雷電の道場破り(9)横綱に稽古をつける雷電
「横綱が負けた?」
「田舎相撲の一撃で?」
「あの必殺のカチアゲも通用せず・・・」
「張り手一発で?」
雷電が横綱を「張り手一発」で倒した衝撃は、相撲部屋の親方と力士だけではない。
外で見ていた人々にも、衝撃を与えた。
しかし、雷電の動きは止まらない。
「おい!若いの!水だ!」
「水をぶっかけろ!」と大音声。
慌てた若い力士が、バケツから横綱に水をザブンとかける。
そして、横綱はヨロヨロと立ちあがる。
すると雷電は、また大音声。
「さあ来い!十番勝負だ!」
「一番くらいで、ヘタっているんじゃねえ!」
ヨレヨレの横綱の顔に、また朱が入った。
「何を!今度こそ!」と、思い切り雷電に向かって、今度は「ぶちかまし」をかけようとする。
しかし、今度は雷電の「カチアゲ」が横綱をガツンと襲う。
「グワッ!」
横綱は、またしても土俵の中央で崩れ落ちる。
雷電は、また若い力士に「おい!水だ!」と大音声。
そしてバケツで水をかけられた横綱が、再び立ち上がる。
雷電は、その横綱を叱りつける。
「おい!横綱としてカチアゲを使うなら、その一発で倒せ!」
「勝負の策なんかで使うんじゃねえ!」
「それが横綱ってもんだ!」
意外なことに、横綱は、「はい!」と大声で応えている。




