港に行く前にこのハチロクで峠を攻めたろっかなぁ〜
彩聖のお母さんから車を借りて優奈はハンドルを握る。
優奈は基本バイクに乗っており車って滅多に乗らないのだが3人を連れて行くためだから仕方なく車を運転する。
「ふーん?なかなかいい車じゃない?ブレーキの効きも良い。車を殆ど運転しない私には運転しやすいわね。」
少し公道を走ってこの車の良さを確認した優奈は徐々にスピードを出す。
この時間は車が少ないからスピードを出しやすい・・・昼間ならこんなにスピードを出したら危ないが今なら良い・・・かな?
せっかくのハチロクだから峠攻めるつもりでスピード出しても・・・エエやろ!
「優奈、スピード出しすぎだ。まるで峠でも攻める様な感じだぞ。」
「ん・・・ごめんね。このハチロクに乗っていたら何故かスピードを出しみたくなって・・・。」
今の優奈の気持ちが分かる人いるだろうか?
良い車に乗っているとスピードを出してみたい、峠攻めてみてぇ〜って気持ちになるの分かる人いるだろうか?
車は時折運転する人の人格を変えるというがそれはきっと魔性の車なのだ。
アクセルが何故か踏み込みやすい、スピードを出しやすい。恐らくそういった単純なものが人の人格を変えて走り屋に変貌させるのだろう。
「ったく。走り屋の真似事なんてしていたらいつか事故るから止めておけよ。ウチの親父は若い頃峠を攻めていたら事故って車の運転怖くなって運転しなくなったぞ。」
彩聖のお父さん・・・現在は冴えない禿げたおっさんだが若い頃はイキリ散らして峠を攻めたりしていた。
だが事故で大怪我をしてから車の運転恐怖症になったのだ。
「あ、その話知ってる〜。なんか前にあたしのお母さんから聞いた気がする。いい歳こいて車の運転出来ないのもなんか恥ずかしいよね・・・」
「だろ?親父が運転しないから私は子供の頃車でどこかに旅行した記憶がねーんだよな。だから優奈もスピードを出すのは程々にしろ。あとまっすぐ港に行けな?峠なんて攻めさせんけぇの!」
「もうっ!そんな話するとめっちゃ攻めたくなるじゃん!峠攻めるのってどんな感じなのか体験したいじゃない!」
「ならん。もし事故ったら鈴衛のおっさんにも迷惑かかるからな。それに私達の仕事は鬼退治だ。余計な事をして疲れる必要はない。」
彩聖に真顔で説得されると優奈は少ししょんぼりする。よほど峠攻めてみたかったのだろう。
「しょうがないわね・・・分かったわよ。今日は黙って鬼退治に行くわ。」
「それで良いのだ。」
皆さんもうっかりスピードを出して峠を攻めないようにしましょう。




