第100話
祝100話到達
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領主邸の会議室。
対飛空艇対策として、領主様とクック以外に偉そうな騎士やら、気弱そうな兵士が集まっている。
ちな、俺と神楽はアドバイザーとして参加。
しかし、飛空艇を相手にするにはこの面子では無理がある。
「まず、魔術師部隊により波状攻撃の後、高度を落とした所で強化バリスタを使用し轟沈! これ以外に方法は無いと思われます!」
無駄に偉そうな騎士が一際デカイ声で、考えたであろう作戦を報告する。
ワイバーンとか空飛ぶモンスター相手なら、今提案された作戦でも問題は無い。
だが、相手は所属不明の飛空艇。
「……無理だな……」
「何だと?」
おっと、呟きが聞こえてしまったようだ。
だが、コレは言わなければ無駄に被害が増える。
「アレだけ目立つ相手が何の対策もしてない訳が無いのが一つ。 そもそもだ」
そこまで言ってから、姿勢を正してと。
コレから説明するのが一番の懸念事項だからな。
「飛空艇一隻で来る訳ないだろ。 多分、中に兵士がギッシリ詰まってる」
神楽が言っていた『嫌な気配』は、大きいのが一つ、そして小さいのが大量。
恐らく、あの飛空艇の中にいる兵士が何か持っているのだろう。
それを考えると、一筋縄ではいかない。
「それにだ、あの高さまで魔術が届いたとしても、相当減衰して碌にダメージは無いし、強化バリスタでも届かんだろ」
「この……たかが冒険者風情が……」
「では、王牙殿は何か考えがあるのかね?」
領主様に聞かれ、少し考える。
まず、防衛は神楽による大結界を使用すれば問題無い。
飛空艇内部にいるであろう兵士に関しては、俺と炎尚、神威の3人で対応出来るが、遠距離から狙撃としてジーナ達を外壁の上に配置すれば間違いないだろう。
その為の銃は支給する予定だが、問題があるとすれば事後のゴタゴタ……これは仕方無いと割り切る。
「まず、飛空艇以外はどうにかなる」
「フンッ肝心な方の対策も無いのではないか!」
そう、一番の問題が飛空艇だ。
そもそも、人は飛べないんだから仕方無い。
零式の大推力で飛べば良いじゃないか、と思われるだろうが、ぶっちゃけると零式は飛べない。
巨剣を手放しても、零式は重過ぎるのだ。
「空が飛べりゃ良いんだがな……現状、無理だ」
「お前さんでも無理か?」
「……一応、手が無い訳じゃ無いんだがな……」
クックに聞かれたので正直に答えておく。
現在、うちの屋敷にある工房にその手段があるのだが、とある事情により完全起動が出来ない。
「手はあるのか?」
領主様も乗り気の様だが、唯一にして最大の問題を聞けば無理だと判るだろう。
「……動かす為の魔石が足りん」
「どのくらい必要なのだ?」
「計算上、最低でも龍クラスが必要になる」
その言葉で領主様とクックの表情が曇る。
龍クラスの魔石となると、早々手に入らない。
手に入ったとしても、都市機能を維持する為に使用されたり、王都で研究に使用されたり、個人で自由にする事はほぼ不可能なのだ。
「確かにそれでは不可能じゃな」
「……少し前、王牙殿の御子嬢が逆さ迷宮で手に入れたのでは?」
領主様の言う通り、神威がブラックドラゴンゾンビの魔石を手に入れている。
だが、アレは神威の所有物であって、俺のじゃない。
その事を領主様に説明すると、顎に手を当てて考え込んでいる。
「もし、飛空艇を放置した場合、どんな被害を受ける可能性があるんじゃ?」
「性能がはっきりしてないから、推測になるが……」
クックの疑問に、尖塔から見た限りでの推測を伝える。
まず、内部にいる戦闘員の数は少なくとも200人程度だが、どういった装備をしているかは不明。
飛空艇自体の戦闘力は正直言って不明だが、魔法袋に瓦礫を詰めてサガナの上空からばら撒くだけでも、凶悪な攻撃性能になる。
これに大砲なんぞ積んでいたら、一方的に攻撃され続けて壊滅する。
「何より、魔法袋に食料を大量に詰めておけば、いつまでも上空に居座られる」
そういった攻撃に耐え続け、食料が尽きれば撤退はするだろうが、それまでにサガナが受けるダメージは計り知れない。
そして、コレは言うつもりはないが、問題点はそれだけではない。
最大の問題点が、敵との技術力の差だ。
飛空艇すら製造可能な相手であるならば、歩兵が持つ装備もそれに準ずる装備になっている筈だ。
下手をすれば、人工的に魔剣を製造している可能性もある。
もし、魔剣装備の兵士が200人もいたら、サガナの防衛力ではどうにもならない。
それ以外にも、魔弓を作っていれば飛空艇から一方的に攻撃出来る。
「ふぅむ……確かにそれは厄介じゃの」
「想像でしかないが、舐めて掛かると痛い目を見るだろうな」
「とにかく、我々は防衛の作戦準備を始めますので!」
偉そうにしていた騎士は、そう言って部屋から出て行ってしまった。
準備ってどうする気だ?
その後、領主邸から屋敷に帰る。
碌な対策が出来ぬまま、飛空艇を迎え撃つ事になるが、あの騎士達で大丈夫なんだろうか……
「旦那様、如何致しましょうか?」
神楽に聞かれるが、現状打つ手が無い。
逆さ迷宮をブラックドラゴンゾンビが出るまで、延々高速周回するという方法もある。
だが、どの程度で出現するかも不明だし、もしかしたら初回攻略限定かもしれないのだ。
そうなれば、完全な無駄足だ。
椅子に腰掛けて唸っていると、神威とマドゥーラが部屋にやって来た。
飛空艇の事は領主様側から口止めされて、喋る事が出来ないが、少々悩んでいる事があるとだけ言っておいた。
まぁ二人なら大丈夫だろうが念の為だ。
「悩みって、工房にあるアレ?」
「まぁ、アレ関連だな」
「確か、魔石あれば動かせるんだよね?」
「……そこが問題でなぁ……」
そう、魔石があれば一気に解決するのだ。
だが、娘に『魔石をくれ』とは言えない。
正攻法で入手するには、時間が圧倒的に足りない。
「んじゃ、はいコレ」
そう言いながら神威が差し出してきたのは、赤黒い魔石。
言わずもがな、ブラックドラゴンゾンビの魔石である。
「それはお前のだろう?」
「うん、だから一個貸しね?」
工房にあるアレに使用すれば、絶対に返ってくる事は無いのを判った上での判断なのだろう。
我が娘とはいえ、何と豪快な……
しかし、これで備える事が出来る。
「よし、神楽、屋敷の全員を集めてくれ」
俺の命令で、神楽は一礼して部屋を出て行く。
このままだと、騎士連中は恐らく壊滅的被害を受けるだろう。
あの偉そうにふんぞり返っていた騎士はどうでも良いが、他の騎士達に罪は無いのだから、助けてやりたい。
そうして炎尚を先頭に、ジーナ達も部屋にやって来た。
これから話す内容と行動について、厳重に口外しない事を命令し、速やかに行動を開始する事を告げた。
さぁ、盛大に行こうじゃないか。
遂に100話到達しました!
でも、まだ続くんじゃよ
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