御影一二六の独白 ― 血の王座
夜は静かだ。
しかし、静寂は祝福ではない。
闇の中で、私は自らの血の脈動を聞き取る。
鏡を見る。
私の身体は、不完全である。
背骨は曲がり、脚は長短があり、指の数も揃わない。
皮膚は薄く、血管は網のように浮き出ている。
だが、この不完全さこそが、私の玉座である。
正常な肉体は欺かれる。
弱さを隠すことができる。
だが、私の身体は欺けない。
血の濃さ、血統の純度――
全てがここに現れている。
私の先祖たちは、何百年もかけて血を濃くした。
兄妹、叔姪、母子――
外部の血を徹底して排し、奇形を生み出し、淘汰を繰り返した。
この身体の歪みは、血の深度を物語る証だ。
私は考える。
なぜ人は、血を軽んじ、肉体を価値あるものと見なさないのか。
血こそが真実であり、肉体こそが思想の器である。
制度も法も、倫理も、血の前では無力だ。
私は笑う。
笑いは喜びではない。
理解されぬ悦びだ。
血の純粋さに触れ、血の秩序を知る悦びだ。
新生体が生まれるたび、私は観察する。
泣き声、筋肉の反応、骨格の均整――
それら全てが、次代を占う試金石だ。
淘汰された者は消える。
血の秩序に従えなかった者は、存在の痕跡すら残らない。
この瞬間、私は思う。
「血の王座」とは何か――
玉座に座るとは、肉体を極限まで血に従わせることだ。
血に従う身体だけが、玉座に値する。
私の身体はすでに座している。
奇形は辱めではなく、権威である。
痛みは弱さではなく、血の力の証である。
私は誰にも譲らない。
血の玉座は、私のものだ。
だが、ふと恐れる。
血が濃すぎると、身体が壊れる。
思考も、感情も、血の力に飲み込まれる。
それでも、私は止められない。
止めるべきではない。
血の哲学は、私の全身に宿る。
この歪んだ身体こそが、血の権威の象徴である。
私の血は、思想より深く、制度より永遠だ。
肉体は、命令であり、裁きであり、玉座である。
そして、私はその玉座に座る王である。




