渋谷事件(5)
神威大和は、少女に声をかける。
「モデルをやっていたのですか?」
少女は、森田愛奈から離れ、神威大和に向き合う。
「はい、レナと言う芸名で」
神威大和の顔は厳しい。
「モデルではない仕事を言われて、それは困ると逃げて、自殺未遂かな」
少女の顔が青くなる。
「はい・・・突然・・・そんな話に・・・どうしようもなくて」
神威大和は厳しい顔を変えない。
「例えば、君がここから落ちて死ぬとする」
「おそらく、この下を走る車にぶつかり、轢かれて」
少女の顔は、ますます青くなる。
しかし、神威大和は、ますます厳しい言葉。
「それで巻き添えで事故が起きて、関係のない人にも迷惑をかける」
「死人も怪我人も出て、交通はストップ」
「大事な用事に支障が生じる人が、いるかもしれない」
「君の身体は、衝撃でグシャグシャ、目も当てられない状態」
「その処理をする人も、大変だ」
「君だったら、他人のグシャグシャの死体を処理したいと思うのかい?」
「それも、そういうことをする人の仕事だから当然と?」
「君の親に連絡する人も、神経を使うよ、すごく」
少女は、座り込んで泣き出してしまった。
「そんなこと言ったって・・・ああするしかなくて・・・」
「どうすればいい?わからないもの・・・」
「誰も助けてくれなかったし、警察に言っても知らんぷりで」
ようやく地元警察官が3人駆けつけて来た。
森田愛奈が官邸に動画を送ってから、約10分後。
そして神威大和に最敬礼。
「申し訳ございません、早速捕縛いたします」と、極道三人組を確保。
神威大和は、苦々しい顔。
「官邸に報告しないと、来ないのか?」
「それから、この少女は君たちの事情聴取後、一旦私が預かる」
「相当なケアが必要だけど、それは君たちには期待できない」
この神威大和の発言に、地元警察官3人はうなだれ、森田愛奈と少女はキョトンとなっている。