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ゆきぞめ

作者:

ピンと張り詰めた空気に身を浸す。寒い冬の朝、外界に拒絶される感覚が僕はとても好きだ。吐いた息は白く浮かんですぐに消えていく。今日は雪が降るらしい。


いつか彼女は言っていた。「今夜夢で会えたら、私の首を絞めて殺してね。」また訳のわからないことを、と僕は適当に相槌をうった。約束だよ、と嬉しそうに笑っていた。


結局、僕たちが夢で会うことはなかった。いくつか季節が変わり、そんな約束も忘れかけた頃、彼女は校舎の屋上から飛び降りて死んだ。白い雪の上、真っ赤に散った君はどんなに綺麗だったことだろう。


それから丁度一年になる今日、僕は君との約束を果たすことにした。屋上から見上げる空は重い雲に覆われ、今にも落ちてしまいそうだ。あの中のどこかに君がいるのだろうか、と下らないことを考えた。


冷え切った手を首にかける。うまく力が入らないが、まぁ何とかなるだろう。ぼやけていく視界の中で君が笑っている。やっと夢で会えたね、なんて。ぽたぽた、地面を濡らしている雫は自分の涙なんだと気がついた。


ごめんね。本当は知っていたんだ。君の体に増え続ける傷を、見ないふりをしていた。「夢で会えたら。」助けを求め伸ばされた手を、僕は取ってあげられなかった。君が死んで、どこか安心すらしていたんだ。もう見なくて済む、傷つかなくて済むんだと思った。僕はなんて馬鹿なんだろう。君がいなくなった世界なんて、なんの意味もなかったんだ。ごめん、ごめん。どうか許して。


雪が降っている。許さないよ、と彼女が笑った。

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