モーツァルトVS現代日本音楽界の闇(4)
玄関の横のレッスン室から聞こえて来る声や音は、ますます大きく酷くなる。
「おい!弾け!ちゃんと弾かないと!」
「嫌―――!また殴るの?」
「るせえ!お前が悪い!」
そしてドタドタと逃げ回る音と、声。
「きゃーー・・・怖い!嫌!」
神威大和の表情が変わった。
まずは森田愛奈に目で何かの合図。
そして、まだ震えているピアノ講師の奥様らしき人には目もくれない。
素早く、レッスン室のドアを開けてしまう。
また、モーツァルトも顔を厳しくして、神威大和に続く。
すると北島ピアノ講師が神威大和とモーツァルトを見て、大声を出す。
「おいおい!何だ!そこのガキ二人!」
「何の挨拶もせずに入って来るなんて失礼だろう!」
「神聖なるピアノのレッスン中だ!」
「それも、気高きモーツァルトのレッスン途中に!」
しかし神威大和は動じない。
まずは、震えあがり逃げ回る少女を手招き、法務省官僚の内村由紀に確保させる。
内村由紀は自己紹介をしながら、厳しい判断を下す。
「法務省の人権担当の内村と申します」
「近隣住民から人権侵害通報がありましたので、対応させていただきます」
「家の外からでも聞こえるパワハラ、モラハラ、暴言、暴力的な指導」
「相当な人権侵害がなされていると、認定します」
神威大和も厳しい。
「近所から通報がなされるくらいだ、他にも余罪があるだろう」
「厳しく調べないといけない」
しかし北島ピアノ講師は、怒り顔のまま。
「おい!そこのガキ!その前にお前は誰だ!」
すると、森田愛奈が小走りに北島ピアノ講師の前に。
そして耳元で何かを囁くと、北島ピアノ講師はオロオロと座り込む。
「首相の・・・まさか・・・」
神威大和の顔が、冷酷に変わった。
「都の偉い人には長年の賄賂か?それで警察も踏み込まない、都の人権担当も見て見ぬふり」
「そこの月謝袋は何だ?現金で集めて誤魔化して、誤魔化した現金を都の偉い人に賄賂」
「賄賂をもらった人の権力で、税務署も踏み込まない」
神威大和の厳しい声は正鵠を得ているようで、北島ピアノ講師は立ち上がることも出来ない。




