うわっ!傘のお化け気持ち悪すぎぃ!
彩聖の神社から歩いて30分・・・傘の妖怪が出没したとされる山に着いた。
「ほんまにまたこの山か!いつもこの山で妖怪が出てきやがる!まぁ近いから私とはしては嬉しいがな!ハッハッハ!」
彩聖や凛の一族はこの山には小さい頃からお世話になっている。
「程度に妖怪出るし、そんなに強くないから練習には丁度いいってあたしのお父さんも言ってたしね」
彩聖の親父も凛のお父さんも若い頃はここで練習していたし妖怪討伐をしていた。まぁ戦いの才能ないし妖怪が怖いから就職してから1度も妖怪と戦ってないらしいが・・・。
「はぁはぁ・・・アンタたち歩くの早い。」
少し遅れてきた優奈。着た時点でヘロヘロの疲れ切ったご様子である。
「30分も歩くなんて・・・アンタたちいつもこんなに歩くの?」
「あぁ、状況によっては1時間も歩くぞ。」
「マジ?よくやるわね・・・。彩聖ちゃんも凛ちゃんも16歳になったらバイクの免許取りなさいね・・・」
あまりにもしんどくて優奈は近くにあった大きな石に座る。
「別に私達に合わせて歩かなくても良かったんだぞ?バイクで先に行けば良かったのに。」
「あのねぇ・・・この中で1番お姉さんの私だけが楽なんて出来ないでしょ。お姉さんなんだから年下たちを引率するのは当然でしょ?」
「引率出来て無くね?歩くのめっちゃ遅いのに。どっちかと言うと付き添いが正しいよな。」
「ぐっ・・・!」
なんかよく分からないが優奈は少し屈辱を感じた。
自分がお姉さんらしくしたいのに上手くお姉さん出来ていないのが屈辱に感じた。
「ま、まぁ良いわ。そんな事より彩聖ちゃんと凜ちゃんはいつ誕生日?」
「私は8月だな。8月5日。」
「あたしは7月7日!七夕の日!」
「へぇ、じゃあ凛ちゃんはもう免許取りに行けるわね。自動二輪は誕生日の2ヶ月前から教習所に行けるから。」
「へ?そうなの?」
「うん、卒業検定は誕生日が来てからじゃないと無理だけど教習所に通うのは2ヶ月前から出来るわ。彩聖ちゃんも来月から免許取りに行きなね?」
「当然だ。私がバイクの免許取ったら県内どころか中四国の妖怪を皆殺しにしてやるからな!ハッハッハ!」
バイクを使って県外にようかい討伐の遠征を想像すると彩聖は笑いが止まらなくなる。
「ハイハイ、すぐ調子に乗っちゃって。」
バイクの免許の話をしていたら凜はふと思う・・・
「あたし、免許取るお金無いかも・・・ていうか全く無いと思う!」
「そらそうよ。お前全然妖怪討伐出来てねぇもん。なんなら私が貸したろか?金なら腐る程あるぞ。」
「彩聖ぇ・・・ありがとう!貸してください!!」
「コラ!お金の貸し借りは禁止!そういうのは親に頼めば良いじゃない。」
優奈の家は医者と神社をやっている名門で当然医者だからお金持ちである。しかも中級陰陽師は陰陽師という団体から毎月お金が支払われている(活動費という名目で)。
しかし彩聖たち下級陰陽師は小さな神社や寺を持っているだけで安月給で働かされている。彩聖の親父に至ってはボーナスなんかない仕事だ。
そんな貧乏な家庭には子供の免許を取るためのお金がポーンと出てこないのだ。
「おいコラ医者ァ!私達貧乏人に喧嘩売っとんのかァゴラァ!」
優奈の何気ない一言に彩聖はブチ切れ手怒鳴り散らした。金持ちはすぐに「親に〜」とか言うから気に食わない。
「あ、や、ゴメン。ゴメンね?」
流石に優奈も迂闊な事を言ってしまったと思い謝るが一度キレた彩聖の怒りはそんなんでは鎮まらない。
「彩聖怒らないで!あたし気にしてないから!」
「私が気にしとんじゃアホっ!」
山に響く怒鳴り声、凛と優奈は彩聖の怒りをなんとか止めたいと思うが下手な事を言ったら殺されてしまう。
なら実力行使で殴って気絶させるか?今なら陰陽師としての能力はトップレベルの優奈がいる。しかし純粋な喧嘩は間違いなく彩聖の方が上。
彩聖はナンパしてきた反社会的勢力の兄ちゃんの集団を無傷で壊滅させるような喧嘩能力がバグっている傑物。
そんな傑物であり怪物である彩聖を優奈で止めることが出来るのだろうか?この中学生みたいなツラのお姉さんに出来るのだろうか?
凜がそんな事を考えていると彩聖の目が凛の後方の物を見ていた。
「?」
凜が振り返って見るとそこには大量に湧いてきたから傘お化けの集団であった。
「ギャピー!!!気持ち悪い傘ぁっー!!」
思っていた10倍はキモいから傘お化けを見て凜は絶叫。
「おっしゃ!1体に付き2万円の妖怪じゃ!彩聖ちゃんボーナスゲームスタートしましたー!」
興味の方向が傘の妖怪に向かって彩聖はテンション爆上げで戦いに行く。
「良かった・・・彩聖ちゃんの怒りが収まって。」
ふぅ・・・と一旦落ち着いた優奈は小太刀を取り出して妖怪に向かっていく。




