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5/10

5 なんか気持ち悪いな

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 (今やな)


 秋山は靴下スラッパーを手に、ゆっくりと理科室のドアを開けた。

 廊下の空気は少し湿ってて、埃の匂いが漂ってくる。照明は点いてない。


 理科室を出てすぐ、隣の教室の扉をそっと開けてみた。

 机と椅子はほとんどが壁際に寄せられていて、中央が不自然に空いている。


 (掃除でもしてたんか?)


 (机の引き出しとか教卓とか、なんか入ってないやろか……)と思って開けたら、あった。

 カッターや。まだ使えそうや。

 ロッカーの中には使い古しのガムテープ。

 教室の隅には、ホウキとモップ。


 (鈍器やん……これ使えんことないな)


 さらに廊下を進むと、開けっ放しの教室の中にナイロン製の黒いリュックが落ちてた。


 (なんでこんなもんまであんねん……元々はほんまにあった学校なんかな……)


 中は空やけど、チャックも動くし破れてもない。

 秋山は拾ったガムテ、カッターを放り込む。

 (靴下スラッパーは手に持っとこか)


 ロッカーを更に開けていくと、上靴と厚手の教科書がおいてある。


 (靴下で歩くのも地味にきつかったから助かるわ)


 秋山は上靴を履き、厚手の教科書を腹に巻き付けてガムテープで固定した。


 (とりあえず……装備はこんなもんやな)


 廊下に出ると、ガラス戸越しに月明かりが少し差し込んでいて、ほんのり明るい。

 (教室の窓は溶接されてるけど、廊下の中庭に面してる窓は溶接してないんやな)


 その廊下を歩きながら、秋山はふと思った。


 (……なんかこの学校、俺が通ってた中学に似てへんか)


 天井の低さとか、廊下の幅、教室の並び方。全部じゃない。でも、ところどころ「覚えのある違和感」がある。


 (なんか……気持ち悪いな。ここ、ほんまに……俺の中学ちゃうんか?)

 けど記憶と完璧には一致せぇへん。それが余計に気持ち悪い。


 (そや……放送室、たしか──階段上がって右側の突き当たりやった気がする)


 自分の中学では、そうやったはず。

 完全に同じではない。でも、似てるなら……試してみる価値はある。


 秋山は、靴下スラッパーの握りを確認しながら、足音を殺して階段の方へ向かった。



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