いてある。

 大きさ的には子供が楽に入れる程度だが、その横に穴が開いている。

 これってもしかしなくても……


「おや、アンタも運試しするかい?」


 箱の裏側から痩せた男が出て来る。

 運試し……

 つまり、これって……


「クジか?」


「そう、魔獣卵の卵クジさ!」


 男が箱を叩きながら言う。

 しかし、魔獣って卵生なのか。


「おっと、ここにあるのは全部鳥系の魔獣だけだからな!」


 そうなのか。

 しかし、鳥系だけだと余り魅力は無いな……

 欲しいのは亜竜系だし。


「此処だけの話、中にはグリフォンの卵もありますぜ」


「グリフォンだと?」


 男が小声で言うので、釣られて小声で返してしまう。

 グリフォン。

 鷲の頭と翼を持ち、獅子の身体を持つ魔獣。

 知能も高く、育て方によっては凄まじく強くなる。


「まぁ当然、ハズレも多数ありますけどね」


 男がそう言って箱の中に手を突っ込み、引き抜くと黒い卵が3つ握られている。

 一つの大きさは鶏卵程度。

 ただ、真っ黒なのはどうしてだ?


「塗ったのか?」


「熟練者だと卵の模様でわかっちまうし、鑑定持ちだとバレちまうんで、その為でさぁ」


 男の言う通り、鑑定眼で卵を調べるが、どれも『???の卵』となっている。

 ふむ、あの塗料で鑑定を誤魔化せるのか……

 卵はともかく、塗料は欲しいな。


「しかし、それだとしても割れないか?」


「殻には強化の魔法が掛かってましてね、相当な力で叩いても割れんのですよ。そして、買った御客には、この魔道具で強化を解除するってこってすな」


 男の後ろには樽の様な魔道具が置いてある。

 鑑定すると、こちらは『強化効果取り消し器』と、そのまんまな名前だった。


「てな訳で、運試しどっすか?」


「悪いが、そう言うのはやらんのでな」


 こういう運が絡むようなギャンブルはやらないと決めている。

 こっちに来る前、株で一生分の運を使い果たした様なもんだし、怖すぎるからな。

 神威も同意見なのか、既に別の店に向かっている。


 男の店を後にし、店舗を巡る。

 主に、愛玩魔獣が多い。

 小型のネズミ魔獣や、ウサギ魔獣、鶏の様な魔獣もいる。

 鶏魔獣は卵が美味で、王都にいる料理人は皆、自分用に一羽飼育していると言う。

 他には変わった魔獣で、カメレオンの様な爬虫類魔獣もいた。


 しかし、一番目を引いたのは、一番奥にある店舗。

 檻には布が被せてあり、その周囲を慌ただしく男達が走り回っている。


「よし、準備は出来たな!」


「バッチリでさ!」


 そう言って、男達が周囲にいた観客を下がらせると、布を外した。


 そこにいたのは青白い体毛の狼。

 その首や脚には黒い革のベルトが付けられている。

 その狼が檻の中心で眠っていた。


「さぁさぁ御立会い!ここにいるのはかの有名な氷結の幻獣『フェンリル』の子供だ!」


 代表らしき男が声を張り上げる。

 それを聞いた観客たちがどよめき出す。


「フェンリル……って冗談でしょ?」


「しかし、あの拘束紋を見て見なさい、あんな上級なのは見た事が無いぞ」


「それじゃ本物?」


 口々に周囲の観客が話し合い始める。

 それを聞いていた男が、腰の袋から何かを取り出して掲げた。


「コレは本物であり、領主様からの公認も出ているっ最低価格は金貨500枚からだ!」


 領主公認。

 それが後押しになったのか、周囲にいた貴族達が挙って金額を上げ始めた。


「アイナ、フェンリルって飼育可能なのか?」


「……一応、可能だとは思いますけど……幻獣なんて何処で手に入れたのかしら……」


 アイナが顎に手をやって考え出す。

 しかし、魔獣では無く幻獣が出て来るとは……


 幻獣と言うのは、動物とも魔獣とも違う存在だ。

 どちらかと言うと、精霊に近く、そのどれもが自然界での最強種の一角を担っている。

 有名なのが一角獣のユニコーンだろう。

 幻獣はこの世界にも存在するが、その目撃例は極端に少ない。

 寧ろ、捕らえるとなると、ユーザークラスの強さが無いと返り討ちにあう。


 しかし、大型犬くらいの大きさで子供なのか……

 大人になったらどれだけデカくなるんだ……


 一応、鑑定眼でどの程度の強さか調べておくか。


 『フェンリル』

 -ランク/EX-

 状態:睡眠毒・拘束弱化・封印弱化・催眠


 ……うん、コレ駄目だわ。

 多分、住処から迷い出た所を睡眠薬か何かで眠らせて、無理矢理拘束したんだな。

 後は催眠魔法で幻覚を見せて、眠らせ続ける。

 しかし、そうなると……

 かなり不味いんじゃないか?


「アイナ、状況によってだが、幻獣って討伐したら不味いか?」


「不味いなんてモノじゃないですね……でも、幻獣は幻獣管理局と言う国家機関がありますから、そこで保護されるはずです」


 そう言って、アイナが熱狂している一画を指差す。

 そこには、男女が互いに一歩も引かずに値段合戦をしている。


「あの女性が、幻獣管理局の方ですね。多分、出品されると聞いて大急ぎで来たんでしょう」


 ふむ。

 言われた女性は、銀髪でふくよかな体系をしており、よく見れば耳が多少尖っている。

 エルフの血が流れているようだな。

 そして、それに対抗しているのは、脂ぎった顔に出っ張った腹と、いかに不健康そうな成金オッサンだった。

 ちなみに、現在、金貨900枚を突破している。


「金貨1000枚!」


 成金オッサンが遂に1000枚と宣言する。

 対して女性は、何かを考えている。

 恐らく、それ以上の金額を出す為に取捨選択をしているのだろう。


「金貨1010枚!」


「金貨1100枚!」


 女性が提示した後、成金オッサンが畳み掛ける様に即座に値段を上げる。

 こりゃ勝負あったな。

 どう考えても、女性があの成金オッサンに勝てる筈が無い。

 女性が悔しそうに拳を握っているのを、成金オッサンがニヤニヤしながら見下ろしている。


 その時、檻の近くに立っていた男がドサリと倒れた。

 男を見ると、かなり顔色が悪い。


「おい、大丈夫か?」


 声を掛けるが返事が無い。

 どういう事だ?


「ま、不味いっおい、ガモイを呼んで来い!」


 代表の男が倒れた男を見て、別の男に指示を出す。

 マジでどういう事だ?


「おいっ金貨1100枚でワシが買うので良いのか!?」


 成金オッサンが代表の男に声を掛けるが、それ所では無い様に慌てている。

 見れば、遠くからドレッドヘアーの黒人らしき男が此方に走って来ている。

 倒れた男を鑑定眼で調べた所、状態が『魔力欠乏』となっていた。

 つまり、この倒れた男は魔術師か、呪術師と言う事だ。


 ……もしかしなくても、催眠と幻覚魔法はこの男が掛けてたのか?


 ……それって凄く不味いんじゃないか??


「ガモイっお前何処に行ってた!」


「少し席を外すって言ったっしょ、で?」


「コイツが倒れたっ早くしろ!」


「はいはいっと……」


 ガモイと呼ばれた男が、代表にどやされながら檻に近付く。

 そして、檻に手を翳すと小さく詠唱する。


「深く眠れ催眠(ヒュプノス)っと」


 フェンリルの頭の当たりに青い輪が現れ、弾ける。

 アレで成功したのか?

 ガモイが大きく伸びをする。


「悪りぃ失敗しちった」


 そう告げた。



 ゆっくりと、フェンリルの目が開く。

 まず、フェンリルの目に映ったのは輝く太陽の光。

 今まで、気分の良い住処の洞窟にいたはずだ。

 それが何故、太陽が見える場所にいる?

 そして、何か耳障りな音も聞こえる。

 確認しようにも上手く体が動かない。

 首を持ち上げ、周囲を見回す。

 そこには、自分を見る大量の人がいた。


 この地に産まれてから、このフェンリルは人など見た事が無い。

 しかも、今まで催眠で眠り続け、目覚めても幻覚を見続けてきた。


 そんな状態だったのが、急に鉄の棒に囲まれ、知らない生物に囲まれていればどうなるか?


 フェンリルはパニック状態になっていた。

 これが大人のフェンリルであれば、冷静に対処出来ただろうが、このフェンリルはまだ子供だ。

 自身の思考が追い付かない状態になり、とにかく此処から住処の洞窟に逃げる事を考える。

 周囲にいる生物に関しては、いつも魔獣と戦う時と同じようにしてしまえば良い。




「げ、幻覚を使えっ」


「やー無理っすわ、完全に起きちまったんじゃ効きゃしませんって」


 代表の男がガモイに掴み掛るが、ガモイはヘラヘラと笑いながら返す。

 しかし、コレは笑い事で済ますような状態では無い。

 見れば、フェンリルはしきりに周囲を確認しているが、その眼は完全に混乱している。

 ふら付きながらフェンリルが立ち上がると、足に巻いていた革ベルトが弾け飛んだ。

 そして、半開きの口元に青白い光が収束していく。


 ゲームでも同じ予備動作をする攻撃が一つだけ存在する。


「まさか……」


 俺の脳裏に嫌な記憶が蘇える。


 アレはまだ、ゲームでフェンリルが実装された当時の事。

 数多くのユーザーがフェンリルに挑んでは散って行った。

 その最大の要因が、初見殺しと言われたある極大魔術。

 体内の精霊力と空気中にある魔力を集約し、一瞬で超極低温の空間を作り出す。

 しかも、それをいきなり使用して来る為、知らなければまず止められない。

 そして、ソレが発動すれば、周囲30メートル以内にいる存在は氷の彫像と化す。


 対処方法は二つある。

 一つは発動前に潰す事。

 もう一つは、発動後、被害を最小限に食い止める事。

 今回は、最小限に食い止めるしか無い。


「神威!」


「あいさっ!」


 棍を構えた俺の意図を察したのか、神威がその棍に足を掛ける。

 そのまま、全力で棍を振って神威を反対側に投げ飛ばす。

 檻を飛び越え、滑りながら神威が着地したのを確認し、棍をインベントリに収納する。


「大地よ、我が意に従い檻と成れ!『岩の牢獄(ロック・プリズン)』!」


 俺の魔法で、フェンリルの周囲に巨大な岩柱が地面から空に向かっていくつも伸びる。

 それが檻を破壊し、フェンリルを中心にして円錐の状態で閉じ込める。

 これで被害自体は最小限になるが、不十分だ。


「炎を纏いし遮る盾よ、全てを焦がす炎の輪となれ!『炎熱の円盾(ヒート・サークル)』!」


 続けて神威の魔法が発動する。

 出来上がった岩の円錐の周囲の地面に、炎が走って円を描く。

 そして、円錐の頂点を目指して炎が円錐を駆け上がった。

 これで何とか被害は抑えられるだろう。


「全員、離れろ!」


 俺の言葉を受けて、近くにいた貴族達が逃げ始める。 

 いや、遅いって……

 しかし、もしも本当にあの攻撃がゲームと同じなら、相当不味い。

 これで抑え込んだとしても、ここは現実。

 もし、連発できるようなら、アイナと幻獣管理局の女性には悪いが、犠牲が増える前に討伐するしか無い。


「『氷の棺(アイス・コフィン)』が来るぞ!」


 瞬間、岩の円錐の中から、ガチンッと音が響く。

 そして、一気に持っていかれ始める魔力。 

 この拘束魔法、内部に閉じ込めた対象が暴れれば暴れる程魔力を消費していく。

 今回は、相手の極大魔術を抑え込んでいる為、恐ろしいスピードで魔力が無くなっていく。

 反対側では、同じように神威が魔法の維持をしているが、俺よりかはマシなはずだ。


 神威がやっているのは、ただ単に周囲に高熱を作り出し、『氷の棺』による極低温を相殺しているだけだ。

 しかし、それでも結構キツイだろう。


 そうしていると、魔力の減少が無くなった事から、どうやら『氷の棺』は終了したようだ。

 ただ、油断せずに魔法を解除すると、岩の円錐が崩れてフェンリルが姿を現す。

 まだパニック状態ではあるようだが、『氷の棺』を使用した事により相当疲労しているようだ。


 さて、嫌な役回りだが、始末するしかないか……




また3日後にお逢いしましょう


面白いなーとか続きを読みたいなーと思ったら、ブックマーク・評価してくれると、作者がすごく嬉しくなります

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