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33 防衛国家

今回、世界観の説明のみなので

長々しい説明が苦手な方は読み飛ばしていただいて大丈夫です


あとがきの方に、要約した解説を載せています


 都市についた私たちだが、歓迎されることはなかった。


 これは私たちが煙たがられたとかそういうことではなく。

 単純に人がいなかったのだ。


 完全に無人…というわけでもないが町の中は出歩いている者がほとんどいない。

 ちらほらと見える人も、厳重に武装しているし。雰囲気も殺気立っている。

 明らかに堅気な人種ではなさそうだ。


 非常時、ということで人間がまとめて近くの町村へと非難しているのだろう。

 まあ、ここは防衛拠点となっている場所だから。もともと腰を落ち着けて居住している人間が少ないため、こういった対応が速いのだという。



 * * *



 ‥‥と。

 ここでこの世界、および私たちが召喚された国について改めて説明をしよう。


 この世界の土地が、人間が暮らす領土と。

 魔族が暮らす領土で分かれているという話はしただろう。


 そしてその二つは、大陸で分かれている…。

 が、実は大陸の端。

 末端の一部分だけがつながっているのだ。



 そこからだけは一応陸路で行き来ができるのだが‥‥。

 もちろん平たんな道というわけではなく。激しい渓谷になっており、強力な魔物も出没するため進むこともままならない。

 といっても、現在魔界への進軍を検討している国家はないため。それ自体は問題になっていない。


 問題なのは、その地続きとなっている場所から頻繁に侵略を受けるという点だ。


 どういう手段を使っているのか、こちらが困難に思っている侵略を向こうは容易く行ってくる。

 だというのに、こちらはといえば…愚かにも人間同士で陣取りゲームの真っ最中。


 元から剣やら魔法やらでひっちゃかめっちゃかやってるのに。

 横合いからモンスターの襲撃という追加イベントの発生によって阿鼻叫喚のミキサー状態に移行してしまう‥‥というわけだ。


 そこで。

 この世界の人類は、自分たちが存分に同族への侵略行為ができるよう。

 他種族からの攻撃を防ぐためだけの防衛国家を作ったわけだ…。



 それが、私たちが現在所属しているこの国である。



 …と、いうより乱世中。

 このままでは敗戦濃厚、滅亡間近という国家を。周りがそのまま防衛国家に仕立て上げた…ってところだろう。


 この国が壁のような役割を果たし。

 魔族の侵略を防いでいる間、周りの国家はこちらに一切の侵略行為は行わない。

 防衛している報酬も渡す。

 そして、この国は一切の戦争行為を行わず。領土の拡張を望まない…という盟約になっているらしい。


 当時の王族も、このまま滅ぼされるよりは壁という立場に甘んじて生き残ることを選んだってことなんだと思う。


 そう考えると、この国の人間がなんとなく平和ボケしているというか。

 騎士たちにも緊迫感のようなものを感じられない理由が分かるような気がする。

 そりゃあそうか。実際平和なんだし。(戦争を行わないということが、平和の定義なのだとすればだが)


 それを停滞しているだけ…ととらえる人間もいるんだろうが。

 もともと現代日本でぬくぬく育ち、頭の芯どころか爪の先まで平和ボケしきった私からすれば。特に何も思わないし、異論も反論もない。

 何事も平穏が一番だろう?



 と、次は私たちの話だ。


 以前戦争に異世界から召還した人間…つまり勇者を使用することは戦時条約で禁止されていると述べたが。

 正確に言うと、異世界から人間及び。物体や生物をむやみに呼び出すこと自体が禁止されている。


 曰く、「この世界とは全く別の法則や常識から成り立つ存在及び物質をむやみに呼び出すことは、この世界に軒並みならない悪影響を及ぼす可能性がある」…とかなんとか進言する人間が一定数いるらしく。

 ここ、防衛国家内において魔族に対抗するという限定的な運用においてのみ使用が許されている。


 そんなSFモノによくいる保守的な思想を持った奴がファンタジーにもいるんだなあ…。なんてことを思いつつ。


 これで今まで私たちが自堕落な生活を認められているのかがお分かりだろう。


 そう、他の仕事をしなくていいというわけでなく。

 他の仕事をしてはいけないのだ。


 つまるところ、私たちはこの国以外には決して受け入れてもらえない。

 国外に出ることも許されない。



 その代わり、という意味でのあの自由ということだろう。

 存在を許されないという不自由の代わりに、国という規模の檻の中での自由を得ている。


 このリスクリターンのつり合いに関して、思うところは人により蹴りだろうが。


 少なくとも私は、毎日を平穏でつつがなく過ごせればいいという思いだし。

 そのためにこの国が存在しなければいけないということならば、身を挺して防衛することもやぶさかではない。




 長々と解説したが、つまるところ今私達がいるこの都市は。

 この国も末端に位置し、魔界からの侵略から国を防衛をするための拠点というわけで。


 以前、魔界を監視しているものが侵略の予兆を見つけたことで私たちはここへ呼び出されたということだ。




 これから起こる侵略から国を守り、それを撃退する。


 …それが、私達の初仕事だった。



 * * *



 都市内部の宿舎。


 その一室に私は案内された。




 最低限の家具しか置かれていないが、それでも十分に広い部屋だ。


 しかし、どうせ寝るくらいにしか使わないだろうからこんなにスペースがあっても無駄ではないかと思ってしまうあたり。


 一般人時代の貧乏性が直っていないような気がする。




 いや、増長したいというわけではないのだが。


 いちいち好待遇に対して委縮してしまうのも、なんだか外見が悪いような気がする。




 とりあえず荷ほどきをし、武器防具の点検が済んだ後。


 早速暇になった。




 “その時”が来るまで待機ということだから、素直に昼寝でもしながら待つか。


 どこかの厨房を借りて、早めの夕飯でもふるまおうかとも思ったが。






 私は外に出て、この街を散策することにした。


 これからしばらく過ごすことになるだろうから、道を覚えるついでにいろいろ見ておこうと思ったのだ。




 それに、場合によってはこの街の中で戦うことになるかもしれないのだ。


 地形ぐらいはある程度把握しておきたい。






 人気のない道を一人歩く。




 …なんとなく、今はモモちゃんも連れていない。


 本当に、なんとなく。




 ふと。並ぶ民家の中に一件。窓が開きっぱなしの家があった。


 覗きはよくないが、通る際に中がちらりと目に入る。




 もちろんというか、中に人気はなく。


 乱雑に動かされた形跡のある家具だけが残されていた。




 …家じゅうをひっくり返したような有様だ。しかも、かなり慌てて。






 暮らしていたのは一般人だろうか。


 いくら防衛都市とはいえ、街を維持するためには人が必要だ。


 そして人がいるなら、必然商業だって営まれただろう。




 街の規模から考えて、普段なら活気にあふれていたはずだ。


 屋台が残されたままの市場や。何かしらの演目が行えそうな広場を見てそう考察する。




 ただ、今あるのはがらんどうな道と。


 空虚さだけだ。






 これまた、なーんかこういうファンタジーな世界観の作品でよく見かける。街を囲んだ高い壁もある。


 魔法があるわけだし、ここの世界の人間は一人一人のスペックが高いから。こういう物を作るのにも私たちの世界と比べると大分楽なんだろうが。


 しかしながら、重機もない世界でこれだけのものを作ってしまえるというのは素直に感動する。


 人間ってやっぱすごいわ。




 と、近くまで寄ってみると警護をしている騎士たちを発見し。


 頼んで壁の上の見張り台にまで登らせてもらった。




 見晴らしのいい場所から、街の外を見渡す。




 この都市の周りは、広い草原になっており。


 その先には深い森が続いていた。




 そして、そのさらに先には…。




「魔界が存在する…か」




 座学で学んだことを口で反芻する。




 当たり前だが、目視などできないし。


 目の前にあるのは、一見なんの変哲もない草原と森だ。


 遠目に奥にある山岳のようなものはうっすら見えるがそれだけである。








 …草原に戦闘の跡と。


 雑に焼却処分された魔物の死体がなければ、実感など全くわかなかっただろう。




「‥‥」




 おそらく、この見張り台から魔界からの攻撃を確認したのだ。


 そこから王都へと救援を知らせたのだろうが。


 当然、その間に魔物が待ってくれるわけもない。




 もともとここにある戦力だけで都市を持たせなければならない。




 私たちが来るまでの時間。


 そして住民が避難するまでの時間を稼いでくれていた。




 誰が?




 当然、ここに元々いた騎士か。


 雇われていた傭兵が…だろう。




 では、その人たちは今どこにいる…?




 それは、当然‥‥。






 私は見張り台から降り、街の散策を再開した。




 今度はあてもない足取りでなく、目的が定まったものに変わっていたが。




 私は見下ろした街並みを思い出しながら進む。


 目的の場所。それは上から見渡しただけでおおよその見当がついた。




 正直、実際に目で見て確認する必要はないかもしれない…。




 そんな二の足を踏むような思考が鎌首をもたげる。




 次第に足取りも重たくなっていく。






 それでも、足を止めることはしなかった。


 これからこの仕事をしていくうえで、おそらく避けては通れないものだろうから。




 覚悟を決める、というか。


 かつての倫理観や常識と決別するつもりで。




 私は、その「当然」と向き合った。








 最初に感じたのは、臭いだ。




 すえた臭い…というか。


 生理的な嫌悪感を感じる臭いが嗅覚を刺激する。




 喉元にこみあげるものをこらえながら、私はその元へと近づいていく。




 その先には、当然‥‥。








 私たちが来るまでも、当然戦闘が行われていた。




 当然、多くの騎士や傭兵が駆り出された。




 ‥‥当然、その兵たちは。








「‥‥」




 都市の一角、路地裏にある寂れた雰囲気の広場には。




 数えきれないほどの死体が積まれていた。






 埋葬する時間もないのだろう。


 最低限、戦場から運ばれこうして集められている。




 …。


 胸が痛くなる。




 この人たちは、私達が派手な衣装に身を包んでいる間。


 のんびりと行軍している間。




 傷つき、血を流し、そして死んだ。




(ごめんなさい。そしてありがとうございます…。あとは私たちが何とかします)




 私は手を合わせ、黙とうする。


 謝罪と感謝を伝えた後、私は少々速足で来た道を戻り始めた。




 暗雲が立ち込めるような不安とともに。




(…とりあえず、みんなにはここに近寄らないように言っておかないと。


 いくら何でも、いきなりこれを見るのはショックが大きすぎる)




 せめて、他の者に同じ不安を覚えさせないよう算段を立てながら。



要約

主人公たちが所属する国は、魔界からの侵略から人間の領土を守る防衛国家である


異世界から人間をむやみに召還することは基本的に禁止されている

だが、防衛国家内において限定的な使用は認められている


今回の主人公たちの仕事は、侵略から国を守ることおよび撃退することである

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