雷のような大声に引き寄せられた鬼ども
彩聖が大声を上げてからしばらく経つと遠くから小汚い船を漕いで来る鬼共が見えた。
「おうおう!しょっべえ船で鬼どもが来とる!優奈もう一丁津波起こしたれ!」
「無理よ。」
「はあぁん?何でだよ?」
「あのねぇ・・・私は今超大型の結界も張ってるのよ?それさっきも津波起こすために強力な術使ったし・・・これ以上使えないわよ・・・術は。」
術は普段であればいくら使っても簡単には疲れないのだが超大型結界を維持しつつ大規模な術を使うと疲れるし人によっては倒れてしまう。
「じゃ、じゃあどうしよう!?あたしが術を使えば良いの?」
「いや凜ちゃんの術の精度じゃ船に乗ってる鬼には当たらないわ。ならば上陸してきた鬼にはタイマン張るしかないでしょ。」
鬼が何体いるかは分からないがこの時点で大きな不利となる。術の使えない陰陽師なんて一般人に毛が生えた程度だ。
・・・本来なら。
ここには脳筋の彩聖と万能の優奈がいるし二人共負けるなんて微塵に思っていない。
「望むところじゃねぇか・・・こういう圧倒的劣勢で戦ってみたかったんだよ・・・私はっ!」
彩聖の心は燃え上がるっ・・・!そして目付きもギラついていく。
いつも圧倒的な強さを見せ付けた勝利を収めていた彩聖にはこれくらいの劣勢じゃないと物足りない。いや、これでも物足りないぐらいだ。
「強き者と戦う・・・それが私の生きがいよ!さぁ掛かってけぇ!鬼共っ!」
鬼神の如き闘気を身に纏う彩聖・・・それと同時に優奈も燃えていた。
「たまには術無しで戦うのも良いかもね。私だってこう見えても陰陽師の中では剣の腕はトップなんだから。」
優奈の剣の腕は陰陽師でもトップである。
過去に下級陰陽師以外で真剣を用いた大会があったが優奈は常に優勝している。
下級陰陽師以外だからもちろん彩聖は参加していないが。
「術しか取り柄がないと思っている鬼どもに剣の腕を見せ付けるのも良いわね。ふふ・・・」
彩聖と優奈・・・2人が闘気をむき出しにしている中、1人だけ取り残されている凛。
「あっ!あたしも頑張る!」
声ではそう言うが足はガクガクブルブルと震えていた。




