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第七話 レッドドラゴン

やっと題名のフラグの回収ができました。楽しんでくれたらなによりです。

「アイン、唯、セレーネ、ここは僕が時間を稼ぐから逃げるんだ!」


「そんなことできるわけないじゃない!ここはみんなで闘って先生たちがくるまで持ち堪えるべきよ!それにこのレッドドラゴンは私たちを逃がすつもりなんてなさそうよ」


「僕もアインの意見に賛成かな。これはどうあっても逃げられそうにないよ」


「僭越ながら、私もアインさんの意見に賛成ですわ。刀哉様を1人で置いていけなんて、私には無理ですわ」


こうなってしまっては、仕方がない。


「分かったよ。仕方がない。ここはみんなでなんとか凌ぎきろう。ただこれだけは守ってもらいたい。なにがあっても死なないこと。これが条件だよ」


するとアイン、唯、セレーネはなにを言っているんだこいつ、みたいな顔をして


「当り前じゃない。私は世界で初めて大迷宮を制覇する女よ」


「刀哉君を残して死ぬことなんてないよ」


「こう見えて私、諦めはとてつもなく悪い方ですわよ?」


僕の心配は杞憂だったようだ。いざという時はこの首に巻いたチョーカーを外そう。たとえみんなに距離を置かれてしまう可能性があったとしても、誰かが死んでしまうよりは何百倍もいい。


「あちらさんもしびれを切らしてるみたいだね。展開!こい小鉄!」


「展開!二振りで一対に刃 月光 陽向!」


僕と唯もデバイスを展開する。


「唯は僕と敵のかく乱をして!セレーネは遠距離からの支援をお願い!アインは止めを頼んだよ!」


僕は指示を出して唯と共に駆け出した。


「初めての共闘がレッドドラゴンになるなんて思ってなかったよ。相手はあのレッドドラゴンなのに唯はなんだかうれしそうだね」


「刀哉君と一緒に闘えると思うだけで僕は嬉しいんだ。もしここに僕1人だけしかいなかったなら足が竦んで動けなくなっていたよ」


なんとも頼もしいことを言ってくれる。


「僕が右側から攻めるから、唯は左側からよろしく!」


僕はさらに加速してレッドドラゴンに迫る。推定ランクがSだけのことはある。凄まじいプレッシャーが僕を襲う。


小鉄を氷でコーティングし自分には風魔法をぶつけ加速する。僕は立体的な動きでレッドドラゴンを翻弄しながら攻撃を開始する。


「はああ!」


大声を上げ自分に気合を入れながら斬撃を与える。切る切る切る、ただひたすらに切る。すると、左側に行っている唯も攻撃を始めたようだ。


「風切!」


月光と陽向から無数の斬撃が生み出される。レッドドラゴンは的を全く絞れていない。運が良ければダメージも与えられるかもと思っていたけど、そんな都合の良い話はないみたいだ。


「私を忘れてもらっては困りますわ。穿て!レインアロー!」


後方からセレーネの支援射撃が届く。レッドドラゴンが僅かに怯んだ。この隙を逃すようなアインじゃない。


「これで終わりよ!力を貸して焔!断罪!」


断罪は焔の固有魔法だ。この固有魔法はいくつも存在しており、これは神装デバイスにしかない。固有魔法はデバイス自体が使い手を認めるたびに使える数が増えていく。この断罪は今アインが使える唯一の固有魔法だ。固有魔法はいずれも強力無比である。


焔に炎が集約されていく。ただの大剣サイズのものだったのが次第に巨大化していっている。10メートルぐらいの大きさになって、やっと治まった。アインはその巨大化した焔をレッドドラゴンにたたきつける。すると、爆音なんていうのも生易しいような音と衝撃により僕と唯もアリーナの壁に叩きつけられた。


「ランクSと言ってもこんなもんよね。協力し合えば勝てない敵はいないわ!」


アインが嬉しそうに言っている。


「グオオオオオ!」


レッドドラゴンは手傷を負いながらもまだ生きていた。むしろ手負いになり、怒りで我を忘れており、より凶暴になっている。


「うそ。それならもう一度、きゃああ」


アインがレッドドラゴンの尻尾から放たれた攻撃をうける。レッドドラゴンは立て続けにブレスを放とうとしていた。


「こんなところで終わるなんて・・・せめて刀哉だけは無事でいて」


アインは祈るように目をつむった。レッドドラゴンから無慈悲なブレスが放たれる。そのとき最も愛おしい青年の声が聞こえた。


「アンロック、アイギス!」


アインが恐る恐る目を開けてみると刀哉が氷の盾でレッドドラゴンのブレスを防いでいた。


「大丈夫か?お姫様」


「あなたのおかげでね。ていうかさっきまでと雰囲気とか口調違わない?」


「え~と、その説明はちょっと時間かかるから、あとででいいいか?とりあえず今の・・・・・・がやるべきことはあいつを倒すことだろ?」


「それもそうね。でもあとでちゃんと説明してもらうからね?」


「へいへい、分かってるって。そんじゃあちょっとトカゲ退治に行ってきますか」


「お願いだから無事でいてね」


「あいよ。さてと、トカゲ野郎。よくも俺が大切にしている人を傷つけてくれたな。ただじゃおかねえ!」


俺は普段は使っていない、黒いデバイスを展開する。


「展開!一瞬の煌めき 貫けぬものは無く その刃は光さえも置き去りにする 顕現せよ!鳴神!」


俺は久しぶりに黒刀鳴神を展開する。神装デバイスの1つで雷を操ると言われている。ただ雷の属性はピーキーな属性で速度、貫通力ともに群を抜いて高いのだが、いかんせん使いづらい。その大きな理由としては人の認識できる速度を超えた魔法がほとんどのためだ。


ちなみにこの状態になると神装デバイス以外は使えない。俺の莫大な魔力に耐えきれず壊れてしまうからだ。


普段鳴神を使わないのは、封印している状態だと雷魔法が使えず、鳴神を展開させることができないからだ。もし仮に展開することができたとしても、能力を十分に発揮できなので宝の持ち腐れである。


俺は、本来は雷、氷、風のトリプルなわけだ。さあてどう料理してくれようか。


「封印して以来初めて封印を解除したから、加減できるかわかんね~な。まあその辺の実験にも付き合ってもらうぜ、トカゲちゃん!」


俺は自分に雷を纏わせる。


「知ってるか~?人間が脳に出す命令はな、電気信号なんだってよ。これは俺のオリジナル魔法でな、その信号のスピードを任意に速くできるんだ。今は100倍ってところかな」


刀哉は音を置き去りに動き出す。瞬間移動でもしたかのようにレッドドラゴンの前に現れる。さすがのレッドドラゴンも動揺している。


「加減がわかんねえから、これで終わると思うけど。まあ楽に行けや!」


刀哉はそう言って、次の瞬間にはレッドドラゴンの後ろに立っていた。


「夜神流抜刀術 奥義 雷切り」


俺はそう言ってデバイスを元の形に戻した。


レッドドラゴンはあまりに速い攻撃であったため、まだ攻撃されたことにも気づいてない。振り返って刀哉に攻撃しようとしたとき、首から上が血を吹き出しながら地面に落ちた。


「まあこんなもんだろ」


俺がみんなのもとに戻るとアインだけでなく途中から見ていたらしい、唯とセレーネも訳を聞きたそうにしている。


「どこから説明したもんかな。というより唯はこっちの方が違和感ないだろ?」


「そうだね。僕が知っている刀哉君はいつも大胆不敵で周りの事なんておかまいなしだったよ」


「はっきりいうなあ。そうだな、まずはステータスを見てもらうか」


俺は学生証をとりだし裏に書かれてくる封印時ではなく、解放時のステータスを見せる。この学生証は優れ物で本人のステータスを随時読み取り、表示してくれる。


総合ランクオーバーS

魔力    測定不能

魔力攻撃力 S

魔力防御力 S

身体能力  S

攻撃力  S

防御力 S


「総合ランクオーバーSってあなたを除けば世界に1人しかいないじゃない!」


アインはいつもながらに興奮気味だ。


「そういうこった、俺はこの力に呑まれないために力を封印していたって訳だ。両親が生きているうちはよかったんだがな。両親がいなくなってからはもし俺が暴走した時に止められるような人間はほとんど存在しないといっていい。だから遺言と共にこのチョーカーを渡されたってわけ」


俺はひとまずの説明を終える。


「ここまでで何か質問は?」


「ありますわ。その封印とやらに、副作用ってありませんの?それだけ強力な力をあそこまで抑えているんです。無い方がおかしいと思いますわ」


唯とアインもそれが気になっていたみたいだ。すごく聞きたそうにしている。


「副作用って程でもないんだが、全てが抑えられるって言って分かるか?」


「僕にはよく分からないよ。詳しく教えて」


「簡単に言うとだな、感情とかそういったものまで抑えられるってことだ。今の俺はどちらかというと強気な性格をしているが、このチョーカーを着けているときは控えめだろ?そういうことだ。別に多重人格とかではないからその辺の心配はいらねえよ」


命に関わるような副作用でないと分かってみんなも安心したみたいだ。


「みんなに大事な話がある」


俺が真剣な表情でそう言うとみんなも緊張の面持ちでこちらを見てくる。


「俺も男だ。責任はとる。今の状態の俺は普通に鋭い。という訳でまずはアイン!」


なにを言われるのか分からず困惑の表情を浮かべながらも俺の前にくる。


「好きだ!俺と付き合ってほしい」


アインの顔がみるみるうちに赤くなっていく。


「ちょ!ちょっといきなり何言いだすのよ!」


「だめか?」


「別にだめっていうわけじゃあないけど、心の準備ができていなかったっていうか。ああもう雰囲気もへったくれもないわね。参考までに理由を聞いてもいいかしら?」


「その~なんだ。一目ぼれだよ!悪いか!」


俺は新入生代表のあいさつでアインを見た時からその姿に心を奪われていた。


アインはこれでもかというぐらい顔を赤らめて。


「ふ、ふ~ん。そうだったのね。私もあまり人の事は言えないけど。私もあなたが好きよ、愛してるわ。これからよろしくね!」


最後は満面の笑みを浮かべていた。


「よし!次は唯」


アインがなにやらつぶやいている。


「まあこうなるわよね。もうちょっとだけでいいから2人きりの世界に浸りたかったわ」


唯がやってくるなり言い放った。


「僕の夢は刀哉君のお嫁さんになることだよ。愛してるよ刀哉君」


まさかのカウンターをくらってしまった。


「先に告白されるとはな。ぶっちゃけ唯が初恋の相手です。付き合ってください!」


「いや!やっと思いが通じたんだ今すぐ結婚しよう。そうしよう」


「唯のこと愛しているけど、それはせめて学園卒業するまで待って!割と本気で」


「冗談だよ。さすがにそんな無茶は言わないよ。でも夏休みにはお父さんとお母さんのところにあいさつにきてよ」


唯が言うと全く冗談に聞こえない。


「俺も久しぶりにおじさんとおばさんに会いたいしまかせろ」


するとアインも


「私の実家にもきなさいよ!」


ここで待ちきれないとばかりにセレーネが


「ちょっとアインさんと唯さん、少し空気を読んでくれてもいいんじゃありませんこと?やっと次に私が愛の告白を受けるっていう時に邪魔しないでくだないな!」


なんとも締まらない空気になってしまった。


「悪い悪い。セレーネ!」


「はいですわ」


「何人もの女性を好きになってしまって1人に絞れないような優柔不断な男で、セレーネが夢見るような王子様じゃないけど、俺なんかでいいのか?」


「俺なんかなんて言わないでくださいな。刀哉様じゃなければだめなんです。私には第1皇女としての立場もあります。でも、心配にはおよびませんわ。昔刀哉様に救われた時に刀哉様のご両親と私のお父様、お母様で意気投合して、私を刀哉様の嫁に出すことにはむしろ賛成してくれていますわ」


あの時、にやにやしていたのはそれが理由か。


「よしわかった。まだ出会って間もないけど俺はセレーネの事が好きだ。付き合ってほしい!」


「もちろんですわ!」


話を遮られたアインが文句を言ってくる。


「ちょっと~。私も第2王女なんですけど!」


「いや、なんつうかアインの両親ならなんとかなる気がした!」


詫びれもなく、そうのたまう俺に少し不機嫌そうだ。


「いきなり彼女が3人もできるとか、我ながらあきれるよ」


「そうよ。こんなにきれいどころを彼女にできて、この幸せをかみしめなさい」


「もう絶対に離さないからね!」


「ふふふ、再開したその日に恋人になれるなんて。やっぱり運命の出会いでしたのね」


ここで俺は言っておかなければいけないことがある。


「この封印についてもう1つ言っておかなければいけないことがある」


俺がそういうと俺の恋人達は真剣な顔をする。本当に幸せもんだな、俺は。


「この封印は解除していくたびに弱くなる。世の中に永遠なんて存在しないのと一緒さ。封印が弱まるたびに俺は力を増していって、最後には今の状態で日常生活を送ることになると思う。もともと俺の精神が成長するまでの封印だから当然なんだが。ただ、これだけの力を持っていると様々な組織に狙われることになると思う。そうすると、真っ先に狙われるのは俺ではなく、お前たちだ。だからもしもが起こらないように、俺を支えてほしい。お前たちの誰か1人にでもなにかあれば、俺は世界を破壊しかねない。情けない話に俺は自分を抑える自信がない。よろしく頼む。」


するとまたもやあきれ顔をされた。


「人生のパートナーなんだから、当然のことじゃない。朝だってろくに起きれないんだから。この私にまかせなさい」


「僕にとっての不幸は刀哉君の傍にいられないことだよ。刀哉君のためならどんなことだってがんばれるよ!」


「夫を支えるのは妻として当然の事ですわよ!」


なんとも頼もしい恋人達だ。すると、アリーナに黒羽学園長がやってきた。


「お前たち無事か!」


「ええ大丈夫よ」


「僕もかすり傷くらいかな。でもこの傷ってアインに付けられたんだよね」


アインは言われてなにやら言い訳をしている。


「私もかすり傷1つありませんわ」


「そうか。良かったよ。異常な魔力を感知したんでな、刀哉、封印をといたんだな」


「大切な人が傷つけられそうになったんだ当然だろ。それより餡子くるの遅すぎだ!」


「大切な人・・・私もそになかに、って私はなにを考えているんだ」


「お~い。餡子聞いてるか~?」


ちなみに餡子というのは、学園長の名前である。


「ああ、すまない。後のことはこちらで処理しておく、君たちは寮に返って休んでくれ」


「じゃあ、あとのことはよろしく!」


俺は恋人たちのもとに向かった。


「じゃあ封印するから、今の状態の俺とはさよならだ」


「さっきまでのこと忘れてるなんてことにはならないのよね?」


アインが心配そうに聞いてくる。


「言ったろ。別に多重人格ではないって。さすがに自覚していることまではなくせないし、ここまで大きな愛を少々押さえつけたところで問題ないさ」


「恥ずかしいことをさらっというのね。大丈夫ならいいわ。お休みなさい」


「ああ、お休み。ロック」


再び封印され、俺は僕にもどった。


「今日は疲れたし、寮にもどろっか」


僕がそういうとみんなも移動を始める。


寮に戻るとアインが震えていた。


「怖かった。死んじゃうんじゃないかって思った」


そんな姿を見せられると、いつも強気な彼女も1人の女の子なんだってすごく思う。


僕はアインを抱きしめながら


「ごめんね。始めから封印を解いていればあんな怖い思いさせずに済んだのに」


「いいえ、あなたのせいじゃないわ。弱い私が悪いの。大迷宮を制覇するとか言っておきながらこの有り様よ。本当に情けないわ」


落ち込んでたと思ったら今度は顔を上げる。その表情からは途轍もない覚悟が感じられた。


「刀哉、私は誓うわ!あなたの隣に立っても恥ずかしくない攻略者になるって。そして、あなたにふさわしい女になるわ。だからお願い。私をあなたのものにして」


久しぶりの実戦で僕も高ぶっていたのだろう。


僕はアインの瑞々しい唇に自分の唇を重ねた。


そして、2つの影は1つになった。



学園長がヒロイン入りするのかは全く決めていないです。ヒロイン達と恋人になりました。アインちゃんは1抜けですかね。次の投稿は明日になると思います。

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