神威の被害者フォロー
神威大和は、杉田玲奈と吉村恵美が話をする前に、どうやら感づいていたらしい。
少し笑って、手招きをする。
「いいよ、この屋敷に住んでもらって、働いてもらっても」
「そのほうがいいだろう」
吉村恵美は、ボロボロと涙をこぼす。
「はい・・・シングルマザーで・・・最近不景気で・・・失業保険で・・・」
泣き出した母が心配なのか、春香が抱きつく。
神威大和は笑顔のまま。
「お母さんは、料理が上手かな」
「みんなの食事を作ってもらいたい」
「それと、森田さんと杉田さんにも、料理の手ほどきを」
吉村恵美に笑顔が戻った。
「はい、料理学校に通っていましたので」
杉田玲奈も、ホッとした顔。
神威大和は続けた。
「この屋敷内に部屋を作って住んでもらってもいいよ」
「家賃は、特にいらない」
「いつまでも住んでもらってかまわない」
森田愛奈も、吉村恵美に声をかけた。
「いろいろと不思議でしょうが、私たちを信頼してください」
「いろんな、とんでもない人が、神様のような人たちが歩き回りますが」
「危ないことはありません、むしろ助けてくれます」
杉田玲奈が、娘春香の前に座り込んだ。
「温泉があってね、その中に、弁天様がいらっしゃるの」
「一緒にお風呂に入ろう」
そのまま母の吉村恵美も一緒に温泉旅館に向かって歩き出す。
ただ、鼠小僧次郎吉だけは、頭を掻いている。
「いいお話なんですが、あちきの名前を何とか・・・」
その困り顔が面白いのか、神威大和と森田愛奈は、プッと吹き出している。




