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彼女との出会い


僕は急に降り出した雷雨に 屋根つきのバス停に駆けこんだ


すると 一人の女の子も慌てて カバンを頭に載せて飛び込んできた


視線が合うとニコッとして その子が会釈した


(ん?この間の子じゃないか?・・)


満員バスの中で部活の大きなバッグをもって困っていたので 座っていた僕の膝に置くように云ってやった子だ


「ありがとう^^」とその時の ニコッとした顔がそこにあった


「酷い雨だね・・」


そうね・・と その子は 雨はやみそうにないし 困惑げ・・長い黒髪 ふくよかな胸・・18歳ぐらいだろうか・・


僕は眩しいその横顔を見ていた


彼女は僕のことは記憶にないようだった


車が一台停まる・・僕が妻に迎えに来てほしいと携帯したからです


「君 良かったら乗るかい? バスはまだ来ないし 送ってあげるよ」


その子は車の妻と僕を交互に見て


いいんですか?お願いしたいです!


ーーーーーーーーーーーーーーーーー

乗ると彼女は濡れたスカートをハンカチで拭きながら


助かりましたと後部座席で礼を言った


「お知り合い?」 と妻が訊いた


前にバスで知り合ってさ・・可愛い子なので話しかけて ナンパしょうと思ってたところだよ


と言うと


後ろの彼女がクスクスと笑った

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

それが彼女との始まりだった


送って行く車中 それとなく聞くと 母子家庭で 昼間は働きながら 夜間高校に通っているとのこと・・


ほどなく古いアパートの前で降ろしたが そこは僕のジョギングコース

によく通っているところなのです


彼女と3度めに会ったのは 僕がその偶然を創ったのかもしれないです


「あら、おじさん・・また会ったわね」


朝でした 彼女が自転車に乗ってました 僕がジョギング・・

この時が来るのを心待ちにしていた僕・・


「おお・・君か 今から仕事かい?」


「そうなのよ・・駅前のドーナツ屋です 叔父さんサービスするから来ない?」


「何のサービスだい?」(笑)


「この間の送りのお礼にドーナツプレゼントよ・・」^^


手を振って駅前に向けて自転車を漕いでいるのです その髪をなびかせている後ろ姿もいいけどお尻のラインがたまんない・・


それと スカートから伸びる脚線美・・年甲斐もなく その子のお尻を追うように走っていました


僕は56歳・・


ドーナツ屋さんに行き きびきびと動く彼女の姿を眺めている僕・・


そんな僕に笑顔を向けてくれるのです


僕はそれから・・毎日ソコに通うようになった・・そして

恋心を持つまでに時間はかからなかった・・


僕がドーナツ屋に通い出して 20日目に公園に誘ったら自転車押しながらついてきた ベンチに一緒に座ると 僕はこころがときめく


用意していたものを思い切って出した

ブローチでした 


「コレを君に・・」


と差し出すと 


「あたしに?これを うわー!可愛いブローチね~~~」


赤いリボンのついた包みを開けて歓びの声・・


そして怪訝そうに僕を見る


「おじさん 困ります こんなことしてもらう理由はないですよ」


と言いつつ


彼女はニコッとして表情は こわばって等なかった


「いいんだよ 僕はね 君の顔を見てるだけで幸せなんだ

恥ずかしい話だが 昔から一度も 女性にプレゼントしたことなくてね・・そう言う相手もいなかった」


「だから 何の他意もないんだ・・判ってほしい」


「そうなのね・・叔父さん 実を言うと 私、父親の顔知らなくて

ちっちゃい時に亡くなったのよね・・だから叔父さんみたいな人に

憧れていたのかも・・」


「おお、そうか! 僕はそう言われたら救われるよ」

昨日から誤解されるかもと・・渡そうかどうか迷っていたんだ ありがとう^^礼を言うのはこちらだよ


僕がブローチを 胸につけてあげるとき・・豊かな胸の隆起に指先があたる・・が、しかし別段の反応もない

僕はつけ終わってから 千円札数枚をその隆起した胸ポケットに入れてやった・・ 


「おじさん 困りますよ!お金なんて」・・・と言いつつそれも突き返さず

ニコニコしていた


(援を期待しているのかな・・?)



と思ったがその子の表情からはナニも読み取れない


ただ、僕に今まで以上に親近感を寄せ 亡くなった父親が蘇ったと思ったのかも・・それを信じたいというのが正直な気持ちだ


「私19歳です 名前は 大橋 真奈美 お母さんが病弱なので助かります おじさん ホントにありがとう^^」


年と フルネームを告げる その目が澄んでいた

援交をねだる目ではない・・純粋に助けてくれた礼を告げた目でした・・


おじさんは 前島立夫っていうんだ クソ親父の名前なんてどうでもいいんだろうけど・・(^^)


「クソってなにをいうのですか 笑 優しいおじさまですよ」


「そうかい・・なんかうれしくなったよ」


(僕は 君が好きなんだ・・僕は今はっきり君に恋しているんだ・・)


心の中でそれを叫んでいた


ーーーーーーーーーーーーーーーーー

彼女はテレビに出てくるアイドルに似ていた


僕は50過ぎになる人生の中で 恋なんてしたことが無い


その無垢の笑顔は天使のような輝きで僕を包む


恋とはこういう気持なのだろうか・・と思えた


思えば僕は恋愛一つしたことのない、 無味乾燥なクソ人生だった


生きてきた 56年という永き間に 一体何か意味があったのか・・


彼女と知り合ってのわずか20日の出来事の方がはるかに意味があるように思えてきた

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