二回目のループ
「……忍。……忍。 ……忍 」
下で母さんの呼ぶ声がする。
朝か……
しかし、嫌な夢だった。
俺はふと枕を見た。
枕にどっさり髪の毛が抜けていた。
俺は髪の毛をつかむ。
すると、髪の毛は灰を散らすように消えた。
夢じゃなかった。
あっ2回目か……
しかし、今回は髪喰いさまが登場しなかったな。
大人の事情?
いやいや小説じゃあるまいし、
そうか
”あと目的を達成したら、ワシの事。つまり髪喰いの記憶も消える”
って言ってたな。
つまりあれは、1回1回確認を取るのじゃなくって、目的を達成するまで自動的にという意味なのか。
俺はスマホで頭を確認する。
額が少し広がっている。
前に撮った写真と今の写真を見比べる。
だいたい2㎝ほど後退していた。
俺はこのボーナスを、
彼女を救うために、
全力で賭ける。
とは言ったものの。
現実に2㎝額が後退していると、
やめておいたらよかったかな。
と少し思う……。
いや思わない。
弥生姫を救えるのは、俺だけなんだ。
俺はスマホで日にちを確認した。
やはり事故の起こる2日前だった。
俺は学生服に着替え、下に降りる。
どこかの町のマラソン大会に鹿と猪が乱入して、中止になった件を報道していた。
3回目聞くのは、なんか受ける。
今日は俺が先に言ってやろう。
「猪鹿蝶(町)。まるで花札みたいだね」
と俺は言った。
母さんと、父さんは大爆笑。
その直後コメンテイターの、
「猪鹿蝶(町)。まるで花札みたいですね」
と発言が聞こえて、再び二人は大爆笑した。
「忍。
今日はやけに冴えてるじゃないか。
めちゃくちゃオモシロかったから、これ500円やろう」
と父さんは500円をくれた。
こんな展開があったのか。
そして炎上の話はなかった。
ここから考えるに、未来は行動次第でやはり変えれるんだ。
実際、弥生ちゃんは亡くなったが、トラック事故は防げた。
俺は、納豆にマヨネーズを入れかき混ぜる。
これを焼き立てのトーストの上に乗っけて食べる。
トーストの上にポテトサラダを乗っけたような味になる。
歯磨きをし、顔を洗い、髪形をセットする。
髪の毛の抜けたところは、剃ったとか、そういうのでなく。
以前から、そこに毛穴はありませんでした。
と言わんばかりにやはりつるつるだった。
残念ながら、生えてくる様子はない。
しかし猫額が2㎝後退すると、普通のおでこだな。
ハゲというのは、生活習慣が原因だと聞く。
しかし俺は一つの事実を知っている。
ハゲルというのは、髪喰いさまに髪を喰われるということだ。
この事実を知ったら、ハゲ=生活習慣が悪い人ではなく、
なにかを守ろうとしている人たち。
つまり勇者なのだろう。
俺はそう思った。
父さんも爺ちゃんも、あのおじさんも、きっと勇者なのだろう。
俺は学校に向かう。
学校は歩いて20分の距離にある。
いつもの景色、いつもの日常。
すべてが知っている通りに動いている。
今日は父さんの仕事について考えていた。
父さんの仕事は、道路パトロールの仕事だ。
道路で黄色いパトロールカーが走っているの見たことないかな。
あれは、道路巡回、道路巡視、交通管理隊とか、いろんな名前があるんだけど、
道路法に基づいて道路管理者が道路を巡回し、道路の損傷や変状、落下物などを発見し、応急対策などをすることで道路交通の安全を確保するための車。
つまり、あの仕事を父さんはやっている。
父さんはよく言ってた。
「父さんの仕事は人間の身体でいうと、白血球のような仕事。地味だけど、この仕事がないと大変なことが起きるんだ」
と、前はへぇ~くらいだったけど、
今俺も白血球が大切な体を守るように、大切な弥生ちゃんを守ろうとしている。
だから、今ようやく父さんの言ってた言葉の意味がわかる気がする。
学校についた。
この後弥生ちゃんタイムだ。
下駄箱を過ぎると、声が聞こえた。
「高元君。おはよう」
そこには、元気そうな弥生ちゃんの姿があった。
俺はやはり、泣きそうになる。
「えっえぇ~。どうしたの高元君」
心配そうに弥生ちゃんが覗き込む。
やばい。
平常心。平常心。
「ごめん。ちょっと悲しい小説読んでいたから、弥生ちゃんの元気な姿がまぶしすぎて、感動したんだよ」
と俺は言った。ここで小説フラグはつけておかないと。
「あぁ、わかるよ。小説とか読むとしばらく引きずるもんね」
と弥生ちゃんは言った。
よかった。小説フラグは立った。
弥生ちゃんの姿を見ていると、
この子が明日亡くなるなんて信じれない。
俺が絶対に守る。
弥生ちゃんを救えるのは、唯一俺一人なんだ。
そう考えると、またすこしうれしくなってきた。
その様子を見てか、
「高元君、少し元気になったね」
と弥生ちゃんが言った。
「弥生ちゃんのお陰だよ。すごく元気もらった。ありがとう」
と俺は言った。
弥生ちゃんは、その言葉が意外だったのか、少し驚いた顔をしてけど、
すっと笑顔に戻り、俺の目の前をくるりと回り
「そいつはよかった」
と楽し気に言った。
弥生ちゃんのシャンプーの良い匂いがした。
この時間が永遠に続けばいいのに。
俺はそう願った。
「そういえば、今日一時限目、化学の小テストあるよ」
と弥生ちゃんは言った。
「ありがとう。弥生ちゃん」
と俺は言った。
だいじょうぶ。完全に記憶している。
化学の担当の先生が来て、小テストが始まる。
もちろん、この前受けたテストと同じ内容だ。
さすが、二度受けたテストだけあって、今回はさらに点数が良さそうだ。




