官邸首相執務室
官邸の首相執務室には、実にスムーズに通された。
「普通なら、絶対に簡単には入れないのに」
総務省入省2年目の森田愛奈としては、驚くばかり。
それどころか、首相自らがお出迎え。
「神威大和様、お待ちしておりました」
「ささ・・・こちらへ」
「ああ、森田君も、神威様の隣に」
神威大和に続いて、森田愛奈もソファに座ると、首相自らが話し出す。
「先般、とあるお方から、この私にご指示が下りました」
「神威大和を日本に遣わす」
「目的は、まず日本の実態調査と、場合により正義の行使」
「それについて、神威大和が力を発揮するための、整備をせよ」
首相の言葉を聞きながら、神威大和は、表情を何一つ変えず、落ち着いている。
しかし、森田愛奈は意味が分からない。
「そもそも、直属の上司が、神威大和君の写真を見せて、国会議事堂前に迎えに行けと」
「それだけでも意味不明なのに、その後は直接官邸、しかも首相執務室って・・・」
「驚いたけれど、上司は上からの命令って、それ以外には言わないし」
「しかも、官邸に入る時から、ここまで本当にスムーズだし・・・」
「それに何?とあるお方?日本の実態調査?正義の行使?わけがわからない」
首相は、そんな森田愛奈を見ることもなく、淡々と説明を続ける。
「まず、報酬は年1億円、それ以外の調査経費は実費請求願います」
「尚、日本国内の交通費、宿泊費につきましては、すべて日本政府が支払います」
「住居につきましては、自由が丘に準備してございます」
「また、細かな経費の請求事務や、生活上のお世話につきましては、お隣に座る森田愛奈に担当させます」
首相は、そこまで言って、ようやく森田愛奈の顔を見た。
「森田君、くれぐれも、神威様のお役に立つように」
「これは、我が日本のためになること、決して悪いようにはならない」
「その理由は・・・いずれ、わかる」
森田愛奈の頭は、実に混乱している。