モーツァルトVS現代日本音楽界の闇(3)
「あーーーー!怖いよーーー!」
「もうーーー嫌だよーーー!」
女の子の泣き叫ぶ声は大きくなり、家の外にいてもはっきりと聞こえて来る。
すると、その泣き叫ぶ声に対して、中年の男の怒鳴り声も大きさを増す。
「うるせえ!」
「弾けっていったら弾け!」
「いいか!ちゃんとやれ!」
「ロクに弾けないから怒られる!」
「この馬鹿!下手くそ!死んじまえ!」
「今度出来なかったら!」
しかし、女の子は、また激しく泣き叫ぶ。
「嫌――――!出来ないよーーー」
「怖いよーーー!」
また、中年の男の怒鳴り声。
「何だと?このガキ!」
「痛い目にあいたいのか!」
その怒鳴り声が聞こえて来た直後、神威大和は「北島ピアノ教室」の玄関に立ち、チャイムを鳴らす。
すると面倒そうな顔の中年女性がドアを開けた、
「どちら様?アポイントはありますの?」
神威大和は、厳しい顔。
「ここのピアノの先生の奥様ですか?」
「お宅のピアノ教室から聞こえて来る様々な声からして、いわゆる人権侵害が発生しているとの通報がありましてね」
「法務省にも連絡が行き、今専門の担当者が参ります」
「私は単なるその連絡役の神威大和と申します」
「ああ、全て窓越しではありますが、録音してあります」
神威大和が説明していると、ピアノ教室の前に黒ベンツが停まり、若い女性が一人、降りて来た。
そして、そのまま神威大和の隣に立ち、「法務省の内村由紀と申します、人権侵害の担当をしております、通報がありましたので、調査をさせていただきます」と挨拶。
「場合によっては地域の警察を呼びます」とも付け加える。
面倒そうな中年女性の顔色が変わった。
「え・・・どういうこと?すごい大事に?」
その顔も真っ青、足も震えている。




