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第22話




 そしてやってきた春。

 と言っても別にやってる事は変わらないのだが。


「取り敢えず、多分これで最後だ」


 冒険者ギルドの受付で採取した雪花を机に置く。

 今回持って来た雪花で、森の中に咲いていた分はもうない。

 次採取できるのは冬を待たなければならない。


「確かに受け取りました」


 アイナが数を確認し、それを袋に詰める。

 そして、成功報酬として銅貨40枚を出してくれた。

 これである程度の資金は出来た。


 錬金術ギルドから利益の一部も払われているので、コレで手持ちは金貨70枚程になった。

 魔獣祭でどれだけ使うか分からないが、持って置いて損は無い。

 ちなみに、魔獣祭の開催は来週の半ばくらい。

 曖昧なのは、毎年その位に始まるらしいからだ。

 なので、予定では明日、アイナと神威を連れて王都に向けて出発する。

 後は道中の食事だが、既に準備はしてある。

 今回はベーコンとソーセージが良い感じに仕上がったので、道中も楽しみだ。

 トマトベースの煮込みや、シチュー、そしてこの冬に鍛冶炉を設置したので、飯盒(はんごう)を作った。

 そう、米が食えるようになったのだ。

 後は、必要なスパイスを集めれば……

 そんな事を考えている俺の後ろの酒場では、そんな俺を見る数人の男達の視線があった。


 そして、出発当日。

 インベントリを確認し、忘れている物が無い事を再度確認する。


「それじゃ、留守の間、頼むぞ」


「はい、行ってらっしゃいませ」


 炎尚と神楽に見送られ、アイナと約束した門に向かう。

 そこにあったのはそこそこ大きな馬車。

 ただし、その側面には金色の巨大な獅子の紋が描かれていた。

 もしかしなくても、アイナの実家?の馬車か?


「どうかしましたか?」


 その中からアイナが出て来る。

 うん、色々と予想外過ぎだ。


「この馬車ってアイナさん家の?」


「父が手配してしまうので…」


 神威に聞かれて、アイナがそう答える。

 アイナの親父さんはどうやら過保護のようだ。

 まぁこちらとしても助かるのだが。


 馬車は3人が乗ってもくつろげるスペースがあり、車輪部分も独立しているらしく、振動がほとんど無い。

 そして、御者が二人いて交代しながら進むので、ほぼノンストップで進む事が可能。


 王都を目指した初日、晩御飯として、神楽が作ってくれたローストオークのサンドイッチを食べる。

 取り敢えず、飯盒で米も炊いておくが、コレは明日の朝用だ。

 神威に狙われるが、炊き上がったのを確認した後、すぐにインベントリに収納する事で事なきを得る。


 そして次の日、朝は炊き立て御飯にベーコンエッグ、リコッタチーズを使用したサラダ。

 ただ、アイナ達には御飯の知識がないようで、食べるのに苦労している。

 ふむ、これなら晩御飯は別のメニューにするか。

 そして晩御飯だが、取り出したのはフライパン。

 残っていた御飯をオニギリにして、表面に味噌ベースのタレを塗りながら焼く。

 本当は金網が欲しいが、流石に持ってきていなかったので、フライパンで代用した。

 そして、おかずに自家製ソーセージを焼き、塩胡椒で味付け。

 焼きオニギリはアイナに好評だった。

 そして、焼き上がって次の分を焼いている間に、神威に二つ奪われた。



 そうして王都に到着した時、気が付いた事があった。

 朝晩の飯の準備、全部俺になっていた。

 多分、アイナ達も準備してただろうに、無駄にさせてしまった。

 それをアイナに聞いたら、神威が用意しなくても良いと言っていたらしく、飲水用の水くらいしか用意してなかったと言う。

 もし、これで俺が準備をしてなかったら、神威はどうするつもりだったのだろうか……

 後で聞いたら、普通に神威は食材を持っていた。

 でも、作るのは俺だと言う。

 まぁ……良いか……




 そして炎尚と神楽は、屋敷の掃除と畑作業をした後、自分達の夕食を済ませて就寝する。

 ただし、その日は少々違い、完全に日が落ち、当たりが静かになった真夜中、屋敷に近付いてくる影があった。


「あの化け物染みた奴とガキはいない上に、いるのはジジイと女だけだ、楽勝だな」


「一応、金目の物以外は無視しろ、ジジイは殺しても良いが、女は売れるからな、傷付けるなよ」


 覆面をした男達が屋敷の裏口に集まり、一人が鍵穴を調べる。


「……よし、コレならイケる」


 そう言って工具を取り出して、ピッキングを始める。

 数秒後、鍵が音も無く開錠された。


「流石元盗賊(シーフ)


「ケッ元は余計だ」


 男がそう言いながら工具を懐にしまう。

 そもそも、盗賊(シーフ)には厳しい掟が存在する。

 この王国では、影の組織として、盗賊ギルドが存在しており、王国で活動している犯罪者達を影から始末したり、必要な情報を集めている為、存在は黙認されている。

 そして、盗賊である事を隠し、冒険者として活動して情報を集めるようなメンバーもいる。

 故に、犯罪者と結託したり、その技術を悪用しないよう厳しい掟が定められており、盗賊ギルドに所属する際に誓約書を書かされる。

 その掟を破った場合、その盗賊は二度と仕事が出来ない様に両手の指か腱を切断されてしまうという。


「……二人は地下を見て来い、俺とお前は上、残りは一階を調べろ」


 指示を出し、男達がそれぞれの場所に向かおうと静かに歩き出す。

 そして、階段まで到着した所で足を止めた。


「こんな夜更けに何用ですかな?」


 手を後ろで組んだ炎尚が階段に立っていた。

 いつもの執事服を着て、男達を見下ろしている。


「チッ……殺せ」


 その言葉で男達が腰からナイフやショートソードを引き抜く。 

 対して炎尚は武器を所持していない様に見える。

 男達が左右からジリジリと距離を詰めて行く。


「……舐めるな小僧共」


 炎尚の声が低く響く。

 瞬間、その場にいた男達の背筋が凍り付いた。

 そして、炎尚の両手が振り抜かれると、左右にいた男達の肩に深々と細長い棒のような物が突き刺さっていた。


『ギャァァァッ!?』


 これは棒手裏剣と呼ばれる物で、形状は鉛筆の様な棒状の手裏剣である。

 携帯に優れる反面、一撃の威力は低いが、こういう場面では十分役に立つ。

 そして、その隙に炎尚が階段を飛び降り、唖然としていた男の一人に接近すると、腰に付けていた小型のポーチから若干短い刀を二振り取り出す。

 これは小太刀とも呼ばれる刀であり、炎尚はこの小太刀を二振り使用する二刀流を主体に戦っている。

 それを綺麗に抜き放ち、男達を峰打ちで昏倒させていく。

 もっとも、コレは賊を捕縛する為では無く、折角の屋敷を血糊で汚したくない為にやっているだけである。


「こ、こんなのやってられるかっ」


 男の一人が裏口から逃げようと駆け出す。

 しかし、裏口から外に出た瞬間、何かが男の顔面スレスレを通過し、地面に突き刺さる。

 それは黒塗りの槍。

 男がその場にへたり込むと、その槍の石突の部分にフワリと神楽が降り立つ。

 ただし、その姿はいつものメイド服では無く、髪をアップに纏め、紫色のスーツに所々に鎧の用なパーツが取り付けられており、額に鉢金、口元も紫色のマスクで隠している。

 神楽の設定はアサシンであり、その装具には全て隠蔽(ステルス)のスキルが付いている。


「我等が侵入者を逃がすと思ったのか?」


 静かに冷たく神楽が言い放ち、黒塗りの槍から降りると、短い短刀を抜く。

 それを見て、へたり込んだ男が慌てて背後にいた別の男の方に逃げて行く。

 しかし、屋敷の中での戦闘もほぼ終わり、現在はリーダー格だった男と炎尚が向かい合っている。

 今、無事なのはリーダー格の男と、元盗賊の男、そしてその男の元に逃げてきた男の3人のみである。


「ここは化け物屋敷かよ……」


 呟いた元盗賊の男が、自身の得意武器である二本の大振りのナイフを抜いて両方逆手に構えた。

 もしここで逃げられなければ、掟を破った事が露見し、二度とマトモな生活は送れなくなる。

 今は、この場を何とか切り抜ける事を最優先に考える。

 その為には、足元の男も利用する。


「相手は所詮一人だ、二人掛かりでやるぞ」


「あ、あぁ、やってやらぁ!」


 男が奮い立つ様にショートソードを構える。

 しかし、この状況であっても神楽は静かに立ったままだ。


 そして、男達が同時に突っ込んでくる。

 ショートソードの男が一気に剣を突き出す。

 それを短刀で滑るように打ち上げ、そのまま顔面に肘鉄を打ち込む。

 その後ろにいた元盗賊の男は……


 そのまま逃走していた。


 そう、男を見捨てて攻撃せずに逃走を選んでいた。

 そして、元盗賊の男は自分の逃げ足に自信があったが、相手が悪かった。

 神楽が一気に距離を詰め、あっさりと男を追い抜く。


「チッ」


 舌打ちし、左右の手で持ったナイフで上下同時に攻撃する。

 見た限り、神楽の武器は槍と短刀のみ。

 そして、槍は未だに地面に突き刺さったままの為、武器は短刀一つ。

 ならば、同時に別方向から来る攻撃は回避するしかない。

 普通なら。


 神楽は右手に持った短刀で下から来るナイフの一撃を防ぎ、上から来るナイフを左腕の籠手に隠していた鍵爪で受け止める。

 当然、そんな風に防御されるとは思わなかった元盗賊の男の対応が数秒遅れる。

 その数秒があれば神楽には十分だった。

 振り上げた足が男の顎を打ち上げ、両手が開いた瞬間、全身のバネを活かした回し蹴りが元盗賊の腹部に直撃し、先程沈黙させた男の隣に吹っ飛ばした。

 男が動かなくなったのを確認して、短刀を鞘に戻し鍵爪を籠手の中に収納する。

 神楽の武具は見ただけでは短刀のみだが、これ以外にも全身に暗器が隠されている。

 もし、あの攻撃を回避して逃げられたとしても、別に屋敷の敷地以外であれば、お片付け(始末)すれば良い。

 そして、炎尚の方は別に援護する必要もない。


 スキルや魔法を合わせても、この場で一番強いのは炎尚なのだから。


 取り敢えず、神楽は自身が倒した二人を、ポーチから頑丈なロープを取り出して縛り上げ、いつものメイド服姿に戻ると衛兵を呼びに向かう。

 この時間でも衛兵はちゃんと詰所にいるので、説明すればこの賊達を連れて行ってくれるだろう。




GWという事で、休日は毎日更新する予定です

明日の12時にまたお会いしましょう~


面白いなーとか続きを読みたいなーと思ったら、ブックマーク・評価してくれると、作者がすごく嬉しくなります

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