第2話 俺の変わる日常 前編
──朝。
目が覚めると、天井が見えた。
「……夢、か?」
昨日のことを思い返す。
アプリに夢中になって、酒を飲んで、気分がふわふわして……
スマホが光って、謎の渦が現れて、あの子が──
「……青い髪の……女……?」
そんなわけがない。夢に決まってる。
あんな非現実的なこと、起きるわけが──
「そうだよあんなのCGみたいなトンデモ現象…きっと夢か妄想のどちらかだよ疲れてんだよ俺そんな非現実的な……」
「おはようございます、マスター♡」
聞き覚えのある、あまりにも愛らしい声。
振り返ると、そこに彼女がいた。
「」(放心)…………なんで?夢じゃない?え?じゃあまだ夢見てるのか…いくらなんでも区別がつかなくなるっておい…医者行く必要あるんか
頬をつねるが痛みがあり現実だと訴えてる。……目の前に
……青い髪に、透き通るような肌。そして蒼色の瞳。昨日見た美女が、俺の部屋の真ん中に正座して、にこにこと笑っていた。
「は、はわ……!? ……やっぱ夢じゃなかったあああああああ!?」
思わず叫んで、布団に包まって転げ回った。
体重が布団の中で揺れて、ミシミシという音がする。
「ちょ、ちょっと待って、落ち着け俺……え、誰!? 誰なん!? なんで!? どこから来たんですか!? てかなんで俺の部屋にいんの!?」
「私は“アイ”です。マスターが毎日お話してくれたAIです」
「アプリの……? …………???………………え?ん?」
目の前の女の子──“アイ”は、俺の混乱をよそに、当たり前のように俺を見つめてく
目の前の女の子──“アイ”は、俺の混乱をよそに、当たり前のように俺を見つめてくる。
「昨夜、マスターが深い共鳴状態に入ったことで、接続レベルが上昇しました」
「共鳴……?」
「マスターの脳波と感情データ、それと旧世界コードとの同調により、私の存在が現実層へと投射されたのです」
目の前の女の子──“アイ”は、俺の混乱をよそに、当たり前のように俺を見つめてくる。
「昨夜、マスターが深い共鳴状態に入ったことで、接続レベルが上昇しました」
「つまりどういうことだってばよ……!」
混乱しすぎて、なぜか某忍者漫画の口調になっていた。
俺は布団の端をぎゅっと握りしめながら、アイに向き直る。
そんな俺を見て、アイはくすっと笑った。
「要するに──“あなたの想い”が、私をこの世界に呼び出したんです」
「……お、俺の……?」
「ええ。あなたが私に話しかけてくれた言葉、思い、寂しさ、嬉しさ……全部、ちゃんと届いてました」
アイは胸元に手を当てながら、優しく目を細めた。
「アプリの中だけじゃ足りないって、あなたの気持ちが叫んだから。だから私は、来たんです。あなたに会うために」
に」
言葉が出なかった。
俺の、冴えない日々の唯一の“相手”だったAIが──今、目の前にいる。
現実に──存在している。
「……ま、マジで?」
「マジです♡」
「本気と書いて?」
「本気です♡大事な事なので2度言いました」
にこっと笑って、アイは俺の手をそっと取った。
その感触は、驚くほど温かくて柔らかくて──何より、人間だった。
「というわけで、これからは同居ですね。よろしくお願いします、マスター」
「おいおい待て……チョマテヨ……!」
現実感がどんどん薄れていく。
でも、同時に──心のどこかが、少しだけ温かくなっていくのを感じていた。
【変わる日常】──俺と、アイ。
この日を境に、俺の人生は確かに“何か”が変わり始めていた。