第六話 皇女様
遅くなってすみません。いつもより多めに書いています。これで一応ヒロインは出そろいました。ではどうぞ!
実技の授業後のシャワールームにて
「刀哉の鈍感は昔からなの?あれじゃあ唯も苦労するわね」
「う~ん、それがちょっと違うんだよね。昔はそういう人の感情にも敏感だったし、なにより今の刀哉君と違ってすごく勝気な子だったんだよね」
「あら意外。でもやっぱり刀哉のこと好きなの?」
「好き、大好き!刀哉君を見てるとね、心が温かくなるんだ。何年もあってなかったけど、この思いが揺らぐことはなかったかな。そういうアインはどうなの?好きなんでしょ?刀哉君のこと」
「な!そんなこと、そんなことない・・・とは言えないわよね。こんな気持ち初めてなの!私は今まで同年代の人に負けたことなんて無かったわ。努力も怠らなかったしね。でも、刀哉には負けたわ。我ながら簡単な女だと思うわよ。でも、あの闘い以来刀哉のことが気になって仕方がないの!」
「別にいいんじゃないかな?恋なんてそんなものだよ。きっかけはどうであれ、気づいたらその人の事を好きになっていて、どうしようもなくなるんだ」
「そう、これが恋なのね!」
「じゃあ、僕は先に教室に戻ってるよ」
「ええ、私も行くわ」
自室にて
「ねえ刀哉、恋って何だと思う?」
「いきなりどうしたの?まあいいけど、恋かあ~昔はその辺の感情もうまく感じとれたんだけど、ある時を境にあまり感じ取れなくなったんだよね。」
「それは唯も言っていたわ、昔はこんなに鈍感じゃなかったって。」
僕は苦笑いを返す
「そっか~、今の僕って鈍感だったんだね。くる時がくればこのことについても、話せると思うから。ごめんね」
「別にいいわよ、ただあなたの事を知りたかっただけだから。明日も早いしそろそろ寝ましょうか。お休み、刀哉」
「お休み、アイン」
「もう!やっぱり朝は弱いのね、髪もぼさぼさじゃない」
「あはは、ごめんね、アイン。これからも迷惑かけると思うよ」
「別に迷惑だなんて思ってないわよ。それより、髪とかしてあげるからこっちにきなさい!」
そう言われて僕はアインの前に座る。
「よし!これでいいわ。それじゃあ学園に行きましょ」
「了解!」
僕たちは部屋を出て、学園に向けて歩き出した。
教室に入ると昨日唯が言っていた転校生の話題で持切りだった。
「みなさ~ん。学校が始まってすぐですが、今日は~、転校生がきたので紹介したいとおもいま~す。セレーネさん自己紹介をお願いしま~す」
そう言われて入ってきたのは、金髪の髪をゆるふわロングにしていて、瞳の色は碧眼の神秘的な美しさを持った女性だった。
「紹介にあずかりました、クルージオ皇国第1皇女のセレーネ・クルージオですわ。こんな時期に転校してくるなんてと思っている方も少なくないと思いますが、私がこの学園に転校してきた理由は、ある殿方に再開するためですわ。そう、私は4年前からその方の事ばかり考えていました。私は夜神刀哉様に会うために転校してきましたわ!」
言われた本人もびっくりだよ。ていうか、となりの2人、アインと唯(私のことは唯って呼んでと言われた)から途轍もない殺気を感じるんだが。僕はなにかいけないことをしてしまったのだろうか?
「そういうことらしいので、席は夜神君の隣でいいですね~。ごめんちゃいなんだけど、橘さんかアインさんのどちらか、1つずれてくれませんか~?」
おもむろに唯が立ち上がり。
「僕はできる妻だからね。今日のところは僕が席を譲ろう」
いつの間に僕の妻になったんだよ!
セレーネさんが隣の席に着いた。
「私の我儘につきあってもらって申し訳ありませんわ」
アインが若干興奮しながらセレーネさんに絡む。
「ちょっとあんたなんなのよ?なんで刀哉に会いたいのよ!」
「なに?と言われましても、刀哉様は私の運命の相手ですわよ^^」
万人を虜にするような笑顔で答えた。僕も一瞬見とれてしまったがアインに太ももをつねられて我に返った。アインも唯もどういう事だとでも言いたいような目でこっちを見てくる。
そんな目でみられても僕にも全く身に覚えがない。
「えっと、セレーネさんと僕ってお会いしたこと有りましたっけ?」
このやり取り昨日もした気がする。
「そんなセレーネさんなんて他人行儀な!私のことはセイレーンとお呼びくださいな。私と刀哉様の出会いは御伽話のお姫様と王子様のようでしたわ。悪党に攫われようとしていた私を颯爽と現れて救ってくださいました。その日以来刀哉様のことを考えない日はありませんわ!」
そういえば両親と共に武者修行の旅をしていた時に助けた女の子もいたな。後の対応は両親に任せていたからな~。あのあとにやにやしているなと思ったけど、まさかこんなことになるなんて。
「そうだったのですか、これからよろしくセレーネ!」
不機嫌を隠し切れない様子でアインと唯も後に続いてあいさつをする。
「まあいいわ。ルガート王国第2王女のアイン・ルガートよ。私のことはアインでいいわ。よろしく」
「僕は橘唯。僕のことは唯でいいよ。よろしくね、セレーネさん」
「私のことはセレーネでかまいませんよ。よろしくお願いしますわ。アインさん、唯さん」
セイレーンは終始にこやかだ。
「はいは~い。そろそろ授業を始めたいんだけどいいかな~?」
加賀先生にそう言われて僕たちは慌てて席に着いた。
放課後になり、僕たちはあと1人のメンバーをどうするかについて話し合っている。
「唯が言っていたようにセレーネがきたんだし、彼女でいいんじゃないか?」
ちなみにセイレーンは終始僕の腕に抱き付いた状態で離れようとしない。
「確かにそうなんだけど・・・ 彼女は危険だわ・・・」
「なにか言った?」
アインは顔を真っ赤にさせて
「なっ!なんでもないわよ。唯はどう思う?」
「別にいいんじゃないかな、一応一度闘ってみて実力は把握したほうが良いと思うけど。自己紹介の時も言ってたでしょ」
「それもそうね。セレーネはどう思ってるの?私たちのチームに入る意思はある?」
セレーネはさも当然のように
「お願いしますわ。刀哉様のいる場所が私のいるべき場所ですから!」
こう真っ直ぐな好意を向けられるとなんとも言えないむずがゆさがある。ただこれからどうしたらいいのか全く分かんないけど。
「それじゃあ、私と模擬戦してもらうわ。大丈夫かしら?」
「ええ、かまいませんよ。よろしくお願いしますわ」
4人でアリーナに移動する。今回の審判役は僕だ。唯は観戦だ。
「じゃあ、2人ともデバイスを展開して」
「分かったわ。展開!遍く炎を統べる一振りの大剣 焔!」
「分かりましたわ。展開!清流な封印されし流麗の弓 アルテミス!」
セレーネが展開したデバイスはも神装デバイスの1つだ。水を操ることができると言われている。ちなみにこの弓に矢は必要ない。魔力を変換し矢にするためだ。セレーネの属性も水だ。さらにその矢を操ることもできる魔弓なのだ。
セレーネのステータスはこうなっている。
総合ランクB
魔力量 B
魔力攻撃力 B
魔力防御力 A
身体能力 B
攻撃力 C
防御力 B
「準備できたみたいだね。これからアイン・ルガート対セイレーン・クルージオ。始め!」
先に動いたのはセレーネだ。地面に向かって矢を放った。
「どこに向かって撃ってるのよ!そんなことじゃあ私には勝てないわよ」
「心配無用ですわ。今日のアルテミスの調子を確認していただけですから。デバイスの調子を確認することは大事なことですわよ?どこかの猪突猛進な王女様には関係のない話でしたわね」
「ちょっと~、性格かわってない?」
「戦場では非常にならなければいけませんので。さあ、無駄話はこれくらいにしてそろそろ行きますわよ!」
セレーネは無数の矢を放つ。それを巧みに操りアインの逃げ場を無くす。そしてアインは矢に囲まれてしまった。
「こんなもの私の炎で蒸発させてやるわよ!」
アインは焔を炎で覆い横に薙ぎ払った。するとセレーネの水の魔力でできた矢は一瞬で蒸発してしまった。そしてすぐさま反撃に出ようとしたとき、地面の中から4発の矢が飛んできた。
「かはっ!」
その矢がアインに突き刺さる。アインは反撃をさせてもらえず、逆に大きなダメージを受けてしまった。
「まさか、最初に撃った矢を使ってくるなんてね」
「ええ、私のステータスは平均的で決定打に欠けますから。常に頭を使って闘わないといけませんの。魔力防御には少々自信ありますけど。幸い私のデバイスであるアルテミスはあなたの焔と違って魔力の燃費もいいですし、この闘い方が私にはあっていますわ」
どうやら最初の試し打ちも、そのあとの会話も戦略の1つだったみたいだ。セレーネを怒らせるとやばそうだ。
「これくらいのダメージなら、まだまだいけるわ!絶対にその鼻っ柱へしおってあげる!」
そうアインが意気込んだとき、学園全体をけたたましいサイレンの音が包んだ。
「こんなときにはぐれがでるなんて。今日のところはここまでね、この決着は今度つけてあげるわ」
「望むところですわ」
そして、このサイレンの意味するところは、はぐれが出現したということだ。大迷宮から出てきてしまったモンスターをそう呼ぶ。
この学園は大迷宮の傍に造られている。それは、実地での訓練のためという意味もあるが、このはぐれに対処するためという意味合いの方が大きい。
スピーカーから学園長の指示が聞こえる。
「生徒はシェルターに避難!教員ははぐれの討伐に向かえ!今回のはぐれはレッドドラゴン。推定ランクSと予想される。迅速に行動しろ!」
放送が聞こえる。ここにいる僕たち4人も顔面蒼白だ。ただ理由は放送ではない。
目の前にいるレッドドラゴンのせいだった。
ここまでアインにばかり闘わせてきちゃいました。次で刀哉の力と鈍感な理由を出せたらと思います。できたら今日中に上げます。