渋谷事件(3)
極道の一人が、歩いて来る神威大和に目を向けた。
「おいおいおい!何だ!この若僧!」
「そこで止まれ!」
「今、取り込み中だ!」
しかし、神威大和は、歩みを止めない。
「天下の公道を歩いて、何が悪い?」
「あなたに、私の歩みを止める権利があるとでも?」
その顔も厳しく、声も恐ろしく厳しい響き。
極道三人組が一瞬怯む中、そのまま少女の前に立ってしまった。
「はい、これ履いて、君のでしょ?」と靴を履かせたりしている。
すると、極道三人組は、また騒ぎ出す。
「おいおい!勝手にうちの商品に手を出すんじゃねえ!」
「なめた真似をすると、手前も無事で帰さねえぞ!」
「いいか!怪我したくなかったら、とっとと失せろ!」
そのまま短刀を構える者、チェーンを振り回す者、木刀を歩道橋に叩きつけて脅す者、とにかく騒がしい。
自殺寸前だった少女は、本当に怖いのか、神威大和にしがみついてる。
神威大和は厳しい顔のまま、口を開いた。
「商品とは?人間は売り物?」
「それから、無事で帰さない、怪我をしたくなかったら?」
「意味がわからないな」
その言葉と同時に、極道三人組の顔に朱が走った。
「手前!もう我慢できねえ!」
「俺たちの怖さを教えてやる!」
「覚悟しろ!」
口々に叫んで、とうとう神威大和と少女に向かって猛突進。
と、その時だった。
神威大和が何かの呪文を唱えると、不思議な青い呪印障壁が浮かび上がっている。