雷電の道場破り(1)
事務所での打ち合わせが終わり、杉田玲奈は、エルフとのステージ作り検討のため屋敷に残った。
神威大和は、森田愛奈と現代風の洋服に着替えた雷電を伴い、ユニコーンの運転する黒ベンツに乗り込む。
神威大和
「雷電君、まずは相撲部屋でいいかな」
雷電の顔は長くひしゃげて、一見般若の面のような怖さもあるけれど、どこかしら、愛嬌もある。
そして、柔らかく深みのある声。
「ああ、そうだね、できれば横綱がいる部屋がいいな」
森田愛奈は、少々不安。
「実際、飛び込みで道場破りをして、立ち会わせてくれるのでしょうか」
神威大和は、プッと笑う。
「ああ、心配ない、相撲取りって身体で判断する部分があってね」
「雷電君の2メートルの身長、身体の動かし方を見れば、必ず反応がある」
そして森田愛奈に指示をする。
「タブレットで、大相撲の動画を見せてあげて」
神威大和の指示通りに、大相撲動画を見せると、雷電の表情が少しだけ厳しくなり、またすぐに元に戻った。
「これが横綱?」
森田愛奈
「はい、史上最強とか、その実績も半端ではなく」
雷電は、ためらうような顔。
「壊さない程度にするよ」
「彼にも家庭があるだろうから」
神威大和は、首を横に振る。
「いや、一度ガツンと、頼むよ」
「慢心が見られる、相撲にも日常にも」
「怪我は、こっちで面倒を見るから」
「数本折っても構わない」
森田愛奈は、神威大和の言葉に、少し不安を覚えている。




