モーツァルトVS現代日本音楽界の闇(1)
モーツァルトは、真紅の革ジャンに黒ジーンズ、ブーツ姿で見違えるほどの若々しさ、そして髪の毛は美しい銀髪、目の色の色は黒に変えている。
森田愛奈が「かっこいいです」と思わず口に出すと、モーツァルトはご機嫌。
「そろそろ散歩しよう、面白そうだ」
神威大和は笑顔で頷く。
「とりあえず、近所でいいかな」
森田愛奈が「歩きですか?」と聞くタイミングもない。
現代人風モーツァルトと神威大和は「異世界ドア」を開けて、「現代の普通の日本、自由が丘」に出て行くので、その後について歩くしかない。
一行が屋敷をそのまま出て、自由が丘の住宅街を歩き始めると、数分後にピアノの音が聞こえて来た。
モーツァルトは、「ふむ・・・でも、あれ?」と歩みを止める。
神威大和は、「うーん・・・」と、その目を光らせる。
しかし、森田愛奈には、二人の表情の変化の原因がわからない。
感じたのは「なかなか上手かな」程度で、それほど問題があるとは思えない。
モーツァルトと神威大和は、そんな森田愛奈の思いとは別に、ピアノの音に吸い寄せられるように、住宅街の角を曲がり、歩いて行く。
それでも、森田愛奈は気がついたことがある。
「弾いているのは、目の前を歩くモーツァルトの曲」
「同じところを、何回も繰り返している」
聞こえて来るピアノの音が大きくなって来た。
モーツァルトの顔が嫌そうなものに変わる。
「酷いね、あの指導」
神威大和も、顔をしかめた。
「たいしたミスでもないのに、実に陰険だなあ」
「あれは、弾く人の心を痛める、傷つける指導」
「それも、何か、裏がある」
森田愛奈は、神威大和に目配せ、動画の撮影を始めている。




