フレンドリーファイア
或るところの居酒屋で同期とサシで飲む男が一人。
「あの上司さーやばくない?」
同期が言う。
「あ、そう?なんで?」
「えーだってさ、電車が30分遅延してて遅刻したらさーなんか『お前社会人として遅刻するなんて言語道断だろう』とか言ってきてさー。電車が30分遅延してたんだよ?おかしくない?」
「まぁ30分の遅延だからねぇ。」
「でさ、俺もそう思って『いや30分の遅延ですよ?無理じゃないですか?』って言ったらさ、『ここは学校じゃないんだぞ?もっと余裕をもって来い。それに俺に連絡一つ寄越せばよかったじゃないか。』って言ってきたんだよ。つまりそれっていつも朝礼の30分前に着くように家出ろってことだろ?どんなブラック企業だよ。」
「いやそれそういうことじゃなくて、もし遅れるなら連絡しろよっていうのと、そもそも遅れないようにしろよってことじゃない?」
「いやだってさ、」
ガシャンと食器が鳴る。
「だってさじゃねぇだろ!なんでお前は自分がもしかしたら悪いのかもしれないって思えないんだよ。上司が言った正当な言葉を自分をかわいそうに見せるための見苦しい言葉に変えるんじゃねぇよ!」
酔いが一気にさめた。
言ってしまった。
ポケットに手を伸ばす。
3枚の紙を机にたたきつけ、居酒屋を後にする。
静まり返っていた。
それでもただ鳴り続けるテレビの音だけが寂しくしていた。




