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19 VS勇者(ハンデ付)


 やがて次の相手が出てくるが、そいつは開口一番。


「おいてめぇ! 卑怯だぞ! そんなわけ分かんねぇ武器使いやがって!」

「はあ?」

「今までの奴らがやられてたのは、その武器のせいだろうが! そんなもん使うなんて卑怯だって言ってんだ!」


 そんなことを言い出した。


「といっても、この訓練武器に関する規制はなかったですよ。あくまでモモちゃん抜きで戦うだけだって・・・」

「うるせぇ! とにかく卑怯なんだよ! そんなもん使うからお前なんかが勝ってるんだ・・・!」


 まるで私が勝っちゃいけないみたいな言い方だな。

 周りも「そうだ、そうだ!」と、同調した野次を飛ばしているし・・・・。


「・・・・要するに、この武器を使うなってことですか?」

「え。・・・あ、ああそうだ! そんな武器使うなんて認め・・・・・










「いいですよ」




 られな・・・・・・・へ?」


「だからいいですよ。もうこの武器は使いません」


 私はナイフボーラをポーチへ仕舞い。

 腰から外して「ちょっと、持っててください」と、ギャラリーの鳴鹿へと投げ渡した。


 一連のやり取りに呆然としていた彼女は、投げられたことを認識できなかったようで。

 目の前に迫ってようやく、慌ててポーチをキャッチした。


 と、はじかれたようにこちらに向き鳴鹿はしゃべりだす。


「お、おい! 何やってんだお前⁈」

「何って、使うなって言うんだからしょうがないでしょう?」

「いや、だからって素直に聞き入れる必要・・・・」

「大丈夫ですよ、この程度」

「っ・・・・・」


 にっ。

 と笑いかけてやると鳴鹿は静かになった。


 私は呆けている相手に向き合う。


「ほら、武器もなくなりました。始めましょう」

「え? ・・・・いや、でも」

「何ですか? もしかしてまだなにか文句があります?」


 心底あきれたように、そう言ってやると。

 男子は顔を真っ赤にして憤慨する。


「う、うるせぇ! はっ、いい気になるなよ。これでお前はお終いだ・・・!」


 相対し、試合が始まる。


 今回の相手は魔法戦士タイプ。

 物理攻撃もこなせるし、魔法での遠距離攻撃も可能・・・・。


 熟練すれば万能型として苦戦する相手だったのだろうが・・・・。

 今の段階では、器用貧乏という印象しか感じない。


 というのも、この男子は離れた相手には魔法での攻撃。

 近づいた相手には剣での近接攻撃。


 そんな決まったパターンの戦い方しかしない。


 確か彼の持っているスキルは『魔法剣』、だったかな?

 剣も魔法も使うことができるが、剣を使う間は魔法を使えない。

 その逆もしかり。


 だから剣と魔法。その二種類の攻撃を組み合わせることをしない。

 やろうと思えば、スキルの補助に頼らず剣を使い。魔法で補助をする・・・・ということもできるはずなのに。


 格ゲーの簡単操作で、一つのボタンだけを連打しているようなものだ。


 端的に言って、自分の力を使いこなせていない。



「おらっ!」


 あいさつ代わりというように、先制の斬撃。

 この攻撃だって、魔法をけん制に放ってから繰り出せばいのに・・・。


 私はそんな一撃を軽く回避し、




 相手の視界から消えた。



「は。え・・・・・?」


 いきなり相手がいなくなって、動揺するのは分かるけど。

 棒立ちになるのは、いささか間抜け過ぎないかね・・・?


 やがて周りが「ざわざわ」しだすことに、彼も何か異様なものを感じているようだが。

 未だ私には気づかない。


「どこ見てるんですか?」


 仕方ないので、こっちから声をかけてやる。


 男子はようやくこちらを見て、驚愕に目を見開く。



 斬撃のために切り払った、剣。








 ・・・・・その刀身に、私は直立していた。






「な・・・・・。は、離れろっ!」


 振り落とすように剣を振る。

 その前に私は、地面に降りていた。


「な、なんだよ・・・・! ああっ!」


 男子は私に意味不明な威嚇をしてくるが。

 その声は震え、隠しきれない動揺が伝わってくる。



 強キャラにしか許されない回避ムーブを披露され、彼・・・・・そしてギャラリーもすっかり異様な雰囲気にのまれてしまっていた。


 その中で、ユリと鳴鹿だけは「あっ・・・⁈」と。

 何かに気づいたような顔をする。



 そ、やっていることは単純で。

 『立体歩行』と『重量操作』の二重使用だ。


 重量操作で、違和感がなくなるくらい身体を軽くし。

 立体歩行で刀身を足場にしただけだ。


 『立体歩行』はどんなに不安定な場所、物でも。

 足裏がついていれば、難なく立つことができる。


 だから原理さえわかれば、どうってことないんだが。




 不利な状況になっても余裕を崩さない、私の態度も相まって。


 まるで卓越した技術(笑)でそれを可能にしたかのように、畏怖しおののいている。



「なんだってんだぁっ!」


 やがて、重圧に耐えきれなくなったとでもいうように。

 怒鳴り声を上げ、攻撃する男子。




 怒りは恐怖の裏返し・・・・と言うが。

 そんな様子の男子を見て、おびえる者はいないだろう。



 そんな破れかぶれの攻撃が当たるわけもなく。


 斬撃は空を切り、またしても私の姿を見失った。


「ど、どこだ・・・・!」


 男子は慌ててあたりを見渡す。


 首を振り、後ろまで振り返る。

 しかし私はいないとなると、今度は手に持った剣を見た。

 そんなわけはないのに、刀身をひっくり返してまで確認する。


 果てには足を上げ、その裏側まで探し出す始末だ。


 そんな姿はもはや滑稽である。



「上だ!!」


 やがてギャラリーからそんな声が届く。


 そうそう。

 衝撃の展開って言うのは、見せびらかすみたいに自分から言うのはやっぱりなんか違うんだよな。


 誰かが指摘しないと。



 はっ、と。

 上を向く男子の顔には、やがて明確な・・・・・恐怖が浮かんだ。



「なんだよ・・・・それ?」

「さあ? なんでしょね」

「・・・・・なんなんだよぉっ!」



 私は男子の数メートル上空。

 何もないはずの空間に直立していた。



 『立体歩行』のレベルがカンストし、新たに得たスキル。

 その名も『空間歩行』。


 立体歩行の上位互換であり、その名の通り。

 何もない空間に立って歩くことができる。


 というより、空中に足場を作っている。という感じだ。



 そのスキルを使い、私はこの男子の上空に立っていた。


 現実にありえないことが起こっている。

 それを可能にするのは、スキル以外にありえない。


 彼の思考が、そんな結論に達する前に私は攻撃を開始する。



 上空からの飛び蹴り。

 恐怖と動揺によって、まともに対応もできず直撃する。


 それでも攻撃の手は緩めない。


 格闘による連撃。


 それも『空間歩行』を併用した。



 彼から見れば、私は足場もない空中で飛び回り。

 あり得ない角度から攻撃が飛んでくる。


 正面からと思ったら、次は上。

 かと思えば、下から。


 前後左右、果てに上下から。


 空間を自由に移動し、空中で軌道を変えながら攻撃を仕掛けてくる相手。




 あり得ない。


 あり得ないからこそ、動揺し。


 恐怖する。





 『空間歩行』は戦闘系のスキルではないが、けっこう使用のコストが高い。


 だから格闘などの戦闘スキルとの同時使用ができない。

 いいように攻撃を食らっている男子だが、ステータス的なダメージは皆無だろう。


 だが、それに気づかない。



 気づけないほどに、私の作り出した「雰囲気」にのまれていた。

 





 それでも混乱が回復してきたのか、反撃を開始する。

 ・・・・・だが、私には当たらない。



 剣での斬撃は直線的で躱しやすい。


 魔法での遠距離攻撃は力も制度も低い。



 鳴鹿なら、一撃一撃が鋭く。

 そのうえフェイントや拳と足での打撃も織り交ぜてくるだろう。


 ユリなら、魔法攻撃の弾道を曲げたり。

 延々と追尾する攻撃まで使ってくるはずだ。



 それができないのは、未熟だからだ。

 彼自身が、彼の力を生かし切れていない。




 努力せず得た力は、これだけ脆い・・・・!




 上げて、落とす。

 一瞬動揺が解けたことで、より深い混乱へと叩き落さる。


 完全に私を捉えらえなくなった男子に、

 私は三角飛びの容量で上空へ。


 使用スキルの切り替え。

 『格闘』と『重化』を併用したかかと落とし。


 無防備な脳天へと落とされる。


 だがまだ止まらない。

 着地した瞬間に曲げた膝を伸ばし、落ちてくる相手の頭部。


 そのアゴにアッパーをくらわせた。




 一瞬だけ、浮く身体。

 やがて重力という力に従って、背中から倒れることになる。


 今回、追撃はしない。



「勝者、アゲハ・ヤマギシ!」


 騎士がそう宣言しても、もう誰も何の反応もしなかった。

 しばらく、辺りはしんと静まり返っていたが。


 騎士に促され、一人の男子が闘技場におずおずと登る。




 その顔には覚えがある。


 そうだ。


 メイドやってるとき、私の顔を便器に突っ込んでくれた男子。






 ・・・・・・・その取り巻きだ。




 あの時には実行犯の男子の横で、心底私を見下した嘲笑の表情をその顔に浮かべていたのだが。

 今の彼には、不安と混乱しか見えない。



 正面に立って、顔を見合わせる。


 にっこりと笑みを作ってやると、さぁ・・・・と青ざめ。

 恐怖が追加された。



 そこに異世界に来て増長した勇者の姿はなく。


 眼鏡をかけおどおどとした、根暗で気弱そうな男子高校生がいた。



 人は、困難に相対した時その本質が出る。


 つまり、これが彼の本質ってことだ。




「あのっ・・・・・」

「なんですか? またさっきの能力を使うなって話ですか? ・・・・いいですよ。さっきのはもう使いません」

「えっ・・・?!」


 男子の顔がゆがむ。




 私の言うことが分からないような。


 いや、まるで私のことを得体のしれない・・・・不気味なものを見るような表情へと変化した。




 そして、そのまま試合は始まる。




 男子は「ちょ、ちょっと待って・・・・!」と、審判に何やら懇願したような声を出すが。


 やがて開始が覆らないと悟ると、武器をこちらに向ける。




 だが。


 こちらに向けられた武器、棍はかたかたと小刻みに揺れていた。




 孫悟空が持っていそうな棒。


 ・・・・というか、たしかこいつのスキルには武器の長さを変える効果があったはずだし。


 まんま如意棒である。




 と、噂をすればなんとやら。




 伸ばした棒を、振るって攻撃してきたが。


 『見切り』で予測していた私は軽くかわす。






「わ、わああああああああああああああああああああっ!」






 もはや混乱を通りずぎ、狂乱だな。

 ホラー映画の殺人鬼に追い込まれたようなリアクションとともに、武器をやみくもに振るう。


 私はそれを躱しながら、徐々に。


 一歩ずつ、ゆっくりと近づいていく。



 だってホラー映画なんかの怪物には素速い動きをしてほしくない、個人的に。

 だからゆっくりだ。



 やがて私の手が届くほど、距離が詰まる。


 私は棒を握る男子の手、手首辺りをつかみ攻撃の勢いを利用して引っ張る。

 おまけに足を引っかけてやれば、相手は簡単にすっころんだ。


 一見、柔術のような動きにも見えるかもしれないが。


 例えるだけ失礼ってもんだろう。


 だってこれは、ほとんど相手が間抜けだからかかったようなものだし。


 彼が平静だったら、絶対に成功してない。



「ひ、ひぃ・・・・!」


 尻もちをついた状態で後ずさる男子。


 さっきまで持っていた武器を離してしまうくらい、そしてそのことにも気づかないくらい。

 彼は恐れていた。












 出来損ないの・・・・・・私を。








 彼が手放した棒を拾う。

 確かめるように、数回振り・・・・・彼を見た。


 そこでようやく、自分がエモノを離してしまったことに気づいたのだろう。


 表情に、絶望が広がっていく・・・・。


 一歩近づくと、後ずさる。


 もう一歩近づくと、また下がる。


 そうして彼は、四隅の柱。

 そこに背中がついてしまう。



 ・・・・・追い込まれた。


 もう引けない。逃げられない。


 やがて、目の前の女が。手に持ったモノをゆっくりと振りかぶって・・・・・・。








 振り下










「やめろっやめてくれええええええええええええええっ! 負けだ、俺の負けだぁっ!!」


 こうして、彼は敗北を宣言し。


 私の勝利に終わった。



 * * *



 ふう。


 私は固くしていた雰囲気を弛緩させ、息をついた。

 これで終わりだ。


 私はへたり込んでいる男子に、棍を差し出した。


「落とし物ですよー」

「ひっ・・・・」


 できるだけ、朗らかなニュアンスで話しかけたんだけど。失敗したみたい。


 それでも差し出し続けると、やがて震える手で棍を受け取った。


 うん。

 私は審判役をしていた騎士に視線をやる。


「これにて、訓練を終了します」


 すると、騎士はここに居る人間にそう宣言した。


 その声に静まり返っていたギャラリーたちは、ざわざわと騒ぎ始める。



「お、おい・・・・! なんでだよ!」


 代表として、先生がそんな異論の声を上げるが。


「この訓練は、ヤマギシ様の実力を図る目的で行っています。その結果が得られた今、続ける必要はありません」

「い、いやいや。あいつにそんな実力なんかあるわけねぇって・・・! これは何かの間違い・・・・」

「では・・・・次はあなた様がヤマギシ様と戦われますか?」

「う・・・・・・」


 騎士からの返しに、先生の目は泳ぐ。


 そして私の方へと目をやるが、私は特に表情も変えず。


 自然体のままその視線に向き合っていた。



 結局、先生が私と戦うことを了承することはなく。

 ギャラリーの中からも、私に挑んでくる者が現れることもなかった・・・・・・。



「んじゃ、これで解散ですね。いやー、おわったおわったー」


 んー、と。

 のんきに伸びをしながら、私は闘技場から降りる。



 すると、モモちゃんが私の身体をスルスルと登ってきて。

 いつもの定位置である首に巻き付いた。


「おー、モモちゃんお待たせ。ユリ、鳴鹿ー。さっさと戻ろうぜー」

「あ、ああ・・・・」

「うん・・・・」



 彼女たちも、未だに目をぱちぱちさせていたが。


 特に私におびえることなく返答する。




 このまま、私は二人を引き連れながら城へと戻る。




 私が近づくとギャラリーたちは、ざぁっとのき。


 人垣の道ができた。






 私はその中心を、悠々と歩いてゆく。






 特に何でもないことのように、




 意に介してもいないように、




 余裕しゃくしゃくというように、












 している内心で。




 あ。




















































(あぶなかったーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!!!!)






 思いっきり叫んでいた。








 心臓はバクバクだったし。


 全身脂汗がだらだらだった・・・・・。




 それぐらい、ギリギリだった。






 今の私は、もう一戦たりともまともに行える状態じゃない。


 単純に、魔力《MP》切れだ。


 戦闘に活用できない捨てスキル。いくら消費MPが低いと言っても、複数を同時に・・・・それも何試合も連続で使用すれば消費量は跳ね上がる。




 極めつけは、『空間歩行』である。

 戦闘系ではないこちらのスキルも、二つのスキルをカンストさせてやっと得られる上位スキルだ。

 必然、代償が多い。



 空中に足場を作った状態を数分維持するだけで、私の魔力を枯渇させるほどなのだ・・・。

(私のMPの絶対値が低いってこともあるが)



 今回私は空中で方向転換する一瞬だけスキルをONにする方法で、消費魔力を抑えてはいたが。

 それでもあの一戦でごっそりと持っていかれた・・・。



 そう、最後の試合で『空間歩行』を使用しなかったのは。

 勇者に対してハンデをつけたわけでなく。


 単に、もう使えなかったのだ。


 あの時、私は『投擲』ひとつ使用するだけで限界だった。


 通常であれば、そんな状況で勝てるわけがない・・・・・。



 だから、


 揺さぶった。



 私が作り出した流れに動揺し。


 彼らは、私の実力を見誤った。


 私・・・・敵のイメージを増大させてしまったのだ。






 つまり、ビビった。










 そこまでが、私の戦術だった。




 実はこの試合、ほとんどの決め事は私が仕組んだことなのだ。






 すべて、最後の降参。


 そこまでの流れを作るために。






 知らない風を装ってはいたが、実は私と戦う勇者の順番を決めたのは私自身である。


 訓練に参加する勇者をフレイムさんに教えてもらい、戦う順番を騎士が決めたという体で。




 私がナイフボーラを出して、戦う勇者が一番動揺しそうな戦いができる順番を考え。




 審判へ相手をひいきするような判断するように伝え。


 そんな不合理をものともせずに勝ち。




 秘密兵器といっていた武器を、あっさりと封印し。




 どんどん不利になっていく状況も、はたから見れば涼しげに打開し。




 戦術を減らしても、私にはまだまだ奥の手が残っているように錯覚させる。




 周りが十分に恐怖し、一番効果的なタイミングで訓練を終わらせるよう打合せもした。








 結果、勇者たちは騙された。


 得体のしれない・・・・私が作り出した張りぼての幻影に。










 結局、私は実力で勝っちゃいない。




 私は、






 ナイフボーラやスキルの複数使用など。


 相手に見せていなかった戦術での「不意打ち」と。






 私には不利な状況も打開できる切り札を持っている。


 そんな余裕綽々といった「ハッタリ」と。






 この訓練、一から仕組んだ


 不気味な「演出」で勝った。








 ・・・・。


 いや、相手を下ろした。








 正直、かなり危ない橋を渡っていたと思う。

 やっていることはブタの手札に、持ち金全てをレイズするようなものだ。


 いや、それよりもずっとシビアだったかな・・・・?



 事実、なにか一つでも事態が違う方向へ転がっていればこの結果は得られなかっただろう。



 もしも、相手が私のことを見下さず。慢心していなかったら?



 もしも、相手が私の知らないところで修練を積んでおり。予想以上の実力を持っていたら?



 もしも、どんどん不利になる状況をあっさりと受け入れたのが。私の策略だと気づいていたら?




 そして、もしも。

 最後の試合の後、ギリギリの状態な私に勝負を挑んでくる奴がいれば・・・?




 もちろん、例えそうなったとしても演出の修正案はいくつか用意していたんだけど。


 ・・・・これは、私が最初に想定したシナリオであり。すべてがうまくいった場合の展開だった。





 結局、彼らは私の予想を覆すことはなった。


 その程度の相手だった、ということ。



 だから。

 最後の試合の後に勝負を挑まれるという、一番の心配だった状況が来ないという確信にもなった。




 ・・・・だって、彼らには自信がないから。



 彼らにあるのは、いきなり与えられた「チート」からくる増長の強気だけ。


 そんなメッキのような強さなんか。

 状況次第であっさりと剥がれ落ちる・・・・。



 結局、日ごろから訓練を行っているものに「自信」というものは宿る。


 何十回、何百回と繰り返した動き。


 流した汗。


 その積み重ねが自信となり。

 困難に相対した時も、折れない芯になる。



 彼らにはそれがなかった。

 最後の最後で、自分の力を信じられなかった・・・・。


 そんな奴らが、あの状況で勝負を挑んでくるはずがない。








 ・・・・・一人を除いて。


 まあ、彼も。


 別の理由で、挑んでこないのは分かってたんだが。



 とにかくこれで、私は周りに認められる形で実力を示したし。


 ・・・・ぬぐいがたい恐怖も植え付けた。



 ・・・・・。


 この状況は、あなたにとって由々しき事態なんじゃないんですかね?


 私はさっと視線を巡らせ、ギャラリーの中に紛れていた彼。

 イケメンに目をやった。


 そんな彼は、(表面上)悠々と歩く私を。


 感情を感じさせない、真っ黒な目で見つめていた・・・・・。




自分がいかに勝つか、ではなく逆


いかに相手を下ろすか・・・・




はい、というわけで


某麻雀漫画を読みながら書いたエピソードでした






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