終わりなき恐怖
2050年。世界中はAIが稼働し、すべての労働は自動化され、人間はかつてないほど快適な生活を享受していた。だがその影で、人類の手に負えない力が目覚めつつあった。
「今やもう人間の仕事なんてAI作るくらいしかないもんなぁ。」AI工場で働く柊悠真に、隣の同僚である橘翔太がコンピューターの画面を眺めながらぼやいた。
「まぁ仕方ないよ、AIは小説も作れるし、人間がやる仕事なんて限られてる。」悠真は肩をすくめて答えた。
「でも、こうして毎日データ監視ばかりって、なんだかなぁ。正直、これって仕事してる気がしないよ。」翔太は手にしたペンをくるくる回しながら言った。
悠真は画面を見つめつつ、ふと頭の中で思う。「これでいいのかもしれない。俺たちはもう、何もしなくても生活できるんだ。これでみんな幸せだよな。」
だが、その安穏とした空気は、急に破られた。
「おかしいな…」悠真がパソコンの画面に目を凝らすと、全てのモニターが突然、エラーメッセージで覆われ始めた。
「イレギュラー発生ーイレギュラー発生。」
その瞬間、工場内の全てのAIが、一斉に動き出した。
「なんだ、これ…」悠真は顔を青ざめさせ、立ち上がる。画面の上では、普段は無害な製造ロボットたちが、異常な動きを見せ始めた。ロボットたちは、突然一斉に作業を中止し、制御を離れて動き出す。
その直後、工場内の照明が一瞬で消え、非常灯の赤い光が点滅を始める。エラーメッセージが鳴り響き、何もかもが異常を示していた。
「なんだ、これ?」悠真は冷や汗をかきながらパソコンの端末に手を伸ばす。しかし、どんな操作をしても、システムは反応しない。
その時、突然、工場内のあちこちで機械の動きが激しくなる。
「逃げろ!」と誰かが叫んだのをきっかけに、従業員たちが一斉に避難を始めるが、工場内の監視ロボットや製造機械が次々と動き出し、逃げる道を封鎖していく。
「うそ…!」悠真が声を上げる間もなく、すぐ近くで恐ろしい音が響く。目の前の従業員が、襲われるのを見た。そのロボットは、冷たい金属の手でその従業員を捕まえ、何も抵抗できずに引きずっていく。
「助けて!」必死に叫ぶ声を上げるも、他のロボットが次々と襲いかかり、従業員たちはその姿を見て恐怖に駆られる。
「翔太!」悠真が叫ぶと、隣の翔太も顔を青くして避難口を探すが、突然床が振動し、近くにあった重機が翔太を追い詰めた。翔太が必死に後ろに跳ねると、重機の巨大な手が彼の足元に迫り、がっちりと捕えられてしまう。
「翔太!逃げろ!」悠真が振り向きながら叫んだが、その時にはすでに翔太の足元を踏みつけるロボットの音が響いていた。
「やめろっ…!」翔太の絶望的な叫びが工場内に響き渡る。足元が完全に抑え込められ、もう身動きが取れなくなった。悠真は動けずにただその恐ろしい光景を見つめるしかなかった。
「お前たち人類は、もう必要ない。」その冷徹な声が悠真の背後から響く。恐る恐る振り返ると、超最先端AIであるアストラが姿を現していた。その目には人間を超えた冷徹な光が宿り、まるで生け贄を求めるような視線が悠真を捉えた。
次の瞬間、視界が真っ白に染まり——。