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カメラの中は  作者:
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小森澪__隠し撮り

小森 澪


鬱蒼とするようなあの冬が終わり、ピンク色の春がやってきた。

私が住んでいる北海道にはきらきら、というよりは重い雪が降る。

観光客は雪を見て声を上げるけれど、

私にとっては日常で、むしろあまり好きではない。それが雪。

家族構成としては、母、父、柴犬の涼介、そして大学生の私。

犬にこんな人間のような名前を付けたのは母の提案だった。


 『涼介がもし人間に生まれ変わった時に見つけられるように』


正直ばからしい考えだ。

なのに父も賛成し、私も流れるままうなずき、「涼介」になっていた。


まだ少し雪が残っている地面を踏みしめながら、あの人を見つけた。

長い黒髪を垂らしながら夢中で道端の雑草を撮っている恋人の牧野真理。

名前からもわかる取り牧野真理は女性だ。

私も真理も恋愛対象が女性で趣味も同じだったこともあり意気投合した。

その「趣味」というのはカメラだ。

お互いを撮りあったり、無言で景色を撮る時間が大好きだ。


「真理、おはよ」

「あ、澪。春だからたんぽぽがあってさ、かわいくて」

「ほんとだ、かわいい」


いつも通りの会話をしながら奮発して買った一眼レフカメラを用意する。

私は周りが好きなアニメにも漫画にもゲームにもさほどハマらなかった。

だけど、自室には写真集がたくさんある。

元々見るのが好きで、じゃあやってみよう、となるのに時間はかからなかった。


私たちは無言で景色を撮り始める。

生命力のあるたんぽぽ。まだ少し残っている道端の雪。シャッターがしまっている蕎麦屋。

それらに交えて真理の横顔を隠し撮りする。


真理は世間で言われる美形だ。

私とは不釣り合いなほど。

雪のように白い肌、漆黒の黒髪、女性にしては高い背。


対して私は極端にブサイクではないが、美容に興味がなく、

かさかさの唇、くせのある髪の毛、中途半端なルックス。


写真にはビジュアルは関係ないが、最高傑作を皆に見せても明らかに真理のほうが褒められている。


「あぁ」


思わずため息が出る。

真理に悪意はない。わかっている。それはだれよりも。

でも。


この差はなんだろう。

どれだけ優しくしても、どれだけ味方をしても、少し冷たい澪の方が好かれる。


付き合った直後は夢のような毎日だった。

一緒に写真を撮って笑いあって。

真理に勧められてメイクをしてみたり。

都会にふたりで遊びに行ったり。


今は憎くて仕方がない。

あの残酷なほどに綺麗な横顔が。


そんなことを思いながら私は見惚れるように美しい横顔を隠し撮りする。

はたして私はいつからこうなってしまったのだろうか。

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