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9 夜会

約二か月ぶりです

そしてまだ続くタイトル詐欺・・・・

本当にすみません



 と、いつまでも話し込んでいるわけにもいかず。

 私たちは倒した熊の後処理をして先へ進む。


 ちなみにシルバーベアの肉は少しだが拝借させてもらった。

 これは「熊肉が食べてみたい」というユリの要望によるものだ。

 魔物だから前の世界の熊とは違うと思うけど・・・・、その辺はどうでもいいらしい。相変わらずそういう執着があるんだかないんだか・・・・。

 とにかく今日の夕食は熊鍋になりそうだ。鳴鹿も特に異論はないみたい。



 ・・・・・奥地へ進む影響か、昨日は全く遭遇しなかった魔物と何度か戦う。

 歩く樹木(トレント)バカでかい芋虫(ビッグキャタピラー)とか、ファンタジー感満載の生き物たちと次々エンカウントする。

 さっきの熊も、大きさや色が現実離れしていると言えばそうだが。造形的には普通の熊と変わらない。

 それが確実にあり得ないものが目の前に現れると、ここは本当に異世界なんだなぁと改めて実感する。


 隊列は先と変わらず、鳴鹿が前衛。私、中衛。ユリが後衛という形だ。

 すでにバレてしまっているので、私も存分に力を使っていた。


 しょっぱなから周りの木を飛び回り、上方からピックの『投擲』で牽制。

 敵がこちらを無視して鳴鹿やユリに狙いを移したら、降りて『格闘』などでヘイトをためる。


 これがパーティでの私の戦術となっていた。


「なあ。質問してもいいか?」


 森を進みつつ定期的に休憩していると、鳴鹿が質問してきた。


「なんですか?」

「さっきからびょんびょん飛び回っているのは何かの『スキル』なのか?」


 ああ、これか。

 そんなに大したものじゃない。





 スキル『立体歩行』。

 効果としては重力を無視して、壁や天井なんかを歩くことができる。



 スキルは使うほどにレベルが上がり、カンストのLv10になると上位のスキルが解放される。(定番といえば定番な設定だ)

 先日、『直立』のスキルが進化して手に入れたスキルである。


 『投擲』や『格闘』などの戦闘系のスキルは訓練などで絶えず使っているのになかなかレベルが上がらないのに。

 こういう非戦闘系、それも効果が微妙なものはレベルアップに必要な経験値が少ないようだ。


「聞いたことないな」

「でしょうねぇ。これも使う人が限定される捨てスキルみたいですし」

「今の動きを見れば、使いたい奴はいそうなもんだが・・・・」


 ・・・・それは私だからできることで、ほかの人にはあんまりマネはできないと思う。




 『立体歩行』はあくまで重力を無視して歩くだけ。


 自分の身体能力が上がるわけでもないから、それ以上の機動はできないし。

 歩行という名の通り、発動条件は足の裏がどこかの足場についていなければいけない。


 足裏に強力な吸盤ができているようなものだと表現すれば、分かりやすいだろうか?


 つまり足場から離れた瞬間に重力の影響を受けて落ちる。



 だからちょっとした工夫をしている。


 スキル『重量操作』。『立体歩行』と同時に使用しているもう一つのスキル。

 効果は・・・名称のまんま、物の重量を変化させることができる。


 最初は『重化』という物を重くするだけのスキルだったが、私が普段から自分の身体や着ている服を重くするという某Z戦士のような使い方をしていたらあっという間にレベルがカンストした。


 これを使い自分の体重と、装備の重量を軽くし跳躍力を高めているのだ。

 月面では数メートル余裕でジャンプできるのと理屈は同じ。


 この2つのスキルを使い、樹木の間を飛び回っていた訳だ。

 どちらか単体では同じことはできない。


 その説明を聞いた鳴鹿は、目を丸くしていたが。


「ま、ブスと捨てスキルも使いようってね」


 と、おどけてみると少し笑ってくれた。


 フレイムさんの言った通り、外れスキルだけでも・・・・やり方次第でどうとでもなる。



 * * *



 空が赤らんできたところで、今日も野営を始める。

 テントを立て、焚火の準備をすれば夕食の時間だ。

 予定通り、メニューはシルバーベアの熊鍋である。・・・初めて食べた熊肉はなんだか固く、ちょっと臭みがあった。


「う・・・ん。微妙だな」

「ですね。猪みたいにはいかないか・・・」

「猪肉食ったことあんの?」

「ええ、まあ」


 以前、この世界に来る前に今回のようにユリが「猪肉を食べてみたい」と言い出したことがあり。

 ネットで取り寄せて、牡丹鍋を二人で食べたことがあった。


 あの時は適切な調理法を調べられたし。調味料も豊富にあったが・・・・。


 さすがに野営ではこれが限界だ。

 この肉も調理次第で化けるポテンシャルがありそうで、私としても「おしい」展開である。


「でも、十分おいしいよ。ありがとアゲハちゃんっ」

「おう、嬉しいこと言ってくれるなー」


 くしゃくしゃとユリの頭をなで、皿に肉を追加してやる。

 それだけで花のように破顔してくれる。

 本当にこいつはご馳走し甲斐のある女である。料理をする側としてはこうして素直に喜びを表現してくれるのはうれしいことだ。



 と、(比較的)和気あいあいとした雰囲気もここまでだ。

 夕食が終わり、私たちは今日の反省会を始めた。


 3人とも隊列することは初めてだし、ある程度の失敗は仕方がない。

 大した被害もないため特に挙げる点はないのだが・・・・。


 一つだけ。

 解決しておかなければならない問題がある。

 私は真っ先に口を開く。


「ユリ。お前なんで魔法で攻撃しなかった?」

「え・・・・あ、それは」

「攻撃するタイミングはいくらでもあったはずだぞ。何してたんだ」

「ごめんなんさい、私・・・・」

「苦手なのはわかるけど、いつまでもそんな言葉は通じないんだぞ」


 ユリは他人を攻撃することが苦手だった。

 これは私のように技術的に苦手という意味でなく、他人を加害することに忌避感を持っているということだ。


 訓練でも的や案山子には攻撃魔法を打つことはできても、模擬戦で対人に使うことはできていなかった。

 それどころか、模擬戦自体を避けていた。


 攻撃ができなくても補助魔法もユリは十分に扱うことができたし。

 私という無能がいたため、比較され問題視されていなかったが・・・。

 問題をそのままにしていいわけはない。


「あのな、いつまでも私らと戦えるわけじゃない。自分一人でなんとかしなきゃいけない時が来るんだ。わかってんのか?」

「・・・・わかってるよ」


 「分かってるか」と注意されて「分かってる」と答える奴は十中八九わかってないと相場で決まってるもんだが。

 今はそんなこと指摘する場面じゃない。


「ユリ。お前が暴力とかそういうのが苦手だっていうの私は知ってる。けど、理解はしてやれない。お前がどれだけ苦しいのかも他人の私じゃあわかってやれない」


 精神的な問題はデリケートだ。

 人のトラウマや恐怖症は端から見ると、理解できないものがほとんどだが。本人からすれば時に命に係わるほど重大な問題なのだ。


「だから安易に直せとも、今すぐにやれとも言わない。だけど、いつかその時が来るってことだけ・・・・心構えだけしておいて。わかった?」

「・・・・・うん」


 よし。

 「わかった」って簡単に返答しないだけ、真剣に理解したということにしておこう。


「鳴鹿は、何か言うことありますか?」

「いや・・・・・お前が先に言ったから、いい」


 反省会はお開きとなった。


 その後は交代で見張りに立ち、昨日と同じ順に就寝する流れなのだが・・・。

 ユリは寝ることを拒むように、なかなかテントに入らない。

 また眠つけないことを心配しているのだろうか。


 だが、さすがに昨日と同じ轍を踏むわけにはいかない・・・・。


「あー、あ、あー・・・」

「!」

「?」


 いきなり何やら声を発した私にふたりはけげんな顔を向けてくる。


「あのさ、今日ユリの隣で寝ていい?」

「となり・・・?」

「寄りかかってる感じでいいからさ」

「いいけど・・・」


 ユリが眉を顰める。


「いやー・・・私たち最近一緒のベットで寝てたじゃん」

「・・・・」

「うん」

「だから恥ずかしい話、なんだか隣にユリがいないと安心して寝付けなくてさ」


 もちろん嘘だ。

 今朝はばっちり快眠だったし。


「だから寝るときは・・・というかなるべくユリの隣に居たいんだけど。いいかな?」

「う、うんっ。いいよ」

「そっかー、ありがと」

「じゃ、じゃあ。私もアゲハちゃんの隣で寝るね」

「おーそりゃありがたいな」


 ユリはいそいそと毛布を用意すると、それに包まりミノムシのような状態になった。

 そのまま私の隣へ腰かけると、寄りかかってあっという間に眠ってしまった。


「過保護」


 しばらくユリの寝息だけが響く空間に、別の声が投げられる。

 言うまでもなく鳴鹿である。


「えーっと・・・・」

「過保護」


 二度言われた・・・・。


「何が言いたいんですか?」

「ああ、別に責めてるわけじゃないぞ。ただ、珍しいなと思っただけだ」

「珍しい・・・?」

「アンタらの関係が、だよ」


 ?

 なんだが要領得ない。


「見る限り、普通の友人のようには見えないし・・・・幼馴染という枠にも収まっているとも思えない」


 鳴鹿は焚火を挟んだ向かい側から、私たちを交互に観察する。


「なんか、そういう感じじゃないんだよなアンタたちって。なんていうか・・・・子供と母親?」

「えぇ・・・」

「何度も言うが。アンタ、そいつに超絶過保護じゃねえか」


 鳴鹿は私にもたれかかったユリを顎で示す。


 過保護、かなあ?

 たしかに心配はしているが・・・。




「もしかして・・・・・・つ、付き合ってるの?」

「ぶっ」


 鳴鹿は言いにくそうな空気を発しながら、とんでもないことをのたまった。


「えーっと・・・・なんでそんな推論に至ったのか理由を聞きたいところなんだが」

「一緒に寝てるって」

「あ」


 確かにそれは、聞きようによっては「そういう風に」とらえられるのかな?


「いやいやいや、違うぞ。寝てるというのは、何かしらのチョメチョメ的な行為の比喩表現ではなく。事実、sleepという意味の睡眠で。私たちがそう、なんというか・・・・・エス、イー、エックス的な営みを毎晩行っているわけではなくてですね・・・・」

「だれも、そんなことまで言っとらんわ。同じベットで寝るくらいだから深い関係なのかと思っただけだ」


 あ、そっすか。

 自意識過剰みたいでなんか恥ずかしい。


「まず、はっきりと否定しておく。・・・・違う」

「そっか」


 話をもどそう。



「夕食の時真っ先にそいつを注意したのは、私にきつい言葉で注意させないためだろ?」

「・・・・」

「別に肯定したって、怒らねーよ。口調がきついのは自覚してる」


 じゃあ直せ、と言いたくなったが。

 話の腰を折るだけなので黙る。


「昨日下野がけつまずいた時もおぶっていくなんて言い出すのかと思ったが。休憩をはさみながらもちゃんと自分の足で歩かせたしな・・・・」

「そりゃそうでしょ。これは訓練なんですから、あいつが自分でやらなきゃいけないことを私がやったらユリのためにならない」

「・・・・・過保護なうえ、対象のことを思った厳しさも持ってる。そういうとこが母親っぽいんだよな・・・・というかオカンか?」

「オカ・・・?!」


 それは何というか、女子高生(正確にはもう違うが)の私からすれば不名誉な感じなんですけど。


「それ以外にもアンタ、下野がアタシとのサシじゃ気を病むと思って。なにかと間を取り持とうと気ぃ使ってただろ」



 この見張りの順番も、それを考えてのことだと。鳴鹿は言う。

 まずは私と鳴鹿の二人で、なんとか雰囲気を和ませ。

 次に和やかだった雰囲気をユリに伝え、鳴鹿に対する苦手意識を薄める。

 そして私が寝た後も居心地の悪くない状況を作ろうとしていた・・・・。


「家に来た娘の知り合いを手厚くもてなす母親かよ」


 と、私が想定していたことをズバリ言い当てられ。割と驚く。

 こいつ、想像以上に観察眼が鋭い。

 まさかここまで分かっていたなんて・・・・。


 って。



「いや、分かってたならフレンドリーにしてくださいよっ!」

「仲良くするかなんて、人に決められることじゃないだろ」

「それっぽいこと言ってんじゃねーよ」


 いや、そもそもこいつと和やかな雰囲気になるって第一段階に失敗した私の落ち度といえばそうなんだが・・・・。


「悪かったよ。アタシも、こういうのは慣れてない・・・・というか、はっきり言えば苦手なんだ」

「苦手?」

「人と会話すんのが」


 ああ、それは・・・・。


「今納得。って思ったろ」

「イエイエ、ソンナコトナイッスヨー」

「だから、別に怒らねえって。自覚はしてる」


 しかし、正直に言ってしまえば納得というか。

 そうとしか言えないというか。


 思い返してみると、記憶の中に鳴鹿が誰かと朗らかに会話しているシーンなどはない。


 同じクラスとして、私も鳴鹿に事務的な言葉を投げたことはあったが(確か移動教室が変更になった、提出するプリントを鳴鹿だけが出してない、とかだったと思う)会話になることは一度もなかった。


 鳴鹿が「ああ」や「おう」なんてそっけなく返事をすればいい方で。

 大抵は睨んでいるような目くばせをするか、ガン無視がデフォルトの反応だった。


「悪かったと思ってるよ、自分でも。あの対応はなかったって思ってる・・・・」


 ばつが悪そうに頭をかく鳴鹿。

 その反応を見て、私は猛烈な違和感を覚えた。


 鳴鹿 ケイって・・・・こんな子だっけ?



 私の中にある彼女の印象は・・・・鋭い刃物のように尖ったものだ。

 同級生も、教師も、周りにいる者は全て敵とでも言わんばかりに周りを威嚇している彼女は。


 保護された野生動物、といった感じの人だった。


 だが、目の前にいるこの子は。

 いたずらがばれた子供のように居心地が悪そうにしているこの子は。

 恰好が少しアウトローで、ただ口下手な女の子という印象しか感じない。


「どうした?」

「あ・・・いえ。そういえば、鳴鹿とこんなに会話したの初めてだなあ、って」

「そうだな・・・・



 向こうじゃ、人と会話する余裕なんかなかったからなあ」



 それはともすればうわ言、独り言のような響きだったが。

 その一言で、おおよそを理解した。


 つまりは彼女にも、こっちの世界に残るだけの理由があった。・・・ということなんだろう。

 向こうの世界・・・・・もともとの世界から逃げ出す理由が。



「意外です。鳴鹿って、結構理性的っていうか。人徳があるんですね。てっきり狂犬のような人かと」

「・・・・・人を何だと」

「自覚はあるでしょ?」

「・・・・・確かに」


 そう言って、しばらく二人で笑った。


「アンタの方は、割と印象通りだったよ。話してみるとよくわかった」

「・・・・どういう印象だったんですか、私って?」

「うん、と・・・・・。話しやすそうなヤツ、かな。話したことなかったけど」


 なんだそりゃ。



 * * *




「ほら、ユリ起きて」

「う、んん・・・」


 時間が来た私はユリを起こす。

 寝ていたのは3時間といったところ、中途半端な時間で起こされたためか開いた瞳の焦点がなかなか定まらない。


「あ、おはよーアゲハちゃん」

「おはよ」


 やがて、にへへというようなふにゃけた笑みで挨拶をしてくる。


「アタシもいるんだけどね」

「んー・・・・・はっ」


 ケイの声に反応して、ようやく覚醒した様で。

 ユリは慌てて表情を整えた。

 普段同室で一緒に寝ているため私はこんな表情をよく見ているのだが、他人に見られるのはやはり恥ずかしいようだ。当たり前だが。


「じゃあ、私もひと眠りさせてもらうよ。おやすみ山岸、下野」

「あ、おやすみなさい」


 だが、特に気にした風もなく。

 鳴鹿はあっさりとした様子でテントへ入っていく。


 と、なんだかユリがジトっとした視線を向けてきている・・・。


「寝てる間に、何かあったの?」

「ん?特にこれといって。色々話してただけだよ」

「ふーん・・・・これといって何もないのに親しくなったの?」

「親しく・・・・・?」


 なんだろう。

 ユリの言葉端にとげが含まれているような。


「アゲハちゃんって誰かと仲良くなるのうまいよね」

「え、そう?」

「中学の時も友達多かったし・・・・」


 あーあれね。

 私に対する周りの反応は中学の時にもさほど変わらなかった。

 が、中三の時には悪口や悪意の視線にさらされることは減り。私も学校でそこそこ親しく話す相手が何人か出来ていたのだ。


 理由としては、ただ単に2年も経って周りが私の顔に慣れたか。

 それとも受験シーズンでみんな私なんかをかまっている余裕がなくなったのだろう。

 成績は良かったので私に勉強を教わりにくる奴なんかもいて、そこからそこそこ交友関係がひろまったのだが・・・・。

 あれたった10人そこらなのに、ユリにとっては多いのだろうか?


 そもそも、あれ友達ではないだろう。

 学校では話したりしてたが、外で遊んだことはなかったし。卒業した後何の音沙汰もない。


「私の友達はユリだけだよ」なんて言えばかっこいいかな?

 ・・・・いや、ほぼボッチ宣言してるだけだし。イケメンに限るから無理だ。


「・・・・もしかして妬いてる?ユリ」


 私の言葉にびくりと体を震わせる。

 分かりやす。


「ユリ~~~~~~~~っ!愛いやつだなお前はっ!」

「わっ!ちょっとアゲハちゃん?!」

「愛いやつ愛いやつ愛いやつ~~~~~~」


 私はガバっとユリに抱き着き、ぐりぐりと頭を撫でた。


「ちょ、ちょっと。もう止めてよー」


 ひとしきりイチャイチャした後、ユリを解放する。

 満足、むふー。

 おそらく私の肌はつやつやと輝き、顔の方もいつもよりちょっぴりだけマシになってるんじゃなかろうか。


「ユリも鳴鹿と話してみたらどうだ?意外と話が弾むかもしれないぞ」


 私としてはユリにももっと広い人間関係を持ってほしい。

 もちろんユリと二人なのは楽しいが、それがユリのためになっているかといえば否だ。


 私もユリといつまでも一緒に居れるわけじゃない。

 そんな時私以外の寄り添える場所や人があってほしい。


 鳴鹿は見た目は怖いし、ちょっと言動に粗暴さがあるが。

 それでも気のいいやつだと思う。まだ判断が早いかもしれないが、私みたいな超絶ブスと親し気に話せるんだ。いいやつだと判断するには十分じゃないか?


「う、ん。でも・・・・」


 どうやら、乗り気ではないみたい。

 ユリの人見知りが改善するのはいつのことになるのやら・・・・。


「ま、催促はしないけど。この後二人になるんだから、どうせなら和気あいあいとしていた方がいいだろ?」

「うん・・・・」


 鳴鹿にもできるだけできるだけマイルドに接するよう、頼んでおかないとな。



 * * *



 んでもって、あっという間に時間は経ち。

 私が就寝する番になった。


 こっそり寝起きの鳴鹿に、ユリへの対応をできるだけ朗らかにするよう頼んでおいたし。

 ユリには会話に困ったときに出すといい、無難な話題を事前に教えておいた。


 これで大丈夫だとは思うんだが・・・・。


 ・・・・・。


 今日もばっちりな快眠で目を覚ますと、まず二人の様子を確認した。

 どうやら昨日よりは険悪になっていないようでひとまず胸をなでおろしたのだが・・・・。


 なんだかユリの様子がおかしい。

 私の後ろに隠れるのはデフォなのだが。今日は密着度が激しいというか。

 もうほとんど抱き着いている状態だ。


 そんな私たちに・・・・いや、ユリに鳴鹿はにやにやとした笑みを向けていた。

 ともすればけなす、見下すような様子だが。不思議と悪意のようなものは感じない。


 からかっているようにも見える。



 そして、そんな鳴鹿にユリは明確な敵意の視線を飛ばしていた。

 ・・・・・驚いた。


 ユリは気弱で、人の悪意に対しては委縮する以外の対応を見たことがない。

 そんなユリが敵意をむき出しにして睨んでいるなんて・・・!


 私は彼女たちを交互に見やる。

 明らかに距離は縮まった様子だが、親しげになったわけではない。何とも奇妙な雰囲気が出来上がっていた。



 ・・・・・私が寝ている間に、何があったんだ?




友達10人って一般的な感覚としてどうなんでしょうか?

作者的にはかなり多いと思うんですが・・・


そして、次回には

ようやく初ヒロインが出せそうです


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