自由が丘駅前のいじめられ高校生事件(7)
「金さん」の威勢は止まらない。
今度は、スクリーンの中の「相手校の監督」に、怒鳴りつける。
「おい!手前も手前だ!許すわけにはいかねえ!」
「ガキの剣道の試合を汚しやがって!」
「はぁ?知らんぷりするんじゃねえ!」
「お前を心配そうに見てるジジイがいるだろ?少し離れて!」
奥田は目をパチパチとさせる。
「あの人は、都の剣道連盟の吉村会長?」
「そう言えば、二人は親子・・・」
「となると俺は仕組まれた?騙された?」
神威大和が、「金さん」と目を交わし、説明をはじめた。
「自由が丘駅前でのいじめられ高校生から始まる一連の動画により、発覚した事実は以下の通り」
「剣道部内にて、特定の部員鈴木に対する暴行、恐喝などのいじめ行為が常態化していた」
「指導者の奥田は、田中主将が理事長の甥であることに遠慮し、いつも何も言えない状態であった」
「田中主将と、配下の剣道部員たちも、奥田の弱い立場を悪用、ますますいじめに走った」
「本来は田中主将よりも才能と実力がある鈴木に負けた腹いせに、田中主将自身が命じて金属バットを使い、集団暴行を行い鈴木の足首に負傷をさせた、それも試合3日前、直前の練習」
「いじめられ、足首を負傷した鈴木は、それでも痛みを我慢して試合に出場したものの、やはり痛さで自由に動かない足首での試合、負ける原因となってしまった」
「都剣道連盟の吉村会長と、その息子である相手校の監督は、奥田に不謹慎極まりない接待を受けさせ、暗に負けを求る、つまり八百長を仕掛けていた」
「警戒心も慎重さもない奥田は、まんまと誘いに乗って、教育者にあるまじき写真を撮られていた」
神威大和の説明が終わると、剣道場もスクリーンのキャバレーも消えてしまった。
当然、田中主将や剣道部員、奥田も姿が見えない。
神威大和が厳しい顔。
「後は、それぞれの当局が責任を持って厳しく処置する、首相と知事からその旨の連絡があった」
神威大和の顔がやわらかくなり、鈴木に声をかけた。
「鈴木君、面白い先生が4人いる、指導を受けて見ないか?」
鈴木が神威大和に聞き返す間もなかった。
あっという間に、鈴木は、佐々木小次郎、宮本武蔵、柳生十兵衛、雷電為衛門に囲まれてしまった。
それを見た「金さん」は「これにて、一件落着!」の大音声を発した。




