渋谷事件(6)
神威大和は、極道三人組を連行する警察官たちに、また声をかける。
「ところで、警察官たち、競馬は儲かったのか?」
途端に、警察官たちの肩がビクッと動く。
神威大和は、厳しい顔。
「犯罪防止よりは、自分たちのギャンブルを優先するのか」
「後で、君たちのスマホやネットの記録も調べる必要があるな」
森田愛奈は驚いて声も出せないけれど、警察官たちの肩は一斉にガクンと落ちている。
一行が警察署に入ると、署長のネームプレートを付けた年輩の男が駆けつけて来て、神威大和にペコペコと頭を下げる。
「署長の佐々木と申します・・・この度は、申し訳なく」
神威大和は、そんな署長にも厳しい顔と言葉。
「人の命がかかっているのにも関わらず、こんな至近の場所なのに、忙しいから30分はかかる?」
「仕方ないから官邸に動画を送ったら、駆けつけるって、どういうことなのか」
「さっき、渋った警察官に競馬かって聞いたら、完全に反応した、おそらくスマホかネットで競馬だろう」
「人の命より、自分たちのギャンブル、しかも公務中に」
「競馬のほうが大事なのか?ここの警察署は」
「これも官邸に報告を依頼されている、逐一報告する」
ますますうなだれる署長に神威大和は、続ける。
「そこで下を向いてどうする?」
「次の被害者が出ないように、まずは極道の事務所を強制捜査したらどうだ」
「関連資料は全て押収、それが署長の役目では?」
「この私に頭を下げて、官邸への報告を緩めてもらう、そんなことを考える前に、やることがあるだろう」
神威大和の言葉を受けて、署長は弾かれたように、姿勢を正す。
「わかりました!早速、取りかかります」
その場で部下を呼び、捜査準備を始めている。
神威大和は、またしても呆気にとられる森田愛奈を手招き。
「このレナという女の子の聴取に立ち会って、全てを記録して欲しい」
「その後は、自由が丘の家に、連れて帰る、そこで説教する」
森田愛奈は、「あ・・・はい・・・仰せの通りに」と、何も言い返せない。