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オニコジ! ~鬼神覚醒編~  作者: ジョージ
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3

 地頭という職がある。

 

 簡単に言うと、幕府によって分け与えられた国土を管理する武士の役職である。


 応仁の乱以降、室町幕府の権威はほぼ失墜しつつある。

 

 だが、幕府の役人に仕事がないわけではない。


 領内における盗賊の処断も、彼らの立派な仕事である。


 霞村の面々は、村長の田久兵衛の決定に従い、盗賊十人を地頭へと突き出す事にした。


 その道中に、弥太郎も参加した。


 もしも盗賊が暴れても、弥太郎が一人いるだけで抑えられるからだ。


 

 地頭の屋敷に到着するも、地頭は春日山城に登城している為、代理として留守を任されていた小島 昌継が応対する事になった。

 

 小島 昌継は訴えを聞き届けると、すぐさま武装した武士達によって盗賊達を地下牢へ引っ立てさせた。

 

 こういう実力行使を農民へ見せつける事も、武士の仕事の内である。

 

 だが、越後の反乱続きの疲れが出ているのか、昌継や武士達の声には覇気がない。


「その方ら、ご苦労であった。盗賊を捕らえた褒美を用意した。――おい!」


 昌継の声に合わせて、使用人達が米俵を二俵担いできた。


「米二俵、即ち八石を与える」


 与えられたのは、当時の農民からすれば破格の報酬である。


「ははっ! ありがたき幸せ!」


 田久兵衛達は平伏し、一拍遅れて弥太郎も慌てて平伏した。


 体格は大人以上でも、このような礼儀作法にはまだまだ疎いのである。


 それを見た昌継が弥太郎に視線を向けた。


 霞村の面々の中でも、一際体格の大きな男なので、昌継の目を引いたからだ。


 しかも、顔立ちを見る限り、その男はまだ少年である。


 不思議に思った昌継は、思わず――


「その方、名を何と申す?」


 と、口にしていた。


「はい? ――え、俺?」


「そうじゃ」


「弥太郎と申します。霞村で野良仕事しています」


 臆するというよりも、声をかけられた事が不思議だ、という口調で弥太郎は答えた。


 その中にある弥太郎の胆力を見抜き、小島 昌継は少年に対し、ある確信を抱く。


 ――盗賊の討伐成功、この少年による力が『大』である、と。


「田久兵衛よ、八石を霞村に納めた後、再び我が屋敷へ来い。盗賊退治の詳細を聞く」


「ははっ、かしこまりました!」


「以上である。下がれ」


「ははっ」


 田久兵衛達はそう答えると、静々と小島 昌継の屋敷の広場から退席した。


 尚、米二俵に関しては、弥太郎が担いで、霞村へ持って帰っていった。



 帰り道。


「よかったですね、村長。米俵を二俵も下さるなんて」


「ふむ。それは嬉しいのじゃが……」


 意気揚々とした気持の弥太郎とは対称的に、村長の田久兵衛の気持は不安で渦巻いていた。


 先程から、「昌継様に子はいない……」や、「いやまさか……」や、「もし……」などと口にしており、表情も優れない。


「こんなにご褒美を頂けるなら、毎日盗賊が来てくれたらいいのにな」


「滅多な事を言うな、弥太郎。野良仕事はどうする」


 源三もどこか呆れた口調でそう言った。


「あ、それもそうか」


「まったく、体だけ大人になりおってからに」


「えへへ」


 源三の言葉に、弥太郎は悪戯っぽい笑顔を浮かべて応えた。


 不自然なまでに大きな体を持つ少年である弥太郎だが、その性格は優しく愛嬌のあるものであった。


 その為、霞村の面々からはことのほか好かれていた。


「それはそうと弥太郎、おまえ留守役のお侍様に声を掛けられて平然としていたな」


 源三と同い年の農民、田作が鍬を担ぎながら、からかうようにそう言った。


「だって悪い事していないのに、お叱りを受ける訳がないじゃないですか」


「ったく、面の分厚い小童だよ、お前は」


 田作も何処か呆れたようにそう言った。

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