刺される
俺は授業を受けながら、弥生ちゃんを救う手をずっと考えていた。
①トラック
②鉄骨
③欄干の崩落
・違う道を通ってもらう ×
・引き留めて、時間をずらすか ×
両方ダメだった。
もしかして、目的地に近づくのがダメなのか?方角的な。
そういえば、弥生ちゃんのスマホに「バイトいつも通りでいいよ」的なメッセージ入っていたな。
この学校バイト禁止だけど、隠れてやってるのかな。
まぁいっか。なにか欲しいものでもあるのだろう。
それより、バイトにいかなくちゃと急いでいるのだったら、先に知らせたら、たとえば学校に引き留めることもできるんじゃないか。
しかし、どうやって。
俺……勘すごく当たるから。
外れてたら、明日昼飯おごるわ。
的な感じで、確認してもらおう。
それで確認取って正解だったら、20分だけ学校で話したいって。
しよう。
昨日は、帰宅時間に見計らって声をかけて成功した。
今日も同じ戦法で行こう。
……
当日、俺は帰り際、弥生ちゃんに声をかけた。
「もしかして、弥生ちゃん、SCって作家好きだったりする」
と俺は言った。
「SCって、あの汚部屋転生とか、お笑い芸人の転生とか、老兵300人で1万の軍隊相手に戦うとか、無茶な設定が好きな作家さん?」
と弥生ちゃんは言った。
よし、来た。
「そうそう。無茶な設定で、転生チートとか絶対にしてくれない塩対応の神様がよく出る作家さん」
と俺は言った。
「あの人の作品、ほんとオカシイよね。なんか常に予想を裏切るというか、予想を裏切るのが当たり前的な」
と弥生ちゃんは言った。
「結構読んでるの?」
と俺は言った。
知ってるんだけどね。
「投稿サイトに出てるのは全部読んだ」
と弥生ちゃんは言った。
「俺、紙版もコンプリートしてるよ。まだだったら今度貸そうか?」
と俺は言った。
「めっちゃウレシイ。絶対だよ」
と弥生ちゃんは言った。
よし成功。
「今日新刊が出るんだ」
と俺は言った。
「いいな」
と弥生ちゃんは羨ましそうに言った。
「見終わったら貸すよ」
と俺は快諾した。
「約束だよ」
と弥生ちゃんは笑顔で言った。
「うん。弥生ちゃん、ひょっとして、今日急ぎのようあったりする?」
と俺は言った。
「えぇっなんでわかるの?」
と弥生ちゃんは言った。
「なんか、最近すごい勘がするどくって、うん。たぶんね。その急ぎのよう。もう必要なかったりするよ」
と俺は言った。
「さすがに、それはないでしょ」
と弥生ちゃんは言った。
「俺……勘すごく当たるから、一回確認取ってみてよ。
外れてたら、明日昼飯おごるわ。
もし俺が正解だったら、20分で良いから、学校中でSCの話しよ。
同級生で初めてなんだよ。
SCのファンの子と話すの」
と俺は言った。
「面白いね。わかった。忘れないでよ。明日の昼ご飯」
と弥生ちゃんは、メッセージを送る。
1分後メッセージが届く。
(ちょうど連絡しようとしてた。今日はいつも通りでいいよ)
弥生ちゃんは驚く。
「すごい。高元君。正解」
俺はガッツポーズをとる。
「じゃあ。約束通り20分ね。あっちょっと待って」
と俺はいい、自販機に走る。
「これ好きだったでしょ。小テストの事教えてくれたお礼」
と元気印のおしるこを弥生ちゃんに渡す。
「好きなの覚えてくれてたんだ」
と弥生ちゃんは言った。
「あっちょっと貸して」
と俺は弥生ちゃんのおしるこを振り、缶の蓋を開ける。
(ぷしゅ)
「ありがとう。ちょっと手をケガして、開けにくかったから、助かる。それも勘?」
と弥生ちゃんは言った。
「そうだよ。勘だよ。なんか最近当るのよ」
と俺は言った。
自分で言ってて、ちょっとだけ虚しかった。
それから、俺たちは20分ほど話をした。
もうこれくらいの時間ならだいじょぶだろうと、
俺たちは学校を出る。
そのまま本屋に行こうかを思ったけど、今日はやめとこう。
「じゃあ。今日はおしるこありがとう。SCの本、また貸してね」
と弥生ちゃんは手を振った。
俺も手を振る。
弥生ちゃんに男が近づく
「きゃー」
男は弥生ちゃんの背後から、横腹めがけて突っ込む。
「弥生ちゃん」
俺は叫ぶ。
俺は弥生ちゃんの近くにかけより、カバンを振り回し男をけん制する。
アスファルト部分には血痕が残り、
弥生ちゃんは、倒れたまま。
俺は叫ぶ。
「誰か救急車を。誰か警察を」
俺はカバンを体の前に持ち、
通り魔の男をけん制する。
男は血まみれの手を見て、ぶるぶる震えている。
「違うんだ。俺じゃない。
耳元で命令されたんだ。
包丁を盗めと。
あいつを刺せと。
耳元で命令されたんだ。
俺だけど、俺じゃない」
そう言った。
パトカーと、救急車が到着する。
男は連行され、弥生ちゃんは救急車に搬送された。
まただ。
まただ。
まただ。
俺は、事故現場で一人叫んでいた。
俺は現場を見ていたものとして、同行を求められ、話を聞かれた。
弥生ちゃんと、その男は面識もまったくなかった。
と聞かされた。
そして弥生ちゃんはまた目を閉じた。
SNSサイトでは、この話題で持ち切りだった。
特に犯人の男に関しては
「同級生だけどそんな事する奴じゃない」
そんな書き込みが多数あった。
そんな事をする奴じゃない。
耳元で命令された。
いったどういう事なんだ。
俺は呪われているのか。
それとも弥生ちゃんが呪われているのか。
あのお笑い芸人も、女王を笑わせるために、こんなにキツイ思いしていたのか。
俺は死に戻りじゃない。
ハゲ戻りだけどな。




