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戦。
と言っても、これは子供同士の戦いである。
むしろ喧嘩といってもいいくらいだ。
戦う理由は、遊び場の争奪戦である。
遊び場の争奪戦と言っても、この時代の子供にとってそれは死活問題なのだ。
そう。
この時代の子供はただ遊ぶのではない。
弥太郎達がいる霞村は、妙高高原近くの小川を遊び場とし、そこで川魚を取ったりして小腹を満たしていた。
遊び場を失うという事は、霞村の子供達が食糧危機に陥る事を意味している。
子供同士の喧嘩とはいえ、これも戦であった。
「はーっはっはっはっはっ! この小川は俺達、柳村が占拠したぜ!」
隣村の子供達が高笑いしながら、河原の岩場に陣取っている。
「待てー!」
そこに弥太郎達が大声を上げてやって来た。
「来たな、弥太郎!」
どうやら弥太郎の武勇は隣村にも轟いているのか、柳村の子供達は一斉に警戒した。
「やい、柳村! ここは俺達の遊び場だぞ! とっとと出ていけ!」
弥太郎の友人、長次が大声を上げて柳村の面々に向かって怒鳴り散らす。
「黙れ! 今日からここは柳村の遊び場よ!!」
岩場の上に陣取ったリーダー格の少年がそう怒鳴ると、子供達が一斉に岩場から小石を投擲する。
子供の腕力でも、十分死にかねない攻撃である。
普通ならリーダー各の少年同士が代表して相撲で対決するのが流れなのだ。
長次もその為に弥太郎に声をかけたのである。
だが、投石合戦ではまさしく、総力をあげての命のやり取りになってしまう。
「待て! これは怪我じゃ済まないぞ!?」
あまりにも無情な攻撃に、さすがの弥太郎も気色ばみながらそう叫んだ。
「はんっ! 死にたくなかったら失せろ! こっちは本気だぞ!!」
柳村のリーダー格の少年はそう言うと、弥太郎めがけて石を投げつけた。
「皆、下がって!」
弥太郎は大声を上げながら、子供達を護る為、彼らの前に出た。
数多の小石が弥太郎めがけて飛んでくる。
だが、
「ふん!」
鼻息一つ噴くと共に、弥太郎は素早く腕を動かし、自身に向かって飛んでくる小石を空中でつかみ取り、掴みきれないものは身を翻して避けてみせた。
「お見事!」
長次が拍手で弥太郎を誉めるが、当の本人はそれどころではない。
弥太郎は、今この時も、柳村の子供達の手によって、投石の的になっているからだ。
その時、弥太郎が掴みきれなかった小石が、河原に来ていた一人の少女の頭に命中した。
小石は、ガツンっと音を立てて、河原に転がっていく。
その小石には、ベットリと血がこびり付いていた。




