はじまりの海
思いきって好きな女子に告白してみたらとんでもないことになってしまった。
何故こうなってしまったのだろう。
きっかけは人生初の失恋だった。ゼミ仲間だった芽李子さんに思いきって告白してしまったのだ。
大学の帰り道、たまにはお茶でもというベタな誘いで2人きりになったところまでは順調に思えた。話も弾んで勢いに任せて言ってしまった。芽李子さんは突然の告白にキョトンとしていた。無言の時間がとてつもなく耐え難かった。
「ごめんっ!私も実は好きな人がいてさ」
あとはただただ気まずいまま、その日は終わった。
翌朝、僕はどうしても大学に行く気になれなかった。
気付くと身体は自然に癒しを求めて郊外へと向かっていた。
とにかく遠くに行こう。そしてしばらく一人でたそがれていよう。
やがてある海岸に着いた。知らない景色だけど、目の前に広がる海が嫌なことを全て飲み込んでくれるように感じた。岸壁に当たる激しい波音が余計な思念を洗い落とす。大自然を前にただ無心になり、自分の悩みなんてちっぽけに思えた。
そして僕はあることに気づいてしまった。美しい景色の中に揺らめくスカート、きれいに並べられた靴、裸足で岸壁から海を見つめる女性...
「ち、ちょっと待ったー!」
ビクッ
と女性が驚く。ゆっくりこちらに向けた顔は涙で濡れていた。表情はなく、ただひたすらに涙が頬にきらきらと線を描いた。
しばらく無言で向き合っていた。
どうしよう、思わず叫んでしまったけど、この後どうすればいいんだろう。どうしよう、どうしよう...
「あの、なんていうかその...」
ヤバい、何も浮かばない...でも何か言わなきゃ...
「お茶、しませんか」