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究剣極化  作者: 啓上秋
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1話「入学準備」

 かつて数多の国が存在していた、国々は戦争を繰り返し血を流す。

 ある日英雄が現れ圧倒的な剣術で戦争を終結させたが全ての国は疲弊していた。

 残された人々は英雄を長、"剣帝"として、国々を統合させ新たな帝国が誕生。

 

 そこから100年、剣帝が治める帝国、エペ・エテルネルは栄華を極めている。

 しかし、現実は非情だ。

 首都だけ見れば繁栄しているが、地方に行くとまだまだ貧富の差は激しい。

 

 さて、この問題を解決するにはどうしたらいいか、自分の考えを書きなさい。


「…………」


 "剣神会"・第四席、ノア・オルディネールは教科書を読みながら困惑していた。


「どういうことなんですか? これ」


「何って教科書だが?」


 剣神会・第一席、ツミオリ・コガネは当たり前かのように答えノアは更に困惑した。

 そこから沈黙が続く、何分経つか分からなくなるその時、沈黙を破るように扉が開かれる。


「あら、まだ二人しかそろってないのね?」


 扉から入って来たのは、剣神会・第三席、エメリーヌ・パレスだった。


「そうだな、二人しかいなくて暇なのに、後輩は熱心に教科書読んでて偉いよ」


 (先輩が読ませてるんだろ……)とノアは心の中で若干の苛立ちを覚えながら平静を装う。


「あら~! ノアくん偉いじゃないの、仕事熱心ね〜」


「はは……ありがとうございます? ……え、仕事熱心?」


 絶対に今、関係ないと思われる"仕事"という言葉に違和感を覚え、平静を装えなくなる。

 実際自分は今、声が震え、顔が引きつっているだろう。


「……あ」


 先輩が何かに気付いたらしい事に不安が押し寄せる。


「ごめん……伝えるの忘れてた」


「あらら~、コガネくんも伝えるの忘れちゃってたのね〜、実は私もなの〜」


 二人とも、重大そうな事を伝え忘れていたような空気感を演出し、更に不安が強くなる。

 このまま死刑宣告を待つより自分から死にに行った方が話が早いので、覚悟を決めて、話を催促しようとしたその時――、


「まったく……君達には困ったものだよ、コガネ、エメリーヌ」


 "剣帝"、エシャレカ・ソワーフスがそう言いながら入って来た。その隣に居るのは剣神会・第二席、サラ・アムールフーだ。


「これで剣神会のメンバーは全員揃ったね、ボクもそうだが君達もサラも皆揃って、ノアに伝え忘れるなんて……大人としてどうなんだい?」


 剣帝の言葉に誰も言い返せなかった。


「ノア、すまなかったね、ほら皆も」


「ごめんね、ノア!」


「後輩、ごめんな」


「ノアくん、ごめんなさいね〜」


「別にもういいですけど、変な話じゃないですよね……?」


 一同沈黙。

 

「はい……そうですか……はい……」


 ノアは何も言えないと思った。


「さて、じゃあ皆には席に着いてもらって」


 剣帝がそう言うと皆、席に座り、剣帝の話を邪魔しないよう、固く口を閉じたようだった。


「何から話したものかな……」


 エシャレカは少し考えた素振りを見せた後。


「単刀直入に言うよ、ノア、君には剣術学園に入学してもらう」


「はい?」


「順を追って説明するね、まず君は、三年前から存在が確認されている、テロ組織反逆の刃は知ってるよね?」


 "反逆の刃"、目的もメンバーも不明だが騎士団と帝国施設しか襲わない、襲われても死人はゼロ、奇妙な点があるとすれば、襲われた後、毎度の如く騎士団から脱退者が出るくらいの、謎のテロ組織、何度か騎士団と連携して、交戦したこともある。

 

「まあ、交戦したこともありますし」


「なら話が早い、先日、騎士団から報告があったんだ、剣術学園に反逆の刃の幹部二人とリーダーが入学したと」


「待ってください、その話、信憑性はあるんですか?」


「信憑性は……何とも言えない、先日反逆の刃のアジトの一つを発見し襲撃した、その時にアジトの中に剣術学園への入学願書が3枚あったことは確かだし、捕らえたメンバーの一人を尋問したところ、王の鞘と言われる幹部と反逆の刃のリーダーが入学すると吐いた、もちろん、出任せかもしれない、だけど用心するに越したことはないだろ? それに願書がその後何者かに盗まれた」


 ノアはまだ懐疑的だったが、剣帝の言うことも一理あると思ったので、とりあえず話を進めることにした。


「話は分かりました、それで何で俺なんですか?」


「決まっているだろう、君が18歳だからさ」


「つまり、まだ子供だと?」


「そういう事じゃないよ、あの学園は、少し他の学園とは変わっているからね」


「変わっているとは?」


「そうだね、まずそこからだね、ボクが理事長を務める剣術学園は首都にしかそれも一校しか存在しない訳だけど、あの学園は、学年制じゃないんだ」


「学年制じゃない?進級しないってことですか?」


「そうだね、あそこは一年生、二年生などの概念が存在しないのさ、実力があればすぐにでも卒業できる学園として設立している、君は違うけれど、基本的に剣神になるにはあの学園に通って剣王になってボクとの模擬戦闘試験に合格しなきゃなれないんだよ? まあ、一応君とも試験はしたけどね」


「え……俺って特例で試験させてもらったんですか?」


「うん!だから君は特例で剣神になったんだよ」


「待ってください、それにしては剣神の数が少なくないですか?」


「そうだね、そこら辺の説明も学園の説明と合わせてちゃんとしようか」


 説明を受け、頭の中で整理するとこういう事になる。

 ・剣術学園は学年制ではなく実力制。

 ・15歳〜18までの人間なら同じタイミングで入学可能。

 ・学年制ではないが三年間経っても卒業できないなら退学になるが騎士団試験に受かれば騎士になれる。

 ・剣王になる以外でも卒業試験に合格できれば卒業できる、辞退もできるが騎士団か就職しかなく剣神にはなれない。

 ・剣王が試験に失敗した場合も騎士団か就職となる。

 ・入学時の試験での結果で仮の剣王が決まる。

 ・剣王入れ替え戦は申請すれば行われるが二人以上の申請者がいた場合は申請者同士で戦い、勝ったほうが剣王と勝負できる。ただしある程度の成績がなければ申請できない。

 ・授業は座学、模擬戦、騎士団との実戦任務の三つがある。

 ・進級しないのでクラスや教室の場所は変わらない。

 ・そして今まで剣帝との模擬戦で勝利し剣神になった者は二人しかいない。


 頭の中で整理し終わったノアは長すぎて少し疲労を感じていた。


「それで剣神の特例のなり方も説明するんですかね?」


 内心もう聞きたくないと思いながら質問する。


「はは……疲れていそうだし、辞めておこう、とにかく剣神会のメンバーの中でギリギリ入学できる君しかこの任務は託せない、何よりエメリーヌとサラは卒業者だからね、これで君に説明することは以上だよ、やってくれるかな?」


 正直疲れ過ぎてやりたくないと言いたいが、先輩には恩があり、その恩を返したいと思っている。

 その先輩ができないなら自分がする事でその恩を少しでも返せるのではないか、そう考えノアは決断をした。


「分かりました、その任務引き受けます」


 そう言った瞬間皆の顔が柔らかくなる。


「ありがとう、流石はコガネが育てただけのことはあるね、入学試験は一週間後、分かってると思うけど君は剣神だと身分を隠して生活しなくちゃならない、いいね?」


「分かりました」


「よく言ったぞ、後輩、流石真剣に教科書を読んで事前準備をしていただけのことはある」


「あらあら~、この任務を本人抜きで勝手にやってもらうことになったのを伝えていなかったんだから、事前準備でも何でもないのよ?」


「……それもそうだな……すまない後輩」


「そうだよ!コガネ!私も伝え忘れたけど……」


 勝手に決めていたことが判明し憤りを感じるが堪える。


「さて……ここでボクとサラの新しい名前を発表しよう!」


「『は?』」


 意味が分からないことを楽しげに言う剣帝とサラに先輩も困惑していた。


「ボクの新しい名前は! エシャレカ・コガネ・ソワーフスだ!」


「私の新しい名前も! サラ・コガネ・アムールフーです!」


 その名前を聞いた瞬間、先輩は青ざめて泡を吹いて倒れた。


「ちょっ! コガネ! 大丈夫?」


「一体、コガネはどうしてしまったんだ……?」


「いや……いきなり自分の名前名乗られたら怖いでしょ……」


 困惑するサラとエシャレカに正論を言う。


「なんで? 好きな男の名前を名乗っただけだよ? ね?」


「そうだね、どうしたんだろう?」


「あらあら~、青春ね〜」


 おかしなことを言う女三人を無視し、先輩を担いで風の当たる場所に連れて行く。


 剣帝護衛組織としての機能を備える剣神会は、王宮の中にあり、そこから近くにある噴水広場に先輩を運んだ。


「起きてください、先輩」


「……はっ! 何か良くない夢というかヤバイ女二人が俺の名前を名乗っている夢を見ていた気がするんだが……」


「いや、それ夢じゃないっす」


「くっ……! 何故あの二人はあんな意味のわからないことをする! 一周回って俺の事が嫌いなのか? そうなんだな? もう分からん!!!」


 錯乱する先輩を落ち着かせる。


「落ち着きましたか? 先輩」


「あぁ……ありがとう、それと改めて悪かったな、報連相をちゃんとしなくて」


「ホウレンソウ?」


「……お前J語ちゃんと覚えてるんだよな……?」


「覚えてますよ、先輩と違ってJ語が第一言語じゃないのでF語とE語しか完璧じゃないですけど……それにどの言語でも通じる用になってるじゃないですか、この国は」


「懐かしいな、お前を拾った時は正直、ここまで凄い奴だとは思わなかったよ……」


「感謝してますよ、先輩には、拾って育ててもらわなきゃ野垂れ死んでた」


「分かってると思うが、俺とお前は家族じゃなく先輩後輩だからな?」


「分かってますよ、自分の家族と上手くいかなかったから家族が好きじゃないんでしょ?」


「……なら、いい、じゃあ学園生活で困ったことがあったら人生の先輩の俺に頼れ、まあ、大学まで出てないから就職のアドバイスは経験不足だがな」


「大学? わけ分からない事言ってないでそろそろ戻りますよ先輩」


 勝手に就職行きだと思われていることは置いておく。


「ああ……」


 そう聞いた後先輩に背を向け、剣神会の部屋に戻ろうとしたが――、


「言うの忘れるところだった、入学おめでとう」


背を向けていて表情は分からなかったが、優しい声色だった。


「まだ試験すら受けてないっすよ」


「まあ、お前ほどの人間なら実力を隠しても入学試験は突破できるだろ、それに俺達剣神は究剣極化があるだろ」


「そうですね……」


「なんだ……その……頑張れよ」


「……まあ、程々に頑張りますよ」


 その後何事もなく、入学試験当日になった。


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