雷電の道場破り(6)
顔を真っ赤にした横綱がようやく腰をあげた。
しかし、親方が、横綱を止める。
「お前が出るこたぁねえ、若いのに相手させろ」
「あくまでも四股は四股、身体の力さえあれば、あんなのは誰でもできる」
「単なる体力馬鹿だ、土俵の中の相撲とは別だ」
親方は、若い力士の一人に手で合図、土俵に入れさせる。
雷電は首を傾げた。
「面倒だな、三人か、四人まとめて来い」
「手加減もしきれないな」
その言葉に、親方も横綱も、そして部屋の力士全員の顔色が変わった。
親方が怒鳴った。
「おい!ぶちかましちまえ!気に入らねえ!」
「はい!俺もぶち切れそうです!こんな田舎野郎に!」
土俵の中に入った若い力士は、しっかりと両手もつかずに、雷電に突っかける。
しかし、全く勝負にならなかった。
雷電の右腕がスッと伸び、若い力士の胸を平手で突く。
「グワッ!」
悲鳴をあげて、若い力士は宙に浮いた。
そして、そのまま土俵の外に叩きつけられてしまった。
余程の衝撃か、口から泡を吹き、失神状態になっている。
雷電が、やれやれ、と言った顔。
「だから、三人か、四人まとめてって、言ったんだ」
「まあ、手加減も相当したけどな、それにしても弱いなあ、軽いなあ」
「江戸の力士は、張り子どころか、障子紙だ、軽く突いても破れちまう」
「薄紙細工の大相撲か、情けない」
「単なる肥満体の行列か?豚でもお前らよりは強い」
「豚に弟子入りしたらどうだ?」
雷電の言葉に、また挑発されたらしい。
血相が変わった全ての力士がが、土俵の周りに集まって来た。




