表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/105

プロローグ

初投稿作品となります。

宜しければ、最後まで御付き合い下さいませーorz




 フルダイブ型VRゲーム。


 巨大な演算ユニットをマザーシステムに据えて稼働した超大型コンテンツ。

 稼働当初、様々な所から苦情やら批判やらが続き、社会的バッシングの的にされたが、運営会社は『やりたくないならやらなければ良い』との発表。

 その苦情や批判も物ともせずに、年々利用者は増えて大ブームとなった。

 そうすると、今まで批判していたメディアは掌を返したように擁護派に回った。


 そんな中で登場したのが、『ジオ・イルムディア・キングダム・オンライン』と言うオンラインゲームだ。

 ジオ社が直営する『ジオ・アミューズメント・パーク』でのみ稼働している専用筐体を利用して遊ぶ事が出来るフルダイブ型VRゲーム。

 瞬く間に世界中に普及し、社会現象となるほどの人気を博した。


 それだけ人気が出たのにはある理由があった。


 まず、このゲームを遊ぶ為に成人している事、VR適性がある事、そして廃人対策として、連続接続時間が基本3時間、ただし専用のパックを購入する事で9時間まで延長可能。

 それを無視して接続し続けると警告が現れ、制限時間に到達した瞬間、どんな状況であろうと強制ログアウトとなる。

 再ログインするには2時間の休憩時間が必要であり、もし、警告文を無視して強制ログアウトになると、休憩時間が6時間に延長される。

 そして、悪質なプレイヤーはジオ社からの調査が入り、場合によっては警察等の騒ぎになる。

 過去、悪質なストーカー被害が出た事があり、その際は実際に警察による逮捕事件があった。

 他にも、完全自動翻訳機能があり、日本語・英語・フランス語・ドイツ語は当然と多種に渡り、違う地域の言葉でも瞬間翻訳して会話が出来る。


 ゲームとしてはありきたりなファンタジーを中心にした、フリースタイルゲームであり、ユーザーが自由に好きな事をやる事が出来る。

 それこそ、戦闘職から生産職、アイドルプロデュース等、完全に自由だ。


 稼働してから10年間、ほぼゲーム人気実績1位の地位を不動の物にしている超人気ゲームだ。







【ミシル:そんじゃ、確かに渡したで~】


【イグル:そういや、王牙は今回の超大型アプデの話聞いた?】


【王牙:あぁ、あの『創世の門と失われし大陸』ってヤツだろ?】


【ミシル:ウチ、今回もテストプレイヤーにはなれんかった~】


 そう言って悔しそうに机を叩くのは小柄なドワーフ少女。

 その隣では、金髪エルフの女性が木のコップに注がれていたエールを飲みながら肩を叩いていた。


【イグル:まぁ抽選内容が上位100名中のランダム50名だからね】


【王牙:そういうイグルは、前のアプデのテスターになったんだろ?】


 そう言うのは、その向かいに座って同じようにエールを飲んでいた黒髪の男。

 3人がいるのは『原初の塔』と呼ばれる最高位ダンジョンの麓にある街。


【イグル:正直、テスターになっても、実装されると仕様が変わってたりしてあんまり参考にはならないんだよね】


【王牙:『原初の塔』だと何が違ったんだ?】


【イグル:敵の強さが少し強くなってるのと、何より階層が増えてたね。あと罠も】


【ミシル:でも選ばれたんだから、まだええやん~ウチも遊びた~ぃ】


 ドワーフ少女のミシルがそう言うが、完全に運なので、コレばかりは仕方ない。


【王牙:まぁそう落ち込む事は無いだろ、折角塔を踏破して、激レアアイテム手に入れたんだしさ】


 王牙がそう言うが、ミシルは不服そうにしている。


【ミシル:確かに欲しかった『鎖錠天狼斧(サジョウテンロウフ)』は手に入ったんだけどさぁ……】


【イグル:王牙、テスターをやった事が無い人は大抵、こういう感じでやりたがるモノなのよ】


【王牙:そんなモンかね…】


 そう呟いた王牙の視界の上に、『接続時間が8時間を超えました。あと1時間で強制ログアウトになります』と言う、警告文が現れる。


【王牙:そろそろタイムアップみたいなんでな、悪いが俺はコレで失礼するよ】


【ミシル:ほな、またな~】


【イグル:また後でね】


 王牙が自分の代金としてインベントリから銀貨を取り出して机に置く。

 そして二人に見送られながら、光の粒子となってその場から消えた。







『お疲れ様でした、次回ログイン可能時間は2時間後となります。詳しい時間は御手元のPDAを御確認下さい』


 耳元で女性の合成音声が聞こえる。

 ここは、日本、東京のジオアミューズメントパーク『銀座店』にあるVRルームの中。

 ヘルメット型ヘッドギアを外して、一息吐く。


 アバター名『王牙』、本名峨哉旺光(ガザイオウミツ)

 今年で42歳になるオッサンだ。

 そのオッサンが何故、VRゲームで遊び呆けているのか?


 12年前まで、とある企業に勤めていたが、仕事中に大量吐血。

 病院に担ぎ込まれ、治療を受ける事になるがそのまま懲戒免職(クビ)


 その後、1年かけて回復はしたのだが、その原因が会社での超多忙な仕事量にあった。

 サービス残業は当たり前、休日出勤を繰り返し、自宅に帰った事は入社当時から数えても 恐らく1年分も無い。

 そんな生活を続けていれば若い時はともかく、老いて行けば身体が付いて行けるはずもない。


 結果、大量吐血。


 だが、それを受けて行政が調査に入り、凄まじいまでの悪質な経営が発覚。

 過去、そう言った事が原因でやめて行った元社員達に慰謝料が払われることになった。


 当然、俺にも慰謝料が払われたのだが、額が凄い事になっていた。

 他にも退職金が払われ、軽く計算したのだが、数年は楽に暮らせる額だった。

 

 のだが、当時、自暴自棄に近い状態だった為、自棄になって株に全額ぶっこんだ。

 完全に捨て値、大負け確定の企業の株。

 首でも吊って人生終わらせるかと思っていた。



 その半年後、その企業が偶然に癌細胞の特効薬を発明。

 株価が一気に上がり、元値の数千倍になった。


 それを知った夜、笑いが止まらなかった。



 それからは友人に誘われて『ジオ・イルムディア・キングダム・オンライン』にのめり込んでいる。

 月額数千円、専用パックを追加購入する事で、接続時間を延長したり、ゲーム世界の各地に存在する神殿への転移陣を無料で利用可能になったりする。

 そんな世界で9年活動した。

 当初はとにかく、我武者羅に戦い、ログアウト中に色々と調べた。

 自分に合った戦闘方法やスキル構成等、考えているうちに楽しくなっていった。


 途中、上位プレイヤーに師事し、腕を上げた結果、6年目で全世界ユーザー600万人の中でも上位ランカーと呼ばれる100位内にランクインした。

 そして更に3年掛け、42位まで浮上した。


 ミシルやイグルは上位ランカーにいるフレンドの一部だ。


 昔、彼女達も所属するチームに誘われた事があったが、一人で動くのが性に合っていたので辞退したが、今でも交流は続いている。



 ヘッドギアを受付に返し、センター内にあるシャワー室でさっぱりすると、そのまま仮眠室に入る。

 PDAのタイマー機能を使って4時間後に目を覚ますようにセットし、すぐにベッドに横になった。



 4時間後、PDAのアラームで目を覚ます。

 背を伸ばし、飲食コーナーでコーヒーと軽食を食べている最中に、机に置いていたPDAがメールを受信する。

 内容を確認すると、ジオ社からのメールであり、今回の超大型アップデートのテスターに選ばれたと言う事と、専用テストサーバーに接続する為のコードが添付されていた。



 受付でログインを告げて、PDAのメールを見せて専用テストサーバーに接続させてもらう。


「それでは、行ってらっしゃいませ」


 受付嬢からヘッドギアと新しいVRスーツを受け取り、VRルームに入ってVRスーツを着てから中央のベッドに横になると、ヘッドギアを装着する。


『それではゲームを起動します。カウント、5…4…3…2…1…』


 合成音声のカウントダウンを聞きながら目を瞑る。


 確か、『創世の門と失われし大陸』の概要説明だと、『失われたハズの大陸に通じるゲートが見付かり、その大陸をユーザー達が調査、報告をする事で現大陸に新たな技術や資源を手に入れる事が出来るようになる』という事だったかな…

 そんな事を思いながらカウントダウンが0になった瞬間意識が暗転する。

 再び目を開けるとそこは何もない黒い空間。

 そして、その目の前に接続サーバー先の選択をする為の黒い板が浮いていた。

 サーバーは複数あり、第一から第百サーバーまでが常に稼働している。

 たまに、期間限定のお祭りサーバーと言う取得経験値1万倍とか、レアドロップ率500%アップ状態という規格外なサーバーが運営から解放されたりする。

 今回はそれ等とは違い、一番下にサーバーが追加されて選択できるようになっていた。


『テストサーバー』


 このサーバーに接続する事で、他のユーザーより先に大型コンテンツを楽しむ事が出来る。

 ただし、ぶっちゃけて言えば、ただのバグ取り用のデバッカー要員みたいなモノであり、もしバグを見付けたら専用フォーラムから運営に報告する義務がある。



[・・・・・・テストサーバーに接続します・・・・・・・・・]



 瞬間、目の前に光の粒子が集まって床に丸い円陣が出来上がる。

 この円陣に入る事で初めてゲームにログインする事が出来る。


 いつもの事だ。


 そう考えて円陣に入る。


 だが、今回はいつもと違った。

 円陣を通り抜ける際に、凄まじいまでの耳鳴りと猛烈な頭痛が起きる。


 通常、肉体的に異常が感知されると、システム側から生命保護を理由に強制ログアウトが実行され、同時に救急センターに連絡も同時に行われる。 


 この移動空間では声を出す事が出来ない為、あまりの痛みを受けても叫ぶ事が出来ない。


 そのあまりの痛みで直ぐに意識を手放した。








 目が覚めた時、そこは見知らぬ天井。

 周囲を確認するが、どこかの部屋の中だと言う事くらいしかわからない。

 ログイン時のあの耳鳴りと頭痛は既に無い。

 そして、何か、こう違和感だけが残っている。


「ステータスウィンドウ」


 そう呟くと、目の前に薄い青色の板が現れる。

 そこには現在の状態や装備等が表示されている。


 見た限りでは、いつものステータスとなんら変わりが無い。

 装備も、いつも遊んでいる装備のままだ。

 メニューの項目をスライドしていくと、現在地の部分に目が留まった。


[現在地:イムルディア-エンガイア大陸-サガナ街]


 『G.I.K.O』の世界に、そんな惑星や地方は存在しない。

 だが、もしかしたら、今回のアップデートの際に増える場所の名前かもしれない。

 そう考えていると、視界の脇に映っているレーダーが青い点が此方に向かってきているのを確認した。


「ぁ、無事だったんですね。よかったぁ」


 部屋に入ってきた少女が此方を見てそう呟く。

 その手には水の入った桶を持っていた。


「俺は…ここは…?」


「この近くの森で倒れてたんだよ。見付けた時は死んじゃってるのかと思ったよ~」


 少女が桶を机に置いてそう言う。


 つまり、俺は意識を失った状態で森に倒れていたのを、偶然この少女が見付けて助けてくれたようだ。


 ……今回のストーリークエストはそう言うスタートになるのか……


 門を通過する際に意識を失い、気を失っている所を誰かに介抱される。



 ゲームではメインとなるストーリーが一応存在し、ユーザーはそれをクリアしつつ、ゲームを楽しむ事が出来る。

 ただし、ほとんどのユーザーはサブコンテンツくらいの扱いしかしていないらしいが……


「お兄さんの名前は?私はエミリっていうの」


「俺は…王牙」


「王牙さんね、うん、わかった」


 エミリが笑みを浮かべる。

 色々質問されるが、いくつかははぐらかして答える。

 出身地は日本と言ったが、エミリには何処なのかわかっていないようだ。


 その後、エミリは畑仕事があると言う事で退室。

 そして、ここまでエミリと話した事で、いくつかの疑問点が出て来た。


 まず、ゲームに登場するNPCは、少なからず地球にある地名に関して、伝承や噂話として認識している。

 日本であれば、『遥か遠い場所にある島国』という感じだ。

 他にも、ユーザーの事は『使徒』とか『超越者』という認識を持っている。


 だが、あの少女エミリは日本の事もユーザーの事も、何も知らないようだった。

 何かがおかしい。


 アップデートでそう言う仕様になるのかもしれないが、ここまで変更されるのだろうか。

 これでは色々と運営に文句が行くと思うのだが……


 後でサポートに変更した方が良いと報告しておこう。




面白いなーとか続きを読みたいなーと思ったら、ブックマーク・評価してくれると、作者がすごく嬉しくなります

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ