表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/12

四回目のループ

「……忍。……忍。 ……忍 」

下で母さんの呼ぶ声がする。

朝か……

しかし、嫌な夢だった。

俺はふと枕を見た。

枕にどっさり髪の毛が抜けていた。

俺は髪の毛をつかむ。

すると、髪の毛は灰を散らすように消えた。

夢じゃなかった。


4回目……

トラック事故、鉄骨、欄干の崩壊、通り魔。

やはり何かおかしい。


俺はスマホで頭を確認する。

額が悲しく広がっている。

前に撮った写真と今の写真を見比べる。

想像通り4㎝ほど後退していた。


4㎝ もう気付かれるレベルだな……。

弥生ちゃんに嫌われるかな。

ハゲキャラ認定されるかもしれない。

ダメだ。ダメだ。意識をしっかり持たなきゃ。


俺はこのボーナスを、

彼女を救うために、

全力で賭ける。


とは言ったものの。

ボーナス分として、俺に与えられたのは3㎝。

すでに4㎝に達した。

ここからは、一般人のすこしひろめの額だ。

でも弥生姫を救えるのは、俺だけなんだ。


俺はスマホで日にちを確認した。

やはり事故の起こる2日前だった。


俺は学生服に着替え、下に降りる。

どこかの町のマラソン大会に鹿と猪が乱入して、中止になった件を報道していた。

5回目聞くと、心底どうでもいい。


今日は晩御飯は「弁当屋で買ってきて良い」って聞こう。

そうしたら、なにか情報を得れるかもしれない。


まずはテレビを消してこの質問をしよう。

と俺はテレビを消した。


「どうした、テレビを消すなんて珍しい」

と父さんは言った。


「今日の晩御飯、弁当屋で買ってきて良いかな」

と俺は言った。


「どうした。なにか食いたい弁当でもあったか」

と父さんは言った。


「気になる子がバイトしてるんだ」

と俺は言った。


「わっ。それはぜひ買ってきなさい」

と母さんはニヤニヤしながら言った。


「そりゃ。買わないとな。で……メニューはどうする?」

と父さんもニヤニヤしながら言った。


「それは、この子に任せたらどうですか?

その方が会話が弾むかもしれないし、」

と母さんは言った。


「そうだな。じゃあ予算決めて、お金渡してあげてよ。俺ちょっと今日は早めにでるわ」

と父さんはニヤニヤしながら言い、ハゲのメモリーを口ずさみながら会社に向かった。


母さんは父さんを玄関まで見送った。


「父さんは私と出会ってから、どんどん髪が薄くなったの。

きっと私を守るために髪を、

犠牲にしたんだと思う。

あなたも少しおでこが広くなったけど、そういうことなのかもしれないね。

あなたもいい感じになってきてるわよ」

と母さんは、俺の肩に手を置いて、耳元で言った。


母さんは何もわかってはいないけど、ちょっとは何かを感じているんだろう。

そう思った。


俺は、納豆にマヨネーズを入れかき混ぜる。

これを焼き立てのトーストの上に乗っけて食べる。

トーストの上にポテトサラダを乗っけたような味になる。

今日は、この上に一味をふりかける。


歯磨きをし、顔を洗い、髪形をセットする。

髪の毛の抜けたところは、剃ったとか、そういうのでなく。

以前から、そこに毛穴はありませんでした。

と言わんばかりにやはりつるつるだった。


父さんの影響で、俺の頭の中にも松崎しげるのハゲのメモリー(本人による愛のメモリーの替え歌)が流れる。

昔はオモシロイ替え歌だなと思っていたけど、今は歌詞の一つ一つが身にしみる。


俺は学校に向かう。

学校は歩いて20分の距離にある。

いつもの景色、いつもの日常。

すべてが知っている通りに動いている。


学校についた。

この後弥生ちゃんタイムだ。


下駄箱を過ぎると、声が聞こえた。

「高元君。おはよう」

そこには、元気そうな弥生ちゃんの姿があった。


俺はやはり、泣きそうになる。

「えっえぇ~。どうしたの高元君」

心配そうに弥生ちゃんが覗き込む。


やばい。

平常心。平常心。

「ごめん。ちょっと悲しい小説読んでいたから、弥生ちゃんの元気な姿がまぶしすぎて、感動したんだよ」

と俺は言った。


「あぁ、わかるよ。小説とか読むとしばらく引きずるもんね」

と弥生ちゃんは言った。


やはり優しい。好きすぎる。

悲しいけど、声を聞くとまたすこしうれしくなってきた。


その様子を見てか、

「高元君、少し元気になったね」

と弥生ちゃんが言った。


「弥生ちゃんの声を聞いて、すごく元気もらった。ありがとう」

と俺は言った。


弥生ちゃんは、その言葉が意外だったのか、少し驚いた顔をしてけど、

すっと笑顔に戻り、俺の目の前をくるりと回り

「そいつはよかった」

と楽し気に言った。


弥生ちゃんのシャンプーの良い匂いがした。


この時間が永遠に続かせてくれ。

俺はそう願った。


「そういえば、今日一時限目、化学の小テストあるよ」

と弥生ちゃんは言った。


「ありがとう。弥生ちゃん」

と俺は言った。

だいじょうぶ。完全に記憶している。


化学の担当の先生が来て、小テストが始まる。

もちろん、この前受けたテストと同じ内容だ。

さすが、四度受けたテストだけあって、今回はさらに点数が良さそうだ。


俺は、朝のうちにネットで弥生ちゃんがバイトしているであろう弁当屋を突き止めた。

あとは帰り際に、尾行して、しばらく時間を潰してから、弁当屋にいくだけだ。


……


校門からでた弥生ちゃんを俺は尾行する。

気付かれないように、隠れながら尾行する。

探偵にでもなった気分だ。

途中お巡りさんとすれ違う。

「気を付けて帰れよ」

と声をかけられ、心臓が飛び出しそうになる。


そして20分後弥生ちゃんは、お弁当屋さんに入っていく。

ここだ。間違いない。

10分ほどして、彼女がカウンターに出てくる。


あとは、ここに来た理由だ。

俺は近くの商店街で100円均一を探し、適当に足りなくなっていた文房具を購入した、これを買いに来て、たまたまここに来たという体にしよう。


俺は弁当屋に入る。

まずは気が付かない振りをして、

メニューで悩もう。


「あれ高元君」

と弥生ちゃんは言った。


「あれ弥生ちゃん。えっバイトしてるの?」

と俺は言った。白々しくないかな。


「そうなんだ。先生には言ってあるんだけど、

両親が亡くなって、歳の離れた弟と妹がいるから私もバイトしなくっちゃ」

と弥生ちゃんは言った。


俺は少しうるっときた。

欲しいものがあるとかじゃなかった。

弟と妹の面倒を見てるとか、

めっちゃいい子だと思って、ますます好きになった。


「そうか……、頑張ってるんだ。

あの、この店始めてで、うち家族3人、父さんと母さんと俺なんだけど、3人分お弁当が欲しいんだ。頼まれて。

任せるって言われたけど、2000円で買ってきてって言われて。

なんかオススメある」

と俺は聞いた。


「もちろん」

弥生ちゃんはにっこり笑って、メニューを提案してくれた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ