御影の独白 ― 玉座の身体
闇の中、私は鏡を見る。
鏡は、ただの鏡ではない。
この身体の全てを、世界に示す玉座である。
背骨は湾曲している。
片脚は長く、もう片方は引きずるように短い。
指は一本多く、耳は少し折れ曲がっている。
皮膚は薄く、血管が浮き出ている。
視線を合わせると、人は一瞬、息を止める。
これらは欠陥ではない。
生き残った者だけが持つ、血の証左だ。
私は考える。
なぜ、これほどまでに身体が歪まねばならなかったのか。
それは外部の血を拒絶するため。
それは血を濃くするため。
それは、血が玉座であることを示すため。
この歪みが、権威となる。
この奇形が、証明となる。
正常な肉体は、容易に欺かれる。
だがこの身体は、欺けない。
血の濃度、血統の純度、全てを体現している。
私の先祖たちは、血の純化のために近親婚を繰り返した。
奇形を生み出し、淘汰し、選別した。
私はその最終結晶だ。
この歪みが、私の玉座である。
外の世界は知らない。
国家も、制度も、倫理も。
ただ、血が支配する秩序が、ここにある。
私は笑う。
「弱い身体」と呼ばれるものは、消える。
しかし私の身体は、ここにある。
血の力が、肉体の異常を正当化する。
肉体の異常こそ、玉座そのものなのだ。
新生体たちも、いずれこの道を歩む。
痛みも歪みも、全てを受け入れ、耐え、血を濃くする。
その中で、生き残る者だけが、次代の玉座に座る。
私の体はすでに座している。
この奇形こそ、血統の頂点であり、
私は誰にも譲らない。
血は、制度より強く。
肉体は、思想より深く。
私は、血の王である。




