雷電の道場破り(4)
「おおっ・・・・」
「この身体は・・・」
相撲部屋の中にいた力士たちや親方まで、雷電の褌一つの姿を見て、魅了されてしまった。
ぶよぶよとして、腹は出てはいない。
痩せているわけではな、適度に肉がつく。
しかし、見るからに筋肉質。
その雷電の顔は土俵の中に入り、全く別人のような厳しい。
その厳しい顔のまま、「四股とは・・・」とポツリ、まず右足を高くあげ、土俵に踏みおろす。
「ドシーン!」
その一発目の四股で、相撲部屋全体が揺れた。
神威大和は森田愛奈に声をかける。
「さっきの駆け出しとは、別物でしょう」
森田愛奈は、最初の四股で、震えている。
「はい・・・四股って怖いくらいです」と、ようやく言葉を返す。
雷電の四股は、続く。
恐ろしい程に力強く四股を踏み、相撲部屋全体を揺らし続ける。
しかし、雷電に、全く力んでいる様子はない。
踏みおろす足にしても、動きは実にやわらかい。
最初は雷電の身体に見とれていた親方や力士は、全く声が出せない。
雷電を相撲部屋に引き入れてしまった親方は、それを後悔し始めた。
「マジに、あいつのほうが四股が上手じゃねえか」
「信州の田舎相撲なんて言って、江戸の大相撲が逆に恥をかいちまった」
「不審野郎ということにして、追い返せばよかった」
「こんな場面を、タニマチの親分さんに見られたら、どやしつけられる」
四股を踏み続ける雷電の身体から、汗がしたたり落ちる。
森田愛奈は、その姿に見とれた。
「うわ・・・かっこいい・・・男の汗だなあ」
「頼れる男の力強さかな」
そんな状態の中、神威大和は親方に声をかけた。
「さあ、彼と同じ程度に、四股を踏める力士はいるかい?」
「いなかったら、看板をもらって帰るよ」
「さあ、どうする?」
この神威大和の言葉には、親方の表情が厳しく変わってしまった。




