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路線バス運転士問題に対しての一考察(おっさんの独り言) その2

 ご要望にお応えして、元・路線バス運転士だった僕が『路線バス運転士不足問題』について細々と書いていこうと思います。



 なお、標題のとおり「その2」なので、最初のを読むことを推奨しておきます。

https://ncode.syosetu.com/n1129im/





 ・そもそも、何故に路線バス運転士が足りないのか?


 原因を上げるとすれば『お客様からの要望と現実との乖離』と『ビジネスモデル自体が崩壊してる』と『年齢分布のムラ』だと思います。




 ☆お客様の要望


 路線バス運行会社は原則営利企業です(市営は除く……のか?)。


ということはお客様(顧客)の要望があれば始発や終バス(※)、路線も変わります。まさかお客様が望まない路線を固持したりしてもただただ赤字を垂れ流すだけでしょう。需要が多い路線ならバスをぱんぱん走らせるし、始発や終バスも変わったりします。


※終バス:最終便のバス……いわれんでもわかるか



 そんな中、お客様の要望……というより苦情に近い提案といえば、


「始発の電車に乗りたいのよ!」

「通勤時間帯にバスが混んでて乗れない! 増発しろよ!」

「県庁まで行くバス、延伸してくれ!」

「運賃安くしろよ! 市から補助金貰ってんだろ?」

「飲んで帰るにもバスが無いじゃないか! お前らは客のニーズを(くどくど……わふー)」


と、こんな感じです。ぶっちゃけこんな苦情はゲップが出るほど会社に届きます。




「バス停を家の前に欲しい」


 夜中にバス停を少しずつずらしてってネタ、よくアニメや漫画でありますよね。しかしの実際話では、家の前にバス停があると「バスがうるさい」と逆に苦情が来るんです。もともとバス停があった場所に新築で家を建てた人が文句を垂れる……こんなジョークみたいな話も結構あるんですよ。


 バスの騒音についてですが、特にマフラーの排ガス浄化装置が作動すると故障の原因となるためエンジンが切れません。赤ちゃんが寝たばかりなのにうるさいって苦情が来ましたが、事情を説明しても納得してくれませんでした。(故障したら弁償してくれるのかしら……?)


 他にもバスは10トン以上もの車重があるので、側道を通るたびに家が揺れるほどらしいです。ですから、バス停を家の前に持ってきてほしいより家から離してくれって苦情が多いんですよ。



 で、マジ●チレベルで苦情を上げる人(これは基本的に1路線に必ず一人は居る)のために、とある家の前では最徐行したりしてヘイトがこちらに向かわないようにしてるんです。ですので路線バスに乗っていて不思議と同じところで減速すると思ったなら、そこら近辺の家にマ●キチが居るかもしれません。(ほかにも事故惹起箇所として減速してる場合もありますが)



閑話休題。


 強い要望があれば、ダイヤ改正時に始発終バス、路線が変わったりします。これを業界用語で『改善作業』と言ってました。で、実際に『改善』されるのか?



「ダイヤ改正してから不便になったじゃねーか!」

「なんだよ勝手に減便してんじゃねーよ! 始発終バスの時間変えるな! おめーらの都合を客に押し付けるな」

「運賃安くしろよ、ボッタクリだろ!?」


と、まぁ苦情がパンパン飛んできます。



 というのも、かの働き方改革(通称・2024年問題)のおかげで勤務割をする際に無理が出てくるのです。というのも夜に運行が終わってから、翌日の運行までに最低でも9時間以上の時間を空けなきゃいけないなんて、運転士の勤務割を作る人(業界用語で『操車さん』と言います)は頭が捩じ切れるほど悩むんですよ。


 そりゃ深夜の仕事って好き好きが別れます。僕は好きでしたが、「酔客がうぜぇ」「吐かれて車内が汚損し、掃除してたら退勤時間が1時間遅くなった」「パリピがうぜぇ」と嫌いな人は一定数居ましたね。




 ☆ビジネスモデルが崩壊


 運転士の勤務割について簡単に説明をするなら、


  ●早出(はやで・午前出社)

  ●遅出(おそで・午後出社)

  ●長線(ながせん・一日通しの仕事)

  ●中休(ちゅうきゅう・中休みが存在する勤務体系)


という4種類を、年間スケジュールに合わせて仕事していくのです。しかし、有給休暇を取得したりすると、空き交番に併せて仕事を当てはめるのが『操車さん』の仕事です。


 なお、中休ってピンとイメージできないかもですが、要は

『路線バスで需要が高い登下校時間・出退勤時間に運転士を走らせる。ただし閑散時間は勤務外なので、仮眠室で寝ていても、ちょっくら遊びにいっても、はたまたパ●ンコへ行っても可。ただし飲酒と遅刻は絶対不可』

って交番なんです。最近ではこの勤務体系を採ってる路線バス運行会社は減ってますが。


 僕はこの中休って仕事は3時間程度昼寝出来るので好きでしたね。



 で、僕が勤めていた路線バス運行会社では運転士は『1年単位の変形労働時間制』でした。つまるところ『1年間はこういう交番を繰り返して勤務してくださいね』となっており、とある日の労働時間は●時間、翌日は▲時間……、お盆時期のこの日はこういう仕事と決まっているわけです。ですから前述通り、年間スケジュールに合わせて仕事をするって表現となるわけです。


 しかし路線バス運行会社というのは恐ろしいところです。

 こういう勤務割を本社のスーツ組(幹部および幹部候補)が作るのですが、『欠員』を必ず作るのです。



 ん? どういうこと? って思われるかもしれません。


 簡単に言えば、『定員24人でこういう交番を繰り返して勤務してくださいね』って話なのに実際に居る運転士は20人と、4人ほど欠員をわざと作っておくのです。


 はい? どうして? って思われるかもしれません。


 さらにざっくり簡単に言えば、『その4人の欠員を、在籍する20人に【時間外労働】としてやらせてね?』と会社側は考えているのです。


 路線バス運転士のビジネスモデルとしては、

『基本給クッソ安い』

『手当マシマシ、時間外労働でコキ使う』

という労働スタイル・ビジネスモデルが完全定着しているのです。


 というのも、路線バスの運転士なんかに基礎学力なぞ必要ありません。高等教育すら不要で、大型自動車二種免許を持っており、路線と運賃収受とその他バス車載機器のイロハさえ覚えればバカでも出来る仕事なんです。そのため中卒で路線バス運行会社に入社して規定年齢まで車掌などをさせ、運転士として育成するビジネスモデルが過去にありました。今では少なくなりましたが、ね。何せ今じゃワンマンバスが殆どです、車掌が居る路線バスなんて皆様は『となりのト●ロ』でしか見たことないんじゃないでしょうか?


 今では高卒採用された子たちは方や窓口業務、方や本社勤務などを経験して適正年齢となって運転士採用されております。他にも『観光バス事業の終焉』にて余った(年かさ増した)バスガイドを運転士転換することもしてきましたね。

※「やはりバスガイドは若くないと!」という顧客の意見を取り込んだ結果でしょうかね。フェミニスト様、お仕事ですよ!



 この『基本給クッソ安め』って、びっくりレベルで安いですよ。

 何せ僕が路線バス運転士として採用された頃の基本給なんて15万ありませんでした。その前の仕事(東証一部上場の某会社)では大卒新入社員の基本給で(当時)27万でしたから。



 基本給クッソ安いけど乗務手当や中休手当、そして時間外手当が付くことでようやく人並みの生活を送れる程度の収入となります。つまり路線バス運転士はキリキリ働かないと生活が成り立たないのです。


 ただ、本社で働く社員たちはもっと悲惨。路線バス運転士は手当が手厚く付きますが、通常社員は時間外勤務手当すらあやしいのです。ただ、役職が付くようになると給与は跳ね上がっていきますが。「若手は修行の時代」なんて甘言でこき使うのですが、生活がままならなくなって逃げてく子もいます。とっとと寿退社する子もいます。つまるところ役職の付いた社員は『よっぽどのドMか、バカか、鍛えられた社員か』と言われる始末です。


 ……で、まぁ、有能な役職者ならまだ良いのです、ドMかバカが上司(うえ)だと、その課は悲惨ですよ。僕が最期に所属したトコなんて上司がマジ●チでしたし。



『女に超絶甘く、男には強烈なパワハラ野郎』

『ただし、言い返してくるような強硬社員にはヘコヘコするか、コソコソとGのように。しかし評価は気分で下げる』

『上司として知り得る緊急連絡先を使って、若手女性社員に恥ずかしげもなく“恥ずかしい年賀状”を送り付ける(※)』

『男性社員は奴隷、女性社員の奴隷』

『女性社員からストーカー被害を出される』

『余所の課に遊びに行くという情報が光速を超える。そして女性社員たちはどこかへ隠れる』


と、この上司のネタだけで物語(ノンフィクション)が練れる程ですから。(ぶっちゃけ思い出したくない書きたくない)


※恥ずかしい年賀状

『(警備装置の写真を使って)君のハート♡にロックオン!』

『(ダサい色の無限FITに寄りかかって)君のハート♡にずきゅーん!』

と送ったそうで。

嫁入り前の娘になんじゃこりゃ、見てて恥ずかしい年賀状を何故送ったんだと、その親が本社に問い合わせるという。それで役職者(次長)なのだから、会社の程度が伺えるだろう。

 なお、男性社員に年賀状は届かないぜ? 要らんけどな。




 運転士を増やす気がない会社です。


 人員を増やせば時間外労働する機会が減るため、一部の運転士は『生活できない!』と文句を垂れるでしょう。それに僕が勤めていた路線バス運行会社は『縁故採用』のみでした。専用の履歴書には『当社に知り合いや親せきは居ますか?』と問う項目があるぐらいでしたから。それに採用試験の面接でも問われましたから。そうすればおのずと尻すぼみになっていくのは明白でしょう。

(今頃になって縁故採用を辞めたそうです)


 そして運転士の高齢化により、定年退職で離職する人は多いのはどこの業界も一緒です。どんどんと年かさを増やして定年退職していくわけです。



 ただ路線バス運行会社が抱える闇の一つに『路線バス運転士の年齢分布問題』が発生してきます。




 ☆年齢分布のムラ


 路線バス会社って景気とリンクして定期的に経営危機が訪れるようで、その際には募集を控えたりします。少なくとも僕が居た路線バス運行会社は2000年前半に経営危機となり、その時期に採用された路線バス運転士は非常に少なかったそうです。

(確か2006年頃に経営改善が見え、久しぶりに運転士の中途採用が行われた……ハズ)


 そして世界の景気とリンクして経営状況で採用を増やしたり減らしたりしてましたが、2020年に『あの世界的病気』で中途採用が完全に止まったのです。



 あの頃は本当に悲惨でしたよ。

 路線バスを走らせても運賃収入はカラッケツ、客からの問い合わせといえば『定期券の解約』でしたから。


 当時の安倍首相が学校を強制休校させたため、持ってる定期券解約にやってきたお客様の対応たるや、ひどいものでした。何せ金庫に本社から来た所長が払戻金として100万詰めておいてくれた筈が営業終了時にはカラッケツになってたのですから。


 ……そんななか、定期券期限がとっくに過ぎたものを持ってきて


『これは世界的なことだから! その期間は娘は乗ってなかったから! 払い戻せ! 国が決めたことを何でお前らは守らない! 払い戻す義務はあるだろ!』


と訳の分からんことを言い出した客が居ましたね。



 ンなこと言ったって、バスは休まず運行してたのに訳の分からないことを、そう思いながら冷静に応対してたらブチ切れて僕に殴りかかってきました。



 やはり、客はクソだな。


 結局、こちらでは期限の切れた定期券払い戻しの対応はしておりません。期限が切れる前に連絡するなりできたのに、しなかったそちらに問題ありますよね? それに払い戻し規定は定期券新規購入時に冊子でお渡しした文章が当方で出来る最大限の対応です。それでも承服しかねるなら本社なり好きな所で自身の訴えの正当化をしてきてください。それよりも警察呼びますね、と応対しましたが

➡顔面ブン殴られた僕は何故か無傷、それよか客が拳をケガしてたわ。……ざまぁ。




 閑話休題。


 5年後の路線バス運転士の勤務状況って年齢分布を考えれば分る筈なのに、本社サイドは何を考えてたのでしょうか? 結局、縁故採用に拘り、経営状況によって採用人員を場当たり的に考えた結果、人員は足りなくなるんです。


 それどころか過去に採用状況を絞ったりしてたら年齢分布にムラが出ますよね。


 僕より一回り上の世代人員が極端に少ないのです。

 この一回り上というのが、言わばバブル期に新卒として社会に出た世代です。

 


 社会に金がうなり声をあげてた時代、世界(日本だけ?)が狂喜乱舞してた時代、何が悲しくて基本給激安の路線バス運転士になるでしょうか? もっと良い色を付けてくれる企業体に転がり込むでしょう。


 ですがバブルが弾けて不景気に陥れば、仕事にあぶれる人も出てくるでしょう。しかしそうなれば通勤で路線バスを利用する人も減り、買い物もちょっと遠出してデパートより近場のスーパーとなるでしょう。結局、路線バスでの運賃収入が減り、あぶれた人たちを掬うことはしないでしょう。


 と、日本はバブル崩壊後には「失われた30年」とか言われてますが、その30年って時間の中でITバブル崩壊だったりリーマンショックだったり東日本大震災だったりと経済状況が落ち込む事が起きてます。そのたびに採用人員を絞ってるのです。あと、僕が居た路線バス運行会社は独自ICカードを作り、それの開発費で会社が軽く傾いたことがありました……あほか。



 人員にムラがあると、その中の「多い年代の人員」が辞めてく時に「運転士不足」が発生するのです。今は団塊の世代が一気に定年を迎えてるため、人員が足りなくなってます。あと十数年後、つまり僕が定年退職するような年頃になるときっと、また運転士不足と言い出すでしょう。


 てか、それなら人員分布を基にどうして採用人員を確保してたりしなかったのでしょう?



 ここからはもう少し突っ込んだ「路線バス運転士って閉塞感満載な村」の社会の話です。






 ・限界集落によく似た、路線バス運転士の業界


 路線バス運転士の給与や勤務体系の話をしてきましたが、果たしてこれでバス運転士になりたいと思う人は居ると思いますか?


「いや、それでもあれだけ大きなモノを運転したい! お客様に喜ばれたい!」


 夢を見るのは自由ですが、現実はシビアです。



『田舎暮らし・スローライフ』って耳触りのいいフレーズだと思いません? 僕は、なろう小説では好きなジャンルなのでよく読ませて頂いてますが、大体は主人公が何らかの手段(神からのギフトが多いなぁ)で自ら開墾し、切り開いてスローライフしてる作品が多いと思いません?


※もしこの僕の話を読んでて、『実は僕も田舎暮らし系やスローライフ系の小説を書いてるんですよー』って方、感想欄にアドレス置いて頂けたら喜んで読ませて頂きます。なんでしたら感想もお書きしますね(笑)



 しかし、現実の田舎暮らし・スローライフで夢をキラつかせた結果、田舎独特の習慣についていけず都会へ戻っていったって話、枚挙に暇がないと思いませんか?


 それと同じ。

 路線バス運転士って世界は、そのような『独特の習慣』が蔓延ってるのです。




  ☆組合活動という闇


 これは先に書いた拙著『路線バス運転士問題に対しての一考察(おっさんの独り言)』にも書いた通り、よくわからん活動に付き合わされるのです。


 労働者の組合って、『(悪徳な)使用者に対抗して労働者同志結束しよう』というのが根幹だと思うのです。


 確かに一昔前まで『労働法? なんぞそれ? おいしいの?』ってのが当たり前でした。かくいう僕も某食品会社時代なんて『月曜始発の電車で出勤、日曜はおジャ魔女どれみ見て、いいとも特大号を見終わってから退勤』って生活でした。あ、途中からナージャ、そしてプリキュアになったなぁ。その間会社で寝泊まりし、(デスク)の一番下を冷蔵庫に改造してビールを放り込み、上司が居なくなってから銀の弾丸(スーパード●イ)をぶち込み働いてたぐらいですから。

※共感してくれる人は居なさそうですが



 あの頃は月に300時間も超過労働(オーバーワーク)してたんです、目が覚めたら主神が居て剣と魔法の世界に転生させてくれねぇかなぁとマジで思ったぐらい。しかし現実は、給与明細見ても60時間しかついてないんですよ? 今そんな事やってたらブラック企業と呼ばれるでしょうが、あの頃は『24時間戦えますか?』と真面目に問いかけられたんです。時代がマジ●チ。


 こんな過酷労働しているのに、某会社は労働組合の結成を禁止してました。あれ、憲法28条っていつの間に変更されてたっけ? やっぱ引出を冷蔵庫に改造してビール隠してたからかしらん? 始発出社の際、1週間分の酒を会社に持ち込んでましたね。(500ml缶を12~18本、ウィスキー1本)



 閑話休題。


 こんな過酷労働させてるような会社なら、労働環境改善のために労働組合を作る事は構わないと思うのです。それよか、労働者は結束して悪質な使用者と戦うのは全く問題ないと思うんです。


 しかし、『政治活動とくっつける』のは、正直頂けない。



 労働組合の活動を傾聴してポピュリズムな政党が声を上げる、まぁこれなら納得します。しかし、PRU(私鉄総連)なんかは社●党や立△民▲党といったポピュリズム政党とずぶずぶです。配下の労組に(労働者の思想の自由をガン無視して)選挙応援させたりするのは、なんかおかしいと思うのです。


 労働組合と政治活動って紙一重の関係性だと思うんです。しかし、ずぶずぶになってるならその労働組合の主目的は何なんだ? と問いただしたくなるのです。



 ……ほら、限界集落の町会活動と似てません?



 古くから住んでる住民たちは、過去にあった『子ども会・青年団・壮年団』を経験しており、その土地独特の町会活動には馴染みがあると思うんです。しかし、地域おこし隊や都会暮らしに疲れてスローライフを求めてきた人たちにとって、その町のやり方に違和感を覚えるのは無理がないと思うんです。自分たちで新たな風を、そう意気込んで新たな行動を起こした途端に『やっぱ余所者は』と思われるのです。


 限界集落は、まるで死を待つ末期患者です。

 きつい言い方ですが、本気で限界集落を改善するなら本気で社会変革させないと不可能です。土佐市であった地域おこし協力隊のカフェ問題を調べていくと、そういう結論しか出てきませんでしたね。



 労働組合でも同じ。

 若手労働者(※)は『青年部』というのに入り、様々な組合活動を経て勉強し、後々の労組幹部を作り上げていきます。もちろん、その『勉強』は左傾化しまくってるのは言うまでもありません。何せ燦然と輝く某ポピュリズム政党とずぶずぶなんですから、講師だって傾いてます。


※若手労働者・青年部

 僕が居たトコでは「30歳まで」らしいです。他にも女性部と併せて『青年女性部』と称する場合もあるようですね。しらんけど。



 結果としては労働組合には熱心な人間と冷めた人間が混在します。熱心な人間は左傾化しまくり、ヤバい奴は党員にまでなってる輩もいました。そんな中、中途採用組で青年部経験のない僕らは冷めてます。むしろ労働組合は何をしてるのか興味すら抱かないのもいるぐらい。ただ職斗長(※)に言われて春闘がんばるぞーと嬌声をあげるために決起集会に参加させられるわけです。もちろん、集会参加は自主性無し。完全に動員……。


 しかし自らの意思で組合を辞められないよう仕組まれてる世界なので、『嫌なら辞めろ』が成立してしまいます。労働者としての死、ですね。


※職斗長(しょくとうちょう・職場闘争委員長の略称)

 営業所ごとにいる、労働組合の代理人的立場の人。その営業所ごとの選挙で選ばれた人で、毎月の労組会議に出かけている。なお職斗長は『労組活動』が専門なので、暇なときは基本的に職場で麻雀ゲームをしてました。うらやましいとは思いませんでした。




  ☆派閥の闇


 先ほど『よっぽどのドMか、バカか、鍛えられた社員か』と、事務職を基本としてる社員の話をしましたが、路線バス運行会社には大きく3つの派閥が出来上がります。


  ●事務職を中心とした大卒社員(俗にいうエリート族、幹部候補)

  ●高卒で入社し、路線バス運転士に転換した社員

  ●中途採用で路線バス運転士となった人


 別にこの3つ、いがみ合ってる訳ではありません。しかしこの3つには歴然とした差があります。


 まず、偉くなるのは大卒社員です。僕と同時期に入社した子がいつの間にか課長職待遇になってました。仕事ぶりを評価されての結果でしょうが、待遇があがっていくと態度が横柄になっていきましたね。まぁ、役職が人を育てるのかどうなのかは言及しませんが、彼にとっても僕は所詮ただのバス運転士だったんでしょう。



 組合活動で評価されて労組専従となるのは、高卒入社組です。路線バス運行会社ですから、書記長などは元・路線バス運転士がなってたりします。


 え? 元職なの?

 そうなんです。組合活動なんて仕事の片手間になんか出来ないので『労組専従』として活動するんです。だから元・運転士。そうなると会社からは働いてないと見做されるため、給料分は労働組合費から支払われてます。しかし会社には在籍してるんです。

 よくわかんない世界でしょ? 僕もわかりません!



 んで、労組活動がわかんないと思う僕は、中途採用組。

 なお中途採用組は所詮バス運転士です。大卒でかつ、どんな資格を取ったところで出世なんかは出来ません。つまるところ、僕はここは将来性がないと見切りをつけ、たまたま声をかけてくれた企業があったために転職したんです。


 あ、そうだ。あれだけ語ってきた労働組合ですが、ここ30年近く春闘の結果が拗れてストライキに入った試しがありません。簡単に言えばストライキやるやる詐欺です。えぇ、どうせ、『御用組合』なんですよ。しかし、労働者の意識と乖離してる労働組合に存続する意味はあるんでしょうかね?


 とはいえ、僕は路線バス運転士や運行管理者、事務など含めて10年ちょいやらせて頂きました。まだまだ語れるほど色んなことがあります。しかし、そんな中思ったのは、考え方が硬直化してるとイノベーションは絶対起きません。起こそうと思えば叩かれるのです。なんともはや、バカげてる。




 ・ゆっくりとした死を待つのみ


 とあるアニメがきっかけで、普段は寂れたというか静かな山間の街が賑やかしくなりました。よくいう『聖地巡礼』って波が僕の住んでる地域にも生まれたのです。


 その地域は、あろうことはアニメで行われたイベントを実際に行ったのです。もちろん、その小さな地域は沸いた湧いたの大騒ぎ。第一回と第二回はお客さんとして一般参加しましたが、第三回目からはバス運転士としてスタッフ参加することとなりました。


 もともとアニメオタクだった僕は嬉々として輸送業務に携わりました。おまけに車内にギッシギシだった同類たちに『カップルで来た人拍手! ……爆発しろ!』と車内放送でふざけてました(笑) おかげでツイッターでネタになってました、まぁいっか。



 そんなオタクなお客様たちから様々な要望を頂きました。


「このイベントの時だけ、車内放送をアニメ声優にお願いしてみては?」


 もちろん会社に奏上しましたが、あっちゅー間に却下でした。


「そんな経費、無い」



 オタクなお客様は、声優のギャラは安いしこういうイベントならペイできると熱弁しました。なんならその音声が流れるバスだけ別途料金取ればいい。その弁を借りて提案しましたが、残念ながら却下でした。


 そりゃそうです。

まず音声合成装置の録音だけで50万掛かります。

 その音声合成装置の会社所属声優使っても50万、別の声優さん使っても50万掛かるのです。そして、アニメに出ていた主人公の伊藤●な恵さんらのギャラが別途かかるそうです。


 音速レベルで却下されたので、翌年のイベントでは車内マイクで白井黒子(※)の物まねをしましたね。会社に対するアンチテーゼを込めて。まぁ、めっちゃウケましたが。


※白井黒子

 言わずと知れた某アニメのキャラ。実はこのおじま屋なおっさん、あまりにも白井黒子が好きすぎて一時期、夜な夜な物まねの練習をしてました。……おかげで『仕事のストレスで夫の頭がおかしくなった』とカミさんに思われ通報されました。

 ───頭や精神には異常がなかったのですが、いろんな意味で異常ですわよね。




 他にも、車内を飾り付けしたりと色々頑張りましたが、会社から言われたのは


『いい加減にしろ』


でした。会社の品位を落とすとかなんとか……。




 あとあと言われたのですが、やはり派閥の問題でした。中途採用かつ労組には懐疑的な態度を示してる人間が行動すれば叩かれる。これが現実だったんです。



 個人的に好きな言葉を書いておこうと思います。


「イノベーションの機会は、変化の中にある。変化を探し、変化に対応し、変化を機会として利用することが、企業家の仕事である」 p. 51

「マーケティングとは、顧客のニーズや価値観を理解し、それに応えることである。マーケティングは、顧客に何を売るかではなく、顧客が何を買うかを決めることである」 p. 97


(P.F.ドラッカー 『イノベーションと企業家精神』)


 きっとイノベーションの機会を見定めず見失い、ただ只管に善後策を練るだけでは何も生まれない。それは今まで顧客も労働者も顧みなかった会社や労働組合が拭くべきケツが、目の前に差し迫ってるのでしょうね。そしてマーケティングターゲットを見失ってるのでしょう。守るべき市民の足はいずこへ。




 ・さいごに


 AIに『路線バス運転士が不足してる理由は?』と聞いてみたところ、僕と同じような答えが返ってきました。


『運転士という仕事に魅力がないくせに、長時間労働に給与が安い』

『バス業界の経営環境が厳しいため』


 まぁ僕が書いた内容と激しい乖離は無かったです。なんとなくホッとしました。



で、AIは解決策として『労働環境の改善と待遇をあげること、女性用トイレや休憩所の設置』を上げてました。しかし、業界の経営環境が厳しい中でどのように待遇をあげるべきでしょう?


『市民の足を守る』って使命があり、顧客を市民と見做し、かつ待遇を上げて運転士不足を解消するのなら公金注入しかないでしょう。今後何十年先の未来、田舎は少子高齢化が爆速で進みます。余程のテコ入れをしない限りこの流れは変わらないと思います。市民の足を守るってお題目があれば、公金ドブ漬けにしても文句は挙がらないでしょう。それでも文句が垂れ流されるのなら、公共事業化すべきです。


 そして運転士不要の完全自動化バスの運用でしょう。そのためには専用道路を拵えたりと、一企業ができうるレベルを超えてます。官民一体となって行動する必要があると思うのです。



 しかし、僕が現在住んでる某県。

街中あちこちが観光名所として無駄に人気です。市民の台所も、昔の風俗街も、おしゃれっぽい感じを醸し出してる美術館も、『映え』って言葉だけで人々が観光にくるのです。ただ、主要JR駅から少しばかり離れた観光名所をつなぐ公共交通機関は路線バスだけなのです。



 市民の足と、観光客との棲み分け。



 公金ジャブ漬けにするのなら、市民としては路線バスを『市民・観光客』と完全に分けて頂きたいものです。何せ通勤時に観光客が大挙なしてバスに乗り込み、大声でくっちゃべる様は、市民にとっては目に余る光景なんです。静かな平穏はぶち壊され、観光客だらけで市民が乗れない満員バス。


そして『SUICA使えねぇ?じゃあPASMOは?』とトンチキなことを言い出すのは下調べすらできない観光客ばかり。


 完全にオーバーツーリズムなんです。

 市民専用と大きく離して観光客専用の乗り場を作るべきでしょう。そうでもしなきゃ、市民は本気で路線バスから遠のいていくでしょう。




 僕が居た路線バス運行会社はオーバーツーリズムながらも観光客を拾って生命維持は出来ると思います。しかしそこはぶっちゃけ二度三度と来たい観光地だろうか? 一見さんばかりの商売では先細ると思いますし、一度失った顧客の足は取り戻すのは難儀でしょう。


 運転士が不足し、なり手も居ない。それどころか運転士を重宝しない会社の将来なんて明るいわけがないのです。そろそろ目覚める時なんでしょうが……事なかれ主義で、石橋を叩いて叩いて……叩き壊す会社の結末を、ゆっくり傍観していこうと思います。





  ・ついでに


 バス運転士業界ばかりではありません。

どの業界も『人手不足、なり手不足』による悲鳴はいつでも上がると思います。


一つの解決策というか、自己防衛策として、僕は『資格取得と勉強』を提案しておきます。


自分の身は、自分で守るしかありませんからね。




  ・おまけ


『労組活動で腹立つのは、署名』


 突然あなたの知らない電話がかかってきて、聞いたことない人の選挙応援と投票お願いしますと言われたとします。(某宗教関係の政党、除く)


 その系統でポピュリズム政党的な香りがする人だったら、労働組合が絡んでるかもしれません。



 連合(日本労働組合総連合会)や労働組合が応援してる候補者には『候補者カード』というのが、労働組合員に配られます。その候補者には『あなたのお友達や家族の個人情報を書く欄』があり、そこを埋めないといけないのです。


 僕の兄は報道機関に勤めており、公平性が求められるのでこういう欄に書いてはいけない。

 僕の弟は医師、医師会が応援してる候補者がいるのでダメ。

 母は無職なんでおk

 カミさんの実家も色んなしがらみがあるのでダメ。

 親戚は公務員が居るので下手に書けない。


 結局、カミさんの名前しか書けず、労組からは『非協力的だな』と見做されるんです。

 ってか、自由意志で書かないってのは認められないんです。



『労組活動で腹立つ、選挙活動』


 まだ公示されてないのに選挙区を回って候補者のパンフを配りまわる動員。その時に言われたのは

「自らが進んで活動してる人らを装え」

でした。


 公職選挙法違反だろと思うのですが、その候補者。(当選8回目だったかな?)


 すげぇ横柄な態度なんですよね。

 僕ら動員に来てる人にも礼の一つもできない、挨拶もしない。


 何度も落ちろと願ったけど、そこの市民は鍛えられてるのか……受かるのよねぇー。




  =了=

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― 新着の感想 ―
はじめまして。 私はバスではなく鉄道業界に30数年身を置いてきましたが、結局会社や組合がやっていることはどこも同じですね。 客に対してはあまりグチグチ言うべきではないかなと思いつつ、アタオカな人を培…
[良い点] 感想返信で、次のお休みに書こうかなとあったので、そろそろ続編が投稿されたかな~と読みに来たら、連休初日の夕方投稿・・・だとおぉぉぉお! すんごい熱意を感じますね! そして、この情報量。愚痴…
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